Like a fairy tale 62





の空腹も収まり、病院へと向かった。

昨晩と同様に詰所に声を掛けてニコルの病室へと向かう。

ブザーを鳴らすと、昨日よりもしっかりした声でニコルの声が返ってきた。

「お邪魔します」

が声を掛けて病室に入り、イザークがそれに続く。

「おはよ、ニコル」

ニコルの顔を覗きこんでが言う。

「もう『こんにちは』な時間ですよ」

ニコルが笑いながら返した。

「今朝はが寝坊をしたからな。たるんでいる」

イザークが言うとニコルがクスリと笑う。

「たまには良いじゃないですか」

ニコルが言うと「ニコル優しい!」とが声を出す。

イザークはチッと舌打ちをして窓の外に目を遣った。

「具合はどう?」

が聞く。イザークに椅子を勧めたが、立っているといったのでがそれに腰を下ろした。

「ええ、なんと言うか。快適、ではないですね」

苦笑をしながらニコルが言う。

「それはそうだろう。昨日まで目を覚まさなかったんだからな」

イザークが返すと

「ええ、ホント。良く寝てたみたいですね」

とニコルが言う。

「どこか、変なところはない?」

が心配そうに聞く。

「『変』というのはまだ分かりませんよ。起きれないし、体も、まだ動かせる状態じゃないのですから。けど」

少し寂しそうに天井を見る。

「けど?」

が続きを促した。

「確実に、目は悪くなっています」

は辛そうは表情を浮かべて俯いた。

イザークもニコルの顔を覗きこむ。

「どれくらい、見えないんだ?」

「んー、どういえば良いんでしょうか。普通に本を読んだり、ピアノを弾いたりするのにはきっと支障はないと思います。けど、もうMSには乗れないかもしれません。ああ、。そんなに落ち込まないでください」

落胆しているにニコルが困ったように声を掛ける。

「ニコルが困ってるぞ。顔を上げろ」

は俯いたまま立ち上がって「飲み物、買ってくる」と震える声を出して病室を後にした。

それを見送ったイザークはニコルに「悪いな」と声を掛け、「いいえ」とニコルも微笑む。


「しかし、MSに乗れなくなったのなら、除隊でもするか?」

が居なくなってイザークはの座っていた椅子に腰を掛けてニコルに言う。

「まだ、分かりません。近々本国に戻って治療を受けることになってます。僕は、またザフトに戻りたいとは思ってるんですけど」

ニコルの応えにイザークは意外そうな表情を浮かべる。

「戻りたいのか?」

「僕にも出来ることが有ると思います。だから、」

ニコルの言葉にイザークは溜息を吐いた。

「母親が、泣くんじゃないか」

「そうかもしれません。けど...僕、ディアッカのことを聞きました。MIAだって」

イザークの瞳が揺れる。

「ああ...そういうことに、なったな」

「だから。出来ることがあるのに、しないってのは、嫌なんです。MSに乗れなくてもオペレーターは出来ます」

「まあ、今は体を治すことだけ考えておけ。近々、スピットブレイクが発動される。そうしたらもうこの戦争もきっと収束に向かうだろうし、もしかしたら終わるだろう。完治したころには平和になってるかもしれないしな」

イザークがそう言って微笑む。ニコルはきょとんとイザークを見つめていた。

「な、なんだ?」

ニコルの視線に居心地の悪さを感じてたじろぐ。

「イザークって、そんな優しい表情が出来るんですね。僕、やっと納得しました」

イザークの眉間に深い皺が刻まれる。

「どういう意味だ?」

「だって、イザークっていっつも怒っているとか、人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべているとか。そういうのばっかりだったと思って。だから、何ではイザークと一緒に居るんだろうって。よく怒鳴られてたし」

「ほう?」

「でも、そうですね。分かりにくいけど、イザークって凄く優しいんですね」

グッと詰まるイザーク。凄くきらきらした笑顔でそう言われたら今度は怒鳴れなくなる。

「やかましい」とイザークは呟いてそっぽを向く。

「照れてますね?」というニコルの言葉に応えずに舌打ちをした。そんなイザークにニコルはクスクスと笑う。赤くなっているイザークの耳が見えている。

「笑うな。ったく...は何処まで行ったんだ」

「イザーク」

ニコルが声を掛ける。

「何だ」と返すイザーク。でも、ニコルの顔は見ない。何だか調子が狂う。

「僕の言う事じゃないと思いますけど。、頼みますよ」

イザークはチラリとニコルを振り返ってふん、と鼻で笑う。

「誰に言っている。当然だ」

「そうでした」と応えてニコルは笑う。イザークも何だか可笑しくなって笑った。

やっと落ち着いたが戻ってきたらイザークとニコルが笑っている。

は首を傾げた。

「どうしたの?」

「何でもありません」「何でもない」

2人が同時に応えて顔を見合わせてまた笑う。

「私だけ除け者?」

不服そうには訴えるが、やはり「男同士の秘密だ」とか何とか言って教えてくれない。

最初こそ膨れていただが、2人が楽しそうだから何となく自分も楽しくなって笑う。



ニコルが声を掛ける。

「本当にありがとう。僕はまた、ピアノを弾くことが出来ます。また、僕のピアノ、聞いてくださいね」

ニコルの言葉には嬉しそうに頷いた。









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桜風
08.5.5


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