| エザリアが帰った後、食事を済ませてイザークがを送る。 「まだそんなに遅くないからプラントまで送る」 とイザークは言っていたが、は「ステーションまでで良い」と断った。 がそう言うなら、無理強いしても仕方ないとイザークもそれ以上強くは言わなかった。 ステーションまでの道のりで何となく、窓から外を眺める。 それについてイザークは文句を言わない。無理に会話をする必要はないとお互いが思っているから。話したいことがあれば話すし、それを聞く。そういうのにもう慣れた。 擦れ違う車を眺めていると、ある車を運転している人物とその助手席に座っている人物を見て思わず顔を向けて追ってしまう。 のその様子に、イザークもバックミラーでが思わず追っている車を見た。 型としては全然珍しくない。 プラントのオーソドックスな車だし、色も変わった感じはしない。 「どうした?」 イザークに声を掛けられてはビクンと肩を震わせた。 その様子に首を傾げながらもイザークはの言葉を待つ。 「え、何が?」 「さっき、ずっと追っていた対向車。知り合いでも乗っていたのか?」 イザークに気付かれているとは思わなかったは少し慌てて「ううん」と首を振る。 「気になっていたんじゃないのか?」 イザークが続けると 「昔、テレビで見た有名人に似てる人だったから。本物かなって思って」 との口から意外な言葉が出てきた。 「有名人?」 「名前は忘れたけど、見たことがあるから。まあ、気のせいだろうけど」 「そうか。も意外とミーハーだな」と返してイザークはそのことは気にしなくなった。 はもう一度振り返る。 胸騒ぎを覚えていた。 何故、あの2人が一緒に居るのだ? 気を鎮めるために深呼吸をする。「酔ったか?」とイザークが心配そうに声を掛けてきた。 「大丈夫」 はそう応えたが、イザークは窓を開ける。 「ありがと」 が礼を言い、イザークは「ああ」と短く返した。 が家に帰るとやはり家には誰もいない。 エザリアの誘いを断った父が会っていた人物... 考えても仕方ない、とは気持ちを切り替えてバスルームに向かった。 自室に帰ると意外と物が増えていなくてホッとした。 エザリアもの居ないときまで何かを贈ることはしなかったらしい。 前回、家に帰ったとき慌ててクローゼットに仕舞ったドレスを思い出して、はクローゼットを開けるのを躊躇った。 「やめよう...」 見るだけでも何だか疲れそうなので、今回の休暇はあのクローゼットは開けないでおこうと心に決めた。 いつも持ち歩いている父から譲り受けた銃を取り出す。 そして、端末を立ち上げて銃に仕舞っているデジタルチップを取り出した。 カーペンタリアで少しだけ見たが、それ以降中々時間が取れなかった。 これを目にするときっとまた泣いてしまう。 だから、ずっと封印していた。 気がつくと、朝日が昇っており、「ああ、貫徹だ...」と呟く。 やはり、泣いていたようで少し頭が痛い。 顔を洗ってこようと洗面所に行くと父がいた。 「おはよう」 が声を掛けると父がぎょっとした。 「どうした、」 「まあ、ちょっとね。顔、洗ってもいいかな?」 の言葉に父は洗面台を譲る。 「昨日、エザリア様と会ったよ」 「ああ、私も誘われたが。先約があってね。申し訳なかったと思ってるよ」 父の言葉には頷いて 「次はちゃんと来るように」 が言うと 「まあ、次が有ればな」 と父が返す。 昨日父を見たことを話そうかと思ったがやめた。何だか、聞いてはいけない気がした。 「朝ごはん、食べるよね」 の言葉に父は頷く。 「今日は何か予定は入っているのか?」 「イザークと出かけるよ」 「何だ、久しぶりの休みなのに」 少し意外そうに父が言う。少しだけ、抗議をするように。 「昨日お父様はいらっしゃらなかったじゃない。お相子よ」 そう言っては洗面所を後にした。 時間になってイザークがやってくる。やはり花束持参だ。 はそれをやはり慣れない、という表情で受けとる。 奥から出てきた父を見て、イザークは丁寧に挨拶をした。 「少し上がっていかないか」と父に誘われてイザークは頷いた。 2人は和やかに話をしていたが、待ちくたびれたを目にしてイザークが「すみません」と話を切る。 父は意外そうにしたけど頷いて2人を見送った。 墓地へと向かう途中、花束を買う。 「そういえば、カイン殿もお変わり無くてよかったな」 イザークの言葉には「うん」と呟く。 の母は戦没者というわけではないので、墓はこのプラント内にある。 の案内するとおりにイザークは運転して彼女の母が眠る地へと着いた。 結構広い墓地の隅っこの方にの母の墓はあった。 「静かでいいでしょ?」 端っこにあることについてはそうコメントをする。 イザークは微笑んで頷いた。 花を捧げる。 は両膝をついて胸に手を当てた。 イザークはザフトの敬礼を向ける。ザフトは、自分にとって誇りだから。 「ママ、イザークだよ」 が墓標に向かって言う。 それに驚きもしたがイザークは少し頭を下げたまま 「初めまして、イザーク・ジュールです。昨年、嬢と婚約をさせて頂きました」 と墓標に向かって挨拶をする。 は驚いてイザークを振り仰ぐ。 そんなに微笑み、イザークは口を開いた。 「先に戻っている。当分来れないんだから、ゆっくりすればいい。気が済んだら、さっきの駐車した場所覚えているな?戻って来い」 と声を掛けてイザークは墓地を後にした。 イザークの背を見送りながら「ありがとう」と呟いた。 |
桜風
08.6.6
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