Like a fairy tale 52





協力者から渡されたモルゲンレーテのIDは第1エリアまでしか入れないものらしい。

それ以上は完全な個人情報システムで管理されているため、急には用意できなかったという。

市街地の裏手の丘を登り、林を抜けて街が見下ろせる開けた地に出た。

「2手に分かれよう」

アスランが言う。

「どういう分け方?」

が聞くと

「んじゃ、オレとニコルとアスランが市街地。とイザークは海岸付近の方に」

とディアッカが仕切る。

アスランを見ると

「じゃあ、そうしよう」

と言って市街地側に向かって足を向けていった。

とイザークは顔を見合わせた。が肩を竦める。

「行くぞ」

イザークは声を掛けて海岸地方面へと足を向けていった。


日が昇り、少しずつ海岸地区に人が増えてきた。

ベンチに座って人が増えるのを待っていたイザークたちも動くことにした。

「意外とモルゲンレーテの作業着って皆気にしないみたいだね」

が言う。

「まあ、この国象徴に近いんじゃないか?」

イザークは応えながら周囲へ気を向けて歩いた。

「しかし、やっぱ、娑婆の空気はいいね」

「“娑婆”って何だ?ったく...浮かれてないでちゃんとしろ」

は口を尖らせた。

こんなことなら、ニコルと2人の方がよっぽど良い。口うるさくないし、性格が温厚だから怒鳴られることもない。

「怒鳴られる原因はどこにあると思ってるんだ」

イザークが言う。

「あら。口に出てた?」

「出してたんだろうが」

イザークは不機嫌に返してそのまま臨海公園へと足を向けた。




集合時刻が近づいたため集合場所に決めていた場所へと向かう。

が軍港に停泊しているオーブ軍艦を眺めていると

「そっちはどうだった?」

と言いながらディアッカが疲れたようにドサッとベンチに腰を下ろした。

その隣にニコルも座る。

「ダメだ。何の手掛かりもない」

「こっちもだ。そりゃ、軍港に堂々と有るとは思っちゃいないけどさ」

「あのクラスの船だ。そう易々と隠せるとは...」

「ニコル、衛星でも何もわかんないんだよね?」

がニコルの持つ端末を覗きこむ。

「ええ、何も...」

「こういう島ってさ。島を刳り貫いてその中にも港があったりするんだよね、きっと」

が言う。

「まさか。本当に居ないってことはないよなぁ」

ディアッカが軍港を振り向きながら呟いた。

「どうする?」と声を掛けられたアスランは「欲しいのは確証だ」という。そして、何とか中から探るしかないだろうという。

「確かに厄介な国だ、ここは」

イザークは皮肉を込めてそうひとりごちた。



モルゲンレーテ工場の第1エリア内に向かった。

「軍港より警戒が厳しいな」

モルゲンレーテ工場の一角を眺めながらイザークが言う。

チェックシステムのかく乱については、何重にもなって時間がかかりそうだとアスランが言う。

「通れる人間を捕まえたほうが早いかもしれない、ってところね」

工場区内を眺めていると何かが飛んでくる。

「何、あれ」

が呟き、イザークたちもそれを見上げた。

アスランが一歩前に出て腕を上げるとそれはアスランの手にとまった。

『トリィ』と鳴く。

たちはアスランの腕にとまっているものを覗き込んだ。

「なんだそりゃ?」

「へぇ、ロボット鳥だ」


アスランが表情を強張らせる。はその視線を辿り、工場の中から出てきた人に行き着く。

「トリィ!」

何かを探しているようだ。

アスランが重い足取りで彼に向かって行った。

「ん?あ、ああ。あの人のかな」

ニコルが呟く。

「で?どうする?まだ探す??」

ディアッカが言う。

「時間を掛ければ良いってものじゃないけどね、こういうのって」

が応えた。

「確かに。俺たちが出来るのはここまでだ。アスランは確証が欲しいといったが、これ以上できないってことは『足付きは此処には居ない』っていうのが俺たちが出せる結論だな」

イザークが応え、

「無理に突っ込まなくて良かったねー」

にちくりと厭味を言われる。

イザークはふん、と鼻を鳴らして車に乗り込んだ。

「おい、行くぞ!」

イザークが戻ってこないアスランに声を掛ける。

どうやらロボット鳥を返したのだから長居は無用と言うわけだ。

戻ろうとしたアスランが呼び止められたのか、一度足を止めた。しかし、すぐにこちらに向かって戻ってきて大人しく車に乗る。

「艦に、帰ろう」

アスランが言い、

「足付きの居場所が分かりませんでしたが、仕方ないですね」

とニコルが頷いた。









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桜風
08.4.14


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