Like a fairy tale 44





が暫く沈黙をしていると、バルトフェルドが立ち上がる。

「これは、プラントにあるエヴィデンス01のレプリカだよ。本物は見たことあるかね?」

「ええ、まあ。正直、あまり興味は無いのですが」

の言葉に「ほう?」と反応する。

「先ほどの。『戦争はどうやれば無くなると思うか』ですが。私は、戦争はなくならないと思っています」

興味を持ったらしく、彼は話を促した。

「今の、戦争。つまり、コーディネーターとナチュラルの戦争は、それこそどちらかを滅ぼせば無くなると思いますよ。全く現実的ではないことですが」

「『現実的ではない』、かね?今の我々の能力、戦力を以ってすれば何とかならんかね?」

「ならないでしょう。私は、コーディネーターは人として、というか、生物としてナチュラルに劣っていると思っていますし。どこが素晴らしいのだか...
ああ、同じくコーディネーターのバルトフェルド隊長の前で口にしないほうが良かったでしょうか。不快に思われたら、忘れていただけると非常に助かります」

の言葉にバルトフェルドはクツクツと笑い、

「僕が君に意見を聞いたのだから、そんな大人げのない反応はしないつもりだ。ところで、参考までに何処が劣っているんだ?」

の言葉を受け入れる。

「生殖能力って、生物の最初の能力ですよね。寧ろ、基本です。私たちはそれが劣化してきているんですよ。婚姻統制を敷いても、出生率は上がりません。人工授精の研究をしていますけど、それも遅々として進まない。ナチュラルは、今のコーディネーターの攻撃を凌げばあるいは勝てる可能性だってあります」

「なるほどねぇ」と席に戻ってコーヒーカップを傾けながらバルトフェルドは呟く。

「君は、さっきのイザーク・ジュールと婚約者だろう?それは、婚姻統制から来たものではないのかね」

何で知ってるんだ...

はそう思ったが、それが顔に出てしまったらしく、バルトフェルドは声を上げて笑う。

「うん、意外と君はわかり易いね。まあ、これも“有名税”だと思って諦めることだ」

は少し冷めたコーヒーを一口飲んだ。


「戦争とは、難しいね」

呟くバルトフェルドには視線を向ける。

「スポーツのようにルールや時間がない。どうなったら勝ちで、どうなったら負けか。その基準がないのだから、終わらせるにはどうしたらいいのか分からない」

「さらに、終わったと思っても別の戦争が始まります。人は、争う生き物ですから」

そう反応したをちらりと見る。

「ふむ。なるほど、だから、君は『戦争はなくならない』というのか」

「ええ。争いを最小限にとどめることは出来ると思います。人は理性を持つ動物ですから。だから、“話し合い”というものもありますしね。言葉というのはこのためにあるものでしょう。自分の意思を、相手に伝えるために」

の言葉を聞いてバルトフェルドは「うーむ」と唸った。

「君は本当に軍人かね?」

からかうようなその言葉にも微笑んで

「ええ、一応。残念な事に、私は、誰かに自分の意思を伝えるのが苦手なものですから」

と応える。

冗談半分で言った言葉だったが、意外にもバルトフェルドが真剣な眼差しを向けてきては少したじろぐ。

「大切なものは、最後まで大切にしたまえ。こんな時代だからこそ、な。後悔したときには、きっともう遅い」

そう言って、また軽い笑顔を浮かべた。

「さて、悪かったね。君と話をするためにこんな事をして。つなぎ、だったね。用意しよう」

バルトフェルドがどこかに連絡を入れると、部屋がノックされてドアが開く。

そこには、アイシャが立っていた。

「何かしら、アンディ」

「彼女に、つなぎを。約束だからね」

彼の言葉にアイシャは残念そうな表情になる。

「可愛いのに...」

そう言っての手を引いて部屋を出る。

は振り返ってバルトフェルドを見た。

彼はの行動に気付いて小さく首を傾げた。

何か言わないと、と思ったがは言葉が浮かばない。

「また、話をしよう。君の話は中々痛快だったよ。クルーゼには勿体ない部下だな」

バルトフェルドが言うとは困ったように笑って「それ、別の隊長にも言われました」

と応えると

「その隊長とは気が合いそうだ」

と笑って返す。

部屋を出ては敬礼をしてドアを閉めた。

「...本当に、つなぎがいいの?」

とても残念そうに聞くアイシャに向かって、は思いっきり頷いた。









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桜風
08.3.24


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