Like a fairy tale 67





パナマ侵攻が成功に終わり、帰投した。

たちの乗った艦は、ひとまずカーペンタリアへ向かっていた。

向こうからイザークの怒鳴り声と女の子の声がする。

一度だけ、アラスカの補給のときに聞いたときの声だ。

が急いでそこに向かうとイザークが何やらその女の子を詰問している。

「ちょっと、イザーク。怖がってるでしょ!」

!こいつは、地球軍だ!!」

イザークが指差して言う。

「人を指差してはいけませんと習わなかった?」と言いながら彼女を見る。

確かに、見慣れないが地球軍の制服のようだ。

「じゃあ、捕虜なんじゃないの?」

が言うと

「隊長の部屋から出てきたんだ!スパイに決まっている」

と詰め寄る。

「スパイなの?」

はっきり言ってこんな身のこなしと態度の子がスパイだなんて思えない。

が聞くと涙目で首を振る。

「違うって」

「本人がそう言ったから、スパイじゃないというのか、貴様は!」

イザークがに向かって怒鳴った。

「じゃあ、隊長に直接聞きなよ。全く...ほら、いっといで」

がイザークを促した。

イザークは意外そうな表情をする。

はいかないのか」

「そりゃ、行かないわよ。イザークの意見を尊重してあげるんだから、早く確認してきてよ」

の言わんとしていることが分からないイザークは眉を顰める。

「だって、この子。スパイなんでしょう?だったら、目を離した隙に逃げられるとさあ大変!何せ、隊長室から出てきたんだもんね」

イザークはをキッと睨んで隊長を探しに向かった。

はそのイザークの背に向かって「いってらっしゃーい」と手を振った。


「さて、」と言いながら溜息を吐いて彼女を振り返る。

「ごめんね、怖かったでしょう?イザークってば結構すぐに怒鳴るクセがあるから、慣れたらそうでもないけど、慣れるまではちょっと怖がられても仕方ないわね」

彼女はにすら怯えているようだ。

ちょっと困ったな、と思いながらも自己紹介をしてみることにした。

「私は、。あなたのお名前、伺っても良いかしら?」

彼女は悩んだ末に、「フレイ。フレイ・アルスター」と小さく名乗った。

“アルスター”といえば、元大西洋連邦の事務次官だったかなんだったか...
先遣隊として宇宙に上がってきたが、ザフトによって落とされた。だから“元”。
落としたのは、奇しくもこのクルーゼ隊。
はその目で見たわけではないが、ホーキンス隊長が色々と自分に入ってくる情報を横流し、というか、に向けて駄々漏れさせていたので当時の情勢についてはある程度耳に入っている。

彼女はその娘なのだろうか。

「何故、隊長室から出てきたの?」

「あの人に、連れてこられて...」

彼女はそう言った。

いや、来た経緯ではなく...

「外はコーディネーターだらけだってのは、分かっていたのよね?此処が、潜水艦の中だというコトも」

彼女は頷く。

「どうして?」

もう一度聞く。

「怖..くて」

怖くて部屋を出たらもっと怖い目に遭ったようだ。気の毒に...

しかし、彼女が廊下に出ているのは正直良いとは思えない。

イザークも指摘したとおり、地球軍の制服を着ているのだから。

「えーと、隊長がたぶんイザークと一緒に戻ってくると思うから。それまでは我慢して部屋の中に居てくれないかしら?ほら、さっきイザークが言ってたけど、それは地球軍の制服でしょう?さすがに、まずいと思うわけ」

の言葉に彼女は納得したようだが、「あなたは?」と聞く。

「えーと。流石に私はザフト兵だし隊長室に無断では入れないわ。ごめんね。だけど、此処に立ってる。私が居なくなったらイザークはまた煩いだろうし。大丈夫。隊長が戻られて許可をいただければ一緒に部屋に入ってこれる」

の目を見て彼女は「本当?」と呟く。

「ええ、本当。だから、部屋の中の方が安全よ。その服を着ている限りは」

の言葉にフレイは頷き、部屋の中に入った。

そして、1分置きに「ねえ、居る?」と声を掛けてくる。その度には「居るよ」と返していた。

イザーク、早く帰ってきて!

返事をするのに飽きたは心からイザークの戻りを待っていた。









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桜風
08.5.19


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