| の空腹も収まり、病院へと向かった。 昨晩と同様に詰所に声を掛けてニコルの病室へと向かう。 ブザーを鳴らすと、昨日よりもしっかりした声でニコルの声が返ってきた。 「お邪魔します」 が声を掛けて病室に入り、イザークがそれに続く。 「おはよ、ニコル」 ニコルの顔を覗きこんでが言う。 「もう『こんにちは』な時間ですよ」 ニコルが笑いながら返した。 「今朝はが寝坊をしたからな。たるんでいる」 イザークが言うとニコルがクスリと笑う。 「たまには良いじゃないですか」 ニコルが言うと「ニコル優しい!」とが声を出す。 イザークはチッと舌打ちをして窓の外に目を遣った。 「具合はどう?」 が聞く。イザークに椅子を勧めたが、立っているといったのでがそれに腰を下ろした。 「ええ、なんと言うか。快適、ではないですね」 苦笑をしながらニコルが言う。 「それはそうだろう。昨日まで目を覚まさなかったんだからな」 イザークが返すと 「ええ、ホント。良く寝てたみたいですね」 とニコルが言う。 「どこか、変なところはない?」 が心配そうに聞く。 「『変』というのはまだ分かりませんよ。起きれないし、体も、まだ動かせる状態じゃないのですから。けど」 少し寂しそうに天井を見る。 「けど?」 が続きを促した。 「確実に、目は悪くなっています」 は辛そうは表情を浮かべて俯いた。 イザークもニコルの顔を覗きこむ。 「どれくらい、見えないんだ?」 「んー、どういえば良いんでしょうか。普通に本を読んだり、ピアノを弾いたりするのにはきっと支障はないと思います。けど、もうMSには乗れないかもしれません。ああ、。そんなに落ち込まないでください」 落胆しているにニコルが困ったように声を掛ける。 「ニコルが困ってるぞ。顔を上げろ」 は俯いたまま立ち上がって「飲み物、買ってくる」と震える声を出して病室を後にした。 それを見送ったイザークはニコルに「悪いな」と声を掛け、「いいえ」とニコルも微笑む。 「しかし、MSに乗れなくなったのなら、除隊でもするか?」 が居なくなってイザークはの座っていた椅子に腰を掛けてニコルに言う。 「まだ、分かりません。近々本国に戻って治療を受けることになってます。僕は、またザフトに戻りたいとは思ってるんですけど」 ニコルの応えにイザークは意外そうな表情を浮かべる。 「戻りたいのか?」 「僕にも出来ることが有ると思います。だから、」 ニコルの言葉にイザークは溜息を吐いた。 「母親が、泣くんじゃないか」 「そうかもしれません。けど...僕、ディアッカのことを聞きました。MIAだって」 イザークの瞳が揺れる。 「ああ...そういうことに、なったな」 「だから。出来ることがあるのに、しないってのは、嫌なんです。MSに乗れなくてもオペレーターは出来ます」 「まあ、今は体を治すことだけ考えておけ。近々、スピットブレイクが発動される。そうしたらもうこの戦争もきっと収束に向かうだろうし、もしかしたら終わるだろう。完治したころには平和になってるかもしれないしな」 イザークがそう言って微笑む。ニコルはきょとんとイザークを見つめていた。 「な、なんだ?」 ニコルの視線に居心地の悪さを感じてたじろぐ。 「イザークって、そんな優しい表情が出来るんですね。僕、やっと納得しました」 イザークの眉間に深い皺が刻まれる。 「どういう意味だ?」 「だって、イザークっていっつも怒っているとか、人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべているとか。そういうのばっかりだったと思って。だから、何ではイザークと一緒に居るんだろうって。よく怒鳴られてたし」 「ほう?」 「でも、そうですね。分かりにくいけど、イザークって凄く優しいんですね」 グッと詰まるイザーク。凄くきらきらした笑顔でそう言われたら今度は怒鳴れなくなる。 「やかましい」とイザークは呟いてそっぽを向く。 「照れてますね?」というニコルの言葉に応えずに舌打ちをした。そんなイザークにニコルはクスクスと笑う。赤くなっているイザークの耳が見えている。 「笑うな。ったく...は何処まで行ったんだ」 「イザーク」 ニコルが声を掛ける。 「何だ」と返すイザーク。でも、ニコルの顔は見ない。何だか調子が狂う。 「僕の言う事じゃないと思いますけど。、頼みますよ」 イザークはチラリとニコルを振り返ってふん、と鼻で笑う。 「誰に言っている。当然だ」 「そうでした」と応えてニコルは笑う。イザークも何だか可笑しくなって笑った。 やっと落ち着いたが戻ってきたらイザークとニコルが笑っている。 は首を傾げた。 「どうしたの?」 「何でもありません」「何でもない」 2人が同時に応えて顔を見合わせてまた笑う。 「私だけ除け者?」 不服そうには訴えるが、やはり「男同士の秘密だ」とか何とか言って教えてくれない。 最初こそ膨れていただが、2人が楽しそうだから何となく自分も楽しくなって笑う。 「」 ニコルが声を掛ける。 「本当にありがとう。僕はまた、ピアノを弾くことが出来ます。また、僕のピアノ、聞いてくださいね」 ニコルの言葉には嬉しそうに頷いた。 |
桜風
08.5.5
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