Like a fairy tale 81





「隊長!」

イザークはデュエルをハンガーに安置して隊長機へと向かう。

しかし、隊長機のコックピットは既にもぬけの殻だった。

「は?」

コックピットを目にしてイザークは思わず声を漏らす。

「どうしたの?」

「いや、もう隊長が...」

も覗き込んだ。

「隊長自身はご無事だったんじゃないの?私達も戻ろう」

に促されてイザークはパイロット控え室へと向かった。


間をおかず、MS隊には出撃命令が下る。

コックピットで待機をしているとクルーゼの通信が入る。

それは、地球軍に向けてのもだった。

拘留中の捕虜、つまりフレイを地球軍に返還するとのことだ。

「どういうことだ?」

イザークがに通信を送る。

「分からない」

は応えながらも、フレイから聞いた『鍵』のことが頭に浮かんだ。

その鍵が戦争を終わらせる扉を開く。

「まさか...」

「どうした?」

心配そうなイザークの声には慌てて「何でもないよ」と返した。


「目標は飽くまでエターナルだ」

クルーゼがMS隊全軍にそう通達した。

イザークが発進した後、

。ノルン、出ます!」

も続いて出撃をする。

最後に隊長機が出た。

ヴェサリウスからポットが射出される様子がモニタに映った。

「こんな中...」

は呟いたが、隊長の命令だ。どうしようもない。

捕虜だし、一応、進んで撃つ事はないだろう。まあ、うっかり撃ち落されることは有るだろうが...

はそう思ってエターナルに向かった。

イザークはクサナギに向かう。エターナルを援護する艦だ。

が、バスターの砲がデュエルの足を止める。

は向かってくるオーブMSを落としていく。

のスピードにはついていけないらしく、ロックはされていない。

武器を撃ち、コックピットは狙わずに居るが、やはり後から続くジンによって撃墜されている。

地球軍からもMSが出撃しており、へライフルを向けていた。

向かってくるMSを落としていると救命ポットからの国際救難チャンネルでフレイが助けを求めている。

振り返ると混戦のど真ん中に居た。

それは地球軍のMSに回収されて艦へと向かっている。

、ヴェサリウスが!!」

イザークの言葉に振り返ればヴェサリウスが墜ちている。

今から行ってもどうしようもない。ガモフのときと違って、もう助けることは出来ない。

「くそ!」

は毒づき、エターナルへと向かっていき、ライフルを放つ。

エンジンを掠った。続けて撃とうとしたが、ヴェサリウスの爆発にノルンは煽られ、その間にエターナルは遙か向こうへと進んでいた。

イザークは呆然とヴェサリウスの爆炎を眺めていた。

「こちらも撤退するぞ。残存部隊は座標デルタゼロに集結しろ。此処で地球軍とやりあっても何にもならんよ」

クルーゼの通信にイザークは眉を顰めた。

周囲を見渡すとノルンがライフルを手にヴェサリウスの残骸の中に浮かんでいた。



「ええ、聞いてたわ。座標デルタゼロね。行こう」

いつもどおりのの声にイザークは少しだけ安心した。




残った艦に帰投して取り敢えず空いている部屋を宛がわれた。

しかし、は部屋に向かわずにノルンのコックピットにいた。

「何が、シルバーレイだ」

は低く呟く。

「温い戦い」とイザークが言った言葉を思い出した。

「全くよね」

自嘲気味に呟きながら、ノルンの設定を変えていた。

イザークはに宛がわれた部屋に向かってみた。

ブザーを鳴らしての返事を待たずにイザークは部屋に入った。

しかし、部屋の中は明かりが落ちており、人の気配も無い。

「またノルンのところか」

呆れた風にイザークは呟いてイザークはドックに向かう。

少しは休むように促さなければまたずっとあのコックピットに篭りっきりになるだろう。

ヴェサリウスが墜ちたことは自分でもかなり衝撃を受けている。

だから、が心配になった。

彼女は気にしないようにしていると言っても、結局“”や“シルバーレイ”は否が応でも彼女に着いて回るものだ。

無意識に彼女もそれを容認している節がある。

だから、だと誰かが言わなければ彼女はその重責に押しつぶされるかもしれない。

コックピットのハッチが閉まっている。いつもは開けたまま調整をしているのに。

だったら、もしかしていないのかもしれない。



一応声を掛けてみた。

返事がない。

気のせいか、と思ってノルンを後にしようと思ったが、

さんは、いつもこんなに長いんですか?」

とメカニックのひとりに声を掛けられてイザークは驚く。

、休め。少し休憩してからにしろ」

イザークが閉まったコックピットに向かって声を掛ける。

返事がない。

コックピットを叩いてみた。強制的に開けようとも思ったが、それはが怒る。

出来る範囲、彼女の意思を尊重したい。

「ごめん、ひとりにして」

中からの声がした。

「ダメだ」

イザークは短く応える。

そして、そこに座り込んだ。

「終わるまで待ってやる。だから、早く出て来い」

どう声を掛けてノルンのハッチに背を預けて腕を組む。

「部屋で休みなよ」

が声を掛け、

「お前がそこから出てきたら考えてやっても良い」

とイザークが応える。

「ノルン、また後でね」

はそう声を掛けてハッチを開けた。

突然ハッチが動いたため、イザークは慌ててそこから離れる。

「開けるときには開けるといえ!」

怒鳴られた

「開けたよ」

と一言言う。

の表情を見てイザークの眸が揺れる。

いつもの、余裕のある彼女の瞳ではなくなっていた。









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桜風
08.6.16


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