Like a fairy tale 42





宛がわれた部屋に向かおうとも思ったが、まだノルンの調整をしなければならないことを思い出してドックへと向かった。

「すみません、まだ換装しきれてなくて」

そうメカニックに声を掛けられ、は首を振る。

「地上戦用のOSを参考にしたいのでどれか見せていただけませんか」

の申し入れを受けて、コックピットへと案内した。


コンコン、と音が聞こえて目の前のモニタを少し上げる。

ひょいと顔を覗かせているのはディアッカだった。

「ああ、ディアッカ」

「お疲れ。OSの参考か?」

そう言って上半身をコックピットの中に入れてモニタを見る。

「見づらくない?」

「っつっても、オレが一緒にそこに入るわけにはいかないでしょ」

と言って苦笑いを浮かべて「それでなくともイザークのご機嫌が急傾斜なのに」と続ける。

は首をすくめた。

「らしくなかったな。いつもだったら思っても言わないだろう?あんな沸騰してるイザークには」

ディアッカの言葉には目を伏せた。

「つか、此処狭いから出てこない?まだOS見ないとダメか?」

ディアッカの言葉に首を振ってはコックピットから出た。

近くのメカニックに声を掛けてハンガーから降りる。


「言わないね」

不意にの言った言葉にディアッカは「は?」と言って何に対しての言葉か気付いて「今頃言うなよ」と返す。

は小さく笑った。

「何で、言ったの?」

「だって、危なっかしいもん。ディアッカだって、最近のイザークは危なっかしいって思わない?」

の問いに「思う」とディアッカは頷く。

「何か、躍起になってるっていうか。本当にいつも以上に周りが見えなくなってて。だから、嫌でも何でも今の自分の状況を客観的に耳にしてたら、ふとしたときに思い出せるんじゃないかなって思って。
まあ、ディアッカが止めてくれるって思っての発言だったけどね」

の言葉に「だろうと思った」と言いながらディアッカが溜息を吐く。

「ごめんね」

「いーよ。じゃあ、オレ戻るわ」

ディアッカの言葉には驚き、

「え、それだけのため?」

と言うと

「まあ、な。...今日はもう休んだ方が良いんじゃないか?」

まだ作業を続けそうなの様子が心配になる。

「うん、早めに仕上げておきたから。ほら、出撃命令が出ても『OSまだだから先に出てて』なんて格好がつかないでしょう?」

「んじゃ、無理すんなよ」

ディアッカが軽く手を挙げてそういい、もそれを返してノルンに向かう。


「愛されてんじゃん」

「やかましい!」

近くのコンテナからの様子を見ていたイザークの存在には気付いていた。

イザークだって、頭に血が上ったとは言え、にあんなことをして反省している。けれど、最初の一言が思いつかずにどうしたらいいのかとドックで思い悩んでいたのだ。

だから、ディアッカはを態々その近くまで連れてきて本音を吐かせた。

絶対にイザークが目の前にいたら言わないだろう、その言葉。

ふん、と鼻を鳴らしてイザークはドックを後にする。

その後ろ姿を眺めながら「素直じゃないなー」とディアッカは呟いた。




日が暮れて、イザークはドックに向かった。

食堂でもの姿を見なかった。

ヴェサリウスでのを思い出す。

ノルンにかかりっきりで睡眠時間を削っていた。心配しても何処吹く風でちっとも聞きやしない。

「どっちが、周りが見えていない、だ」

イザークは不機嫌に呟きながらノルンのハンガーに向かった。

「ああ、はまだ作業中だぞ」

メカニックに声を掛けられて「ああ、」と返してのコックピットに向かう。

ハッチが空いており、イザークが覗くとが船をこいでいた。

「ったく...」

呆れたようにイザークは呟き、近くに居るメカニックに毛布を借りれないかと声を掛けた。

「あ?何だ、寝てたのか。静かだな、とは思ったんだよ。部屋に連れて帰ってやったほうが良いんじゃないのか?」

そう言われてイザークは首を振る。

「そうしたいのは山々なんだが。連れて帰ると、きっと後で文句を言われるからな。悪いが、このまま寝かせて毛布だけは掛けておこうと思うんだ」

イザークの言葉にメカニックは苦笑をして「取ってこよう」とハンガーから降りる。

暫くして戻ってきたメカニックに毛布を借りてにそっと掛ける。

規則正しい寝息をたてているの寝顔は平和そのものといった感じだ。

「ああ、デュエルの装甲の換装とOSの書き換えは終わっているから。時間のあるときにチェックしておいてくれ」

の寝顔を覗き込んでいたらメカニックに声を掛けられ、「分かった」と心持ち小声で応えたイザークはコックピットから離れ、デュエルへと足を向けた。









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桜風
08.3.21


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