Like a fairy tale 72





「悪いな、待たせたか」

プラントのとあるカフェバーの片隅に座る人物に向かってホーキンスは手を挙げた。

「いいえ、お忙しいのですから。ホーキンス隊長は」

そう言って立ち上がろうとした彼を制す。

「足が悪いんだ、態々立たなくてもいい。オレはパトリックみたいに偉そうな事は好きじゃない」

ホーキンスはそう言いながら注文を取りに来たウェイトレスに軽く合図をして、注文する。

「いや、本当に申し訳ない。こんなところまでお越しいただいて」

「で?用件は何だ?」

ホーキンスが話を促す。

彼は、すぐには話さなかった。ホーキンスの注文したコーヒーがテーブルに置かれてやっと口を開く。

「ラクス・クラインか?」

しかし、彼が声を出す前にホーキンスがそう聞いた。

彼は目を丸くして驚く。

「何故、此処で彼女の名前が?」

「悪いが話は手短にしてもらいたい。こう見えて意外と忙しいんだ。で?オレを勧誘に?ヘッドハンティングか。悪くない選択だな」

ホーキンスの言葉に彼は「ははっ」と笑って

「話が早い。全て察してくださっているのか。それで、ご返答は?」

「悪いが」

と言ってコーヒーを飲んだ。

「やはりダメ、ですか。一応、ダメ元で話してみようと思ってお呼び立てしたのですが...」

「ああ、悪いな。今のパトリックは放っておけんし、カインも何だか最近妙でな。友人として、流石に見捨てるわけにはいかないんだ。ただ、オレは君たちがしようとしていることに関しても、反対はしない。一緒に行くことは出来ないがな」

ニヤリと笑う。

「カイン・氏と戦友なのですよね」

彼が言う。

ホーキンスは頷き、「ついでに、パトリック・ザラもだ」と付け加えた。

「では、のことは?」

彼の言葉にホーキンスは眉を上げる。

「知っている。何だ、お前も..ああ、はジブラルタルに降りたんだったな。そのときか」

彼は頷いて喉の奥で笑う。

「彼女の戦争についての見解は、実に面白かった。まるで、今のザフト兵ではない言い草でしたよ」

「敵を全て滅ぼすことに興味を持っていないからな」

ホーキンスの言葉に彼は頷く。

「戦争は、なくならないそうです」

「オレも、その意見には賛成だ。小さくすることしか出来ないだろう。いや、そもそも何を以って『なくなる』というのか。一度終結してもすぐに別の戦争が始まる。規模に拘らなければな」

「...彼女は、来てくれると思いますか?」

彼の言葉にホーキンスは暫く悩み、

だけの考えなら、きっと君たち寄りだ。だが、あの子はイザークを見捨てられんよ。お互い素直じゃないだろうが、ちゃんと惹かれている」

と目を細める。

「イザーク・ジュールは我々と道を共には...」

「できんな。イザークの考えではない。イザークの母、エザリア・ジュールが今のザフトの理念に従う限り」

「どういうことですか」と彼が問う。

「母の無償の愛というのはとても大きい。が、それは大きければ大きいほど重荷にもなり、心を縛る鎖ともなる。エザリア・ジュールとイザーク・ジュールはそんな関係だ。たぶん、な。イザークがプラント、ザフトである限り、はザフトから離れんよ」

ホーキンスの言葉を聞いて彼は椅子に深く背を預ける。

「欲しかったのですがな、彼女が」

呟く彼に、

「残念だったな。オレも何度もを勧誘しているが断られっぱなしだ。クルーゼ隊にいるくらいなら絶対にホーキンス隊の方がいいはずなのにな。取り敢えず、待遇はもの凄く良いぞ」

ホーキンスが本気とも冗談ともつかない軽口を叩く。


ホーキンスはコーヒーを飲み終わって立ち上がる。

「行動を起こすなら早い方が良いぞ。オーブが攻撃されている。地球軍にも、ザフトにも着かないと決めたあの強靭な小国が、間もなくそらに上がって来る。たぶん、彼らは君たちと同じだ。平和を歌う君たちの姫君にもそう伝えて急かせ。いい加減、パトリックも彼女の居所を掴めるだろうからな」

「ご忠告、感謝致します。しかし、戦場であなたと遭った時は...」

彼が少し試すように言う。

「撃てばいい。オレは、ザフトだ。君たちがオレを邪魔だというならそうするしかないだろう?ただし、的になる気はさらさらないからな」

「さすが、ザラ議長虎の子のホーキンス隊ですね」

彼が言うとホーキンスは寂しそうに目を細めた。

「アイツは、もう信じられる人間が少ないからな。かわいそうだよ」

呟くようにそう言ってホーキンスは店を後にした。

独り残された彼はふぅ、と溜息を吐く。

そして、冷めたコーヒーを口にした。

「僕が入れたコーヒーの方が断然美味しいじゃないか」

不満そうにそう呟いた。









NEXT



桜風
08.5.30


ブラウザバックでお戻りください