Like a fairy tale 59





アスランがカーペンタリアに戻って1日がたった。

イザークはドックで新しく製造された最新鋭の量産MSの中に修理中のデュエルとノルンを見上げる。

あのヘリオポリスから奪取してきた機体はその2機となった。

ディアッカからの連絡は無く、彼はMIAに認定された。

初めて会ったときから気が合うやつだと思っていた。同室で、色々と世話を焼くと呆れることもあった。

あれで意外と細かい。

自分が短気を起こしていると宥めたり、煽ったり。時には、怒ったり。

仲間の中で一番話をしたのは、きっとディアッカだ。言わなくても何となくお互いの事を分かっていたと思うし、少なくとも、自分にとってはそんな存在だった。

「イザーク」

声を掛けられて上方を見る。

がノルンのコックピットに居た。イザークも上に上がる。

「もう調整してるのか?」

「うん、通信回路が死んでたからね。色々バイパス作ってやってみたんだけど、それでもダメだったの。元々回線が死んでたから。だから、回線を直してもらったら今度はプログラムを元のとおりに再構築しないといけないから。今はその作業中」

の言葉を聞いてイザークは中を覗き込む。

「見ても良いか?」

「見る前に聞いて」

既にモニタを覗き込みながら言うイザークには笑いながら返す。

たしかに、複雑な回路になっている。

「これは、骨が折れるな」

イザークが言うと

「自業自得なのです」

うむ、と頷きながらはキーボードを叩き始める。


「おー、お前等」

メカニックが声を掛けてきた。

イザークは覗き込んでいたノルンから出てきた。も顔だけを出す。

「アスラン・ザラ。今日付けで国防委員会直属の特務隊になるんだって。知ってたか?今日、プラントに帰るんだってよ」

とイザークは顔を見合わせてノルンのコックピットを後にした。

アスランの病室に向かうと看護士が部屋を片付けている。

「アスランは?」

が聞くと、荷物を片付けに宿舎へ一度戻ったという。

とイザークは宿舎へと向かった。

滑走路を見ると待機中のシャトルがあり、恐らくあれにアスランが乗るのだろう。

宿舎の廊下の向こうから人影が近付いてくる。

「あれ、アスランだ」

がイザークに言うと「ああ、」と返ってくる。

「アスラン!」

が声を掛けた。

。イザーク!?」

アスランは少しだけ歩調を速めた。

「アスラン、もう時間ないの?」

に聞かれて時計を見る。

「いや、まあ。ほんの少しなら」

「じゃあ、病院行こう!」

の言葉にアスランは驚く。

「病院って...」

「アスラン、聞いてないの?ニコル、生きてるの」

「ええ!?」

アスランは思わずイザークを見る。

「本当だ。が、助けた」

「昨日手術してまだ目を覚ましてないんだけど、面会は出来るようになったから顔は見れるよ」

が伺うようにアスランを見上げた。

アスランはひとつ頷いてたちと共に病院へと向かった。


病室のプレートを見てもアスランは未だに信じられない。

「本当、に...」

アスランが呆然と呟く中はブザーを鳴らして部屋に入る。

丁度看護士が包帯を替えていた。

「顔を見に来たのですが」

が言うと

「今終わりました。どうぞ」

と言って部屋を後にする。

ゆっくり、アスランがベッドに近づいた。

「命に別状はないって。ただ、後遺症は残るかもしれないって先生は言ってた」

がそう言ってアスランを見上げると彼は涙を流していた。

「ニ、コル...」

そっと頬に触れる。温かい頬は生きている証拠だ。

アスランはそのまま床に膝をつき、俯いて声を殺して涙を流した。

イザークとは静かに部屋を後にした。


アスランが病室から出てくる。

イザークはアスランに近づいた。

「俺もすぐそっちに行ってやる。貴様などが、特務隊とはな」

アスランは左腕を負傷しているため、右手で荷物を持っていた。それを床に降ろしてイザークに手を差し伸べて握手を求める。

「色々と、すまなかった。今まで、ありがとう」

イザークは目を逸らし、そして、手を伸ばして握手を交わす。

も。色々と、ありがとう。ニコルの、ことも」

「気をつけて。アスランって馬鹿みたいに真面目だから、危なっかしいのよ。少しは気を抜きなさいよ」

も差し出された手を握って言葉を交わす。

「それ、別の人にも言われたよ」

少し笑いながらアスランが言う。

「じゃ、」と荷物を持ってシャトルへと向かった。

「今度は俺が部下にしてやる」

イザークがアスランに背を向けたまま不意に言う。

は驚いてイザークを見上げた。アスランも、思わず足を止める。

「それまで死ぬんじゃないぞ」

「イザークの部下って、もの凄く大変そうだから今のうちに断っておきなよ、アスラン」

が茶々を入れると「やかましい!」とイザークが怒鳴る。

2人のいつものやり取りを聞いてアスランの頬が緩む。

「わかった」

少し振り向いてアスランは返事をしてまた足を進める。

アスランの足音が遠ざかる中、イザークは振り返る。

「寂しくなるね」

ポツリとが呟いた。

「別に」とイザークは素っ気なく答える。

「素直じゃないなー」と呟いてドックに向かうを「やかましい」と言いながら追い抜くイザーク。

その背中を見ながら、は小さく笑った。









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桜風
08.4.28


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