| 時間は少し遡る。 少し離れた小島で大きな爆炎があがっているのを確認した。 「何?!」 は低空飛行を続けていた。 そんな中に聞こえた爆発音とモニタに映る爆炎。 ノルンの手には毛布に包んだものを大切に運んでいる。今、攻撃を受けるわけにはいかない。 「どうしよう。気付いてくれるかな?でも...」 島の陰に隠れながら、同じ高度を保って飛行しているが残り少ないエネルギーも気になる。 結局、通信部分の修理は出来なかった。 回線全てが切断されており、さらに、救命信号もどうやら破損したようだ。 「あれだよね。絵に描いた餅?うーん、ちがう...」 ブツブツと呟きながらは飛行する。 あのアークエンジェルを追いかけていたのだから、その速度と進路を予測して飛んでいた。 「センサーも死んじゃってるんだよな...」 正直、今のノルンは飛行する鉄の塊といったところだ。他の機能は殆ど反応しない。 持っている武器といえば、ナイフだけだが、それで交戦なんてどうせ出来ない。 「うー、イザーク。気付いて...」 モニタから見える海面に少し異変がある。 地球軍の潜水艇だったら、アウトだ... は息を飲んだ。 だが、そこに現れたのは見慣れたザフトの母艦だった。 「何処の隊だろう?」 ノルンは珍しい、というかこの世に今のところ1機しかない機体だからザフトも機影で取り敢えず着艦させてくれるようだ。 中から人が出てくる。 は思わず顔をほころばせる。 コックピットに搭載している銃を手にしようとしたがその必要はない。 ハッチを開ける。 「何故連絡を寄越さん!」 顔を見た途端に怒鳴られた。 けれども、彼の表情はとても心配した上で怒っているのがよく分かる。 「ごめん!」 「ハッチを開く。入れ!!」 コックピットから叫ぶと艦上から叫ぶイザーク。 「待って、その前に救護班を呼んで!!」 「負傷しているのか!?」 途端にイザークが心配そうな表情を浮かべる。 「違う!まあ、少しは怪我してるけど...ちょっと下がって」 そう言ってノルンの手を下ろした。 ノルンの手の中で大切に運んできたものを見て、イザークは驚愕に目を見開いて暫く呆けた。 「ね、早く救護班呼んでってば!!」 イザークは慌てて救護班に連絡を入れての連れて帰った、ニコルを運んだ。 もノルンをハンガーに安置した。 「あーあー...」 メカニックが途方に暮れた表情でノルンを見上げた。今まで殆ど着弾のなかったノルンの修理。慣れていない分、意外と時間が掛かりそうだ。 「よくもまあ、生きてたなぁ。エネルギーもギリギリじゃないか」 「悪運が強いのは父親譲りなもので」 が言うと 「そりゃ、頼もしいね」 と笑われた。 「なるほど、全部壊れたな。本当に運がいい。この艦が発見できたんだからな。OSは?」 「回路のバイパス作りまくってしまったので、それを再構築して以前のものに戻します」 「じゃあ、オレらは前のとおりにしておくから、あとの回路の調整等は、まあ。が後で体を休めた後にでもやっておいてくれ」 「あれ、今何処に向かってるんですか?」 「クルーゼ隊長からの帰投命令が出たらしい。カーペンタリアだ。ま、本当には運が良かったな。帰投するのが早ければ、捕まらなかったし、追撃に向かっていてもレーダーで拾えなかった。親父さんに感謝しろ?」 はペコリと頷いてドックを後にした。 一度ハンガーを振り返る。 今、自分の立っているところから見たこの光景には眉を顰めた。デュエルとノルンしかいないガランとしたドックは何だか寂しかった。 「!」 名前を呼ばれて振り返ったらそのままイザークに抱きしめられる。 「い、痛い...」 は何だか骨がミシミシ言いそうなほど力強く抱き締められた。一応、負傷者なのに... 「あの、イザーク?」 返事がない。 「皆さん、ご覧になって..」 「うるさい!どれだけ、どれだけ心配したと思っているんだ」 唸るようにイザークが言う。 そして、はイザークが震えているのに気がつく。 どうしたもんかと悩んで、そのままイザークの背に手を回す。 「うん、ごめんね」 「死んだかと思った」 「うん」 「もう会えないのかと思った」 「ごめん。不安だったね」 「アスランと、ディアッカも不明だ」 「そっか...」 「俺だけ、おめおめと生き残ったかと」 「『おめおめ』って言わないの」 子供に言うようにが優しく諭す。 「生きる事は一番大変な事よ。一番、凄い事。イザークが何度も海に落ちたけど、生きていてくれて嬉しいよ。今回は、怪我をしちゃったんだね」 頭に巻いている包帯をつついては言う。 「うるさい!」 イザークは離れてスタスタと去っていく。目じりにはうっすらと涙が浮かんでいた。 が振り返ればメカニックがほけーと2人の様子を見ていた。 「あのー、修理...」 が声を掛けると我に返ったようにそれぞれが作業に掛かる。 は自室に帰って服を着替えた。 医務室に向かうために部屋を出るとイザークが廊下に立っていた。 どうやら、からあまり離れたくないようだ。 は目をぱちくりして驚いた。 「医務室、一緒に行く?」 イザークは頷いた。 しかし、その途中に艦長から呼び出され、顔を見合わせてイザークはを連れて艦長の下へと向かった。 「オーブから連絡が入った。アスラン・ザラがオーブに救出されたらしい」 イザークは呆然とした。はイザークを見上げる。 「それは、迎えに行くように、ってことですよね」 が艦長に確認する。 「そうだ。は戻ったばかりでまだ治療も受けていないだろう。一人で、行ってくれるか?」 艦長がイザークを見る。 「はい」 イザークは静かに返事をした。 すぐに輸送機で指定されたポイントへと向かった。 オーブの輸送機からボートでアスランが戻ってくる。 「貴様!どの面下げて戻ってきた!」 イザークがいつものように言うと 「ストライクは討ったさ」 と覇気のない声が返って来る。 イザークは表情を緩めた。 仲間が、帰ってきたことが嬉しい。 |
桜風
08.4.25
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