Like a fairy tale 43





たちはレセップスに向かった。

そこには砂漠の虎と呼ばれるアンドリュー・バルトフェルドが駐留しているらしい。

たちが追っていたアークエンジェルも現在その近くに居るという。

バルトフェルド隊がアークエンジェルの撃墜作戦を行うため、その作戦への増援を命じられたのだ。

レセップスのバルトフェルド隊に着くと、隊長が出てきた。

「クルーゼ隊、です」

敬礼を以って挨拶をする。

続いてイザーク、ディアッカが挨拶をしたが、バルトフェルドは興味がないようで、更には友好的な笑顔を浮かべながら期待をしていないと匂わせる挨拶が返ってくる。

イザークの、隊長に対しての言葉を聞いて彼の額には容赦なく脇に抱えていたヘルメットを裏拳の要領でぶつけて何事もなかったかのように脇に抱え直す。

「大変失礼致しました」

しれっと言う

!きっさま〜!!」

掴みかかろうとしたイザークをディアッカが「やめろって、イザーク」と抑える。

副官以下は皆驚いた表情をしていたが、隊長は声を上げて笑う。

「まあ、何だ。先ほども言ったが、君たちの力を借りるまではないだろうから。ゆっくりしていきたまえ」

彼はそう言って戻っていった。

イザークはふん、と鼻を鳴らしてそっぽを向く。



イザークとディアッカはレセップス内のパイロット控え室へと向かったが、はそのままノルンの側に留まる。

本当はノルンを動かして色々補正したい箇所はあるのだが...

例えば、砂漠の接地圧。それに、昼間の砂漠には熱対流があるはずだからそのパラメータを組み込みたいし、何より重力、磁場があるからそれも補正しなきゃいけない。

が、何でもないところに撃ったりするのもどうかと思うし...

地球に降りて来て以来、はそれが気になって仕方なかった。

戦闘中に補正が出来なくも無いが、今のうちに出来るものならやっておきたかったなー、とそんな感じにノルンのOSの修正等を行っていた。

パイロットスーツは動きやすい作りではある。いつ戦闘になるか分からないこの場所では脱がない方が懸命だ。しかし、何だか気になって仕方ないのでつなぎを借りれないものかと悩み、コックピットを後にした。



隊長室のドアをノックする。

です」

やはり、何かをお願いするにはその責任者に言うべきだろう。

なんとなくそう思って隊長室へと向かった。

副長でもいいのだろうが、彼の姿は見当たらなかったのだ。

「入りたまえ」とドアの向こうからの声に「失礼します」と声を掛けてドアを開ける。

部屋の中にはすらりと背の高い女性も居た。軍服を着ていないことから、もしかしたら軍人ではないのかも、と思いつつつなぎを借りたい旨を話した。

隊長に直々にする話でもないが、責任者に依頼するべきかと思って此処へきたことも話す。

バルトフェルドは面白そうに笑い、「アイシャ」と傍に立つ女性に声を掛ける。

「こっちよ、いらっしゃい」

声を掛けられ、部屋を後にしたアイシャに続いて部屋を出る。その際、ちゃんと敬礼をして部屋を出た。



そして、戻ってきたとき。

はフルフルと震えている。

「あの、バルトフェルド隊長?」

「ああ、よく似合うね。君はこういう服は着慣れているのかい?」

聞く耳を最初から持ち合わせていないようで楽しそうにの様子を眺めるバルトフェルド。

対しては律儀にも「寧ろ、苦手です」と返した上で抗議をする。

「バルトフェルド隊長、私は『つなぎ』をお借りしたいとお願いしたと思うのですが?」

「仕方ないだろう。彼女が君を気に入ってるのだから」

彼女、先ほど「アイシャ」と呼ばれた女性を見るとにこりと微笑む。

「で、どうしたらつなぎを貸していただけるんですか?」

の言葉に肩を竦めたバルトフェルドに「コーヒーはどうかね?」と聞かれて「いただきます」と応えた。

アイシャは静かに部屋を後にした。


凄く深いコーヒーの香りが漂ってきた。

豆にまったく拘りを持っていないには馴染みのない香りだ。

コトリ、とテーブルの上にカップを置いてバルトフェルドはの正面に座る。

「まあ、飲んでみてくれ。君は僕のコーヒーの初心者だから癖のないものにしてみたのだけど」

バルトフェルドに勧められてはそれを一口飲む。

「インスタントの方が好きです」

の言葉にバルトフェルドは声を上げて笑った。

「うーむ、インスタントか。なるほど、今度は別のブレンドで作ってみよう」

そう言って自分の淹れたコーヒーを一口飲む。

「美味いと思うんだがな」と呟いた。

「好みは人それぞれだと思いますよ」

の言葉に「まあ、そうだがな」と同意した。

「君は、“”だからな。ちょっと話がしてみたいんだよ」

「やっぱり」と呟くに苦笑いをする。

「まあ、“有名税”みたいなものだよ」

「それで、何を語らえばつなぎを貸してくださるのですか?ノルンのことですか?」

「“ノルン”、君のあの機体か。人の機体にはあまり興味がないからな。そうだな。君は、戦争はどうすれば無くなると思うかね?」

突然の問いには目を丸くする。

バルトフェルドの表情を見ても彼は微笑を浮かべているだけだった。











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桜風
08.3.24


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