Like a fairy tale 80





デュエルとノルン、そしてバスターが向かい合って地上に降り、それぞれパイロットもコックピットから出てきた。

「イザーク」

ディアッカが名前を呼ぶ。

イザークは返事をせずに代わりにディアッカに向けて銃を向けた。

はイザークを見て、そのままディアッカに視線を戻す。

イザークに銃を向けられたディアッカは驚いていた。

親友に銃口を向けられるとは思っていなかったのだろう。

「敵のそんな言葉を信じるほど、俺は甘くない!」

ディアッカがに視線を移す。は肩を竦めてイザークを見た。

「オレはお前の敵か?」

ディアッカの問いにイザークは言葉に詰まった。

そして、ディアッカはに視線を向ける。

は?」

「まだ、私に銃口を向けてないから保留かしら?」

の返答にイザークは彼女をキッと睨む。

「まだそんなことを言っているのか!」

「言うわよ。最後まで、きっとね。ああ、でも。ディアッカはしないと思うけど。プラントを落とそうとしても、それは許せないわね。墜とすわ」

は微笑んだ。穏やかなその微笑みは却って戦慄を覚える。

「敵となったのは貴様の方だろうが」

ディアッカに向かって唸るようにイザークが言う。

「オレは、お前達の敵になった覚えはねぇよ」

静かに応えるディアッカに

「ふざけるな!」

とイザークは怒鳴り、は思わず肩を竦める。

「貴様はもう、裏切り者だ!」

「プラントを裏切ったつもりもない」

強い口調でディアッカが否定する。

「なんだとぉ!!」

「イザーク、銃、下ろしたら?」

が言うとイザークがキッと睨む。

「やかましい!貴様はどうしてそんなに呑気なんだ!!」

イザークに言われては溜息を吐いた。

「だって。此処でディアッカがイザークに銃を向けたり、私に向けたりしたら私はこれを構えるし、イザークと違って躊躇わずにいつだって引き金を引くことだって出来るもの。心配しないで。貴方と一緒に居るのは“”なのよ。ディアッカだってそれは分かっているはず」

そう言って「ね?」とディアッカに視線を向けると「参ったねぇ」と肩を竦められた。

も一応銃を持って降りている。

ただ、構えないだけ。

「今言ったけど、オレはプラントを裏切ったつもりはない。けど、ただナチュラルを...黙って軍の命令に従って、ただナチュラルを全滅させるために戦う気も、もうないってだけだ」

ディアッカの強い口調にイザークは怯んだ。


ディアッカが静かに話し始める。

自分が見たもの。

今の自分達の状況。

そして、何のために戦っているのか。

「ラクス・クラインにバルトフェルド隊長。そして、アスランまでもか」

ディアッカの言葉を聞いてイザークが呟く。

「ああ」

「オーブは、やっぱりそれを選んだんだね」

の呟きに「ん?」とディアッカが返すけど「何でもない」と首を振る。

「何故だディアッカ。何故!」

イザークが問い質すけど、ディアッカはそれについては答えられない。

今まで自分が見て感じた事があるからこその選択だ。

それをいくら口で説明しても、分かってもらえないだろう。その相手がイザークともなれば尚更だ。

彼は、まっすぐで純粋だから。

イザークが忌々しそうにと婚約をしたと話しているとき、いい組み合わせだと思った。

彼女はイザークよりも柔軟で視野が広い。

お互いが短所を補える、そんな2人だ。

ディアッカがに目を向ける。

ディアッカの考えていることが何となく分かったようでは困ったように笑った。

「フリーダムのパイロット。アイツが前のストライクのパイロットさ」

ディアッカの言葉にイザークは眉を上げる。

「アイツもコーディネーターだ。アスランと、ガキのころからの友達だってよ」

「なんだと...?」

「オレには、奴らほどの業も覚悟もねぇけどさ。見ちまったから。アイツら見て、アラスカやパナマやオーブ見て。それでもまだザフトに戻って、軍の命令どおりに戦うなんてこと、オレにはできねぇよ」

「ディアッカ!」

彼の言葉にイザークが責めるように名を呼ぶ。

突然大地が揺れる。

「攻撃されてるみたいよ」

がディアッカに言った。

自分達が中に居るのだからザフトが攻撃してくる事はない。

『イザーク、。聞こえるか』

クルーゼから通信が入る。

『引くぞ』と短く言ってその通信が切れる。

ディアッカは静かにバスターに向かった。

イザークは銃口をディアッカに向ける。

「ザフトじゃなきゃ敵だって言うなら撃てよ」

「騙されてるんだ、お前は!」

イザークの言葉に「さぁて、どっちかな。そりゃ」と言って背を向け、「わからねぇけど、オレは行く」とバスターに向かう。

一度ディアッカは振り返り、を見た。

その視線を受けては頷く。

「大丈夫」

声は出さずに口だけ動かしたにディアッカは微笑んだ。

「できりゃ、お前達とは戦いたくないんだけどな」

そう言ってコックピットに乗り込んだ。

「ディアッカ!」

が下から声を掛ける。

顔を覗かせると

「私に銃口は向けないでね、墜とすよ。アスランにも、そう言っておいて!もし、可能なら貴方の仲間達にも」

が両手をメガホン代わりにしてそう叫ぶ。

ディアッカは軽く手を挙げてハッチを閉めてバスターは飛び去っていった。


イザークは俯いたまま暫く動かなかった。

はノルンのコックピットへと上がり、

「イザーク、戻ろう」

と声をかける。

「ああ」と短く答えてイザークは安全装置を解除していない銃を持ったまま、デュエルのコックピットに戻った。

「解除してないんだから、態々向けなくても良かったでしょうに」

が通信を送るが、イザークの返事は無かった。

2機は大破した隊長機を抱えてヴェサリウスへと帰投した。









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桜風
08.6.16


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