| シャワーを浴びて服を着替える。 この後はつなぎに着替える予定だから、取り敢えず部屋の中は楽な格好で良いだろうとタンクトップで過ごしていた。 部屋のブザーが鳴り「俺だ」と声がある。 「どちらの俺様ですか?」 がドアの向こうに声を掛けると 「入るぞ」 と返事をせずに入ってきた。 そして、の格好を見て一瞬足を止めて眉間に皺を寄せる。 「何よ」 イザークの表情にはむっとして言葉を返す。 「何だ、その格好は」 「いいでしょう。私の部屋なんだし。つなぎに着替えるつもりだから、態々赤いの着るのも面倒だって思ったの」 「また、ノルンか?」 「そうよ」 イザークの機嫌が悪いので仕方なくはTシャツに腕を通した。 開け放たれた窓から潮風が入ってくる。 カーテンがその風に遊ばれてふわりと泳いでいた。 ふと、デスクの上を見ると端末が開いていた。 「何だ?」 イザークの視線を辿って、『何だ』と問われたものを見る。 「ああ、データの整理をしてたの。この間の砂漠のね。何となく纏めるのを後回しにしちゃってたから、今やっちゃおうと思って。折角出来た時間だし」 「見てもいいか?」 「どうぞ」と言うの言葉を待ってイザークはそれに近寄る。 ずらりと並べられたノルンのデータ。 「毎回こんな事をしてるのか?」 「うん。まあ他の人に弄ってもらえないから。だったら、自分でデータを纏めてノルンに記録させておこうかなって思って。役に立つよ」 の言葉にイザークは意外にも面白く無さそうな表情を浮かべた。 「イザークは、休まなくてもいいの?さっきも言ったけど、休暇無しで此処までずっと来たんだし」 そういうの言葉に反応を見せずにイザークはベッドにポスリと座った。 「ああ、ベッドに寝るなら上着脱ぎなよ」 が慌ててイザークを止めてハンガーを持って傍による。気にしていなかったイザークだが、ハンガーを持って来られては脱いだほうがいいのだろう、と大人しく上着を脱いだ。 そして、ベッドに寝転ぼうとしたら、 「ブーツは脱いでね」 と止められる。 「口うるさいヤツだ」と言いながら言われたとおりにブーツを脱いだ。 今度こそベッドにゴロリと寝転ぶ。 はイザークに背を向けて端末のデータの整理を始めた。 イザークが目を瞑ってもカタカタとキーボードを叩く音が耳につく。 「」 名前を呼んだ。 「なあに?」 そう返す間もキーボードの音は止まらない。 「こっちに来い」 「えー」と抗議の声を上げながらもはイザークを振り返る。手は、まだキーボードに載せたままだ。 「いいから来い」とイザークが不機嫌に促し、は肩を竦めて溜息を吐きながら椅子から立ち上がった。 「何?」 ベッドの傍に立ってイザークを見下ろしながら聞く。 「此処に座れ」 ベッドの上に座っているイザークが指差した付近には腰を下ろした。 徐にイザークはゴロンと寝転んでの足の上に頭を載せる。 「何してんの?」 呆れたようにが言うと 「硬い」 と文句がある。 「仕方ないでしょう?...枕、使えば?柔らかいよ」 が少し不機嫌に返す。 しかし、イザークはの上から動こうとしない。 はこれ見よがしに溜息を吐いた。 ふと、イザークに視線を落とす。イザークはもう瞳を閉じていた。 額の傷に触れてみる。 嫌がるようにイザークが顔を動かした。 それでも、はまたイザークの傷をなぞる。 「やめろ」 煩わしそうにイザークが呟いた。 「消さないの?」 尚も触れながらが聞いた。 イザークは目を明けてを睨む。しかし、結構睨まれ慣れてきたは怯まない。 「消さない」 イザークが応えた。 「なんで?」 「これは、誓いだからだ」 「もしかして、復讐の?...そういうのは心に溜めておかないほうがいいよ。気付かないうちに壊れちゃうから」 の言葉にイザークは少しだけ驚いた。 何か、あるのだろうか? 聞こうと思ったけど、上手く言葉に出来そうもなくて諦めた。 再び目を瞑ったイザークの耳に心地良いメロディが流れてくる。 「何の曲だ?」 「わかんない。何となく記憶に残ってるだけだから。たぶん、母が歌ってくれたんだと思う」 そう応えてはまたその続きであろう、その歌を口ずさむ。 イザークもそれについては深く聞きたいことではなく、今はの歌う子守唄に心を落ち着け、やがてまどろみの中へと沈んでいった。 |
桜風
08.3.31
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