Like a fairy tale 82





本国に戻ると大幅な軍の再編成が行われたようで、イザークとも隊長に昇格した。

イザークは、クルーゼ隊を引き継ぎ、は新しく編成された隊を持つ。



着任のため、それぞれ母艦を受領しに向かう本部の中でイザークがを見つけて声を掛けてきた。

「あら、久しぶり。って、そうでもないか」

は振り返って軽く挨拶をする。

「ノルン、何かしているのか?」

「うん、遊ばせているのも勿体ないから。フル稼働させようと思って」

イザークが首を傾げる。

「ジュール隊は、一応皆さんと顔を合わせているから気が楽なんじゃない?」

が言うと

「新しく配属されたヤツもいるが。ま、確かに。は?」

「んー、まあ。名前のお陰でボチボチかな」

やはり、“”の名はザフトでは大きいらしい。


指令本部へと入った。

そこで指揮をしているのはエザリア・ジュールだった。

「議長は?」

イザークも知らなかったらしく首を振る。

「イザーク、さん。頼んだわよ」

2人は揃って敬礼をし、それぞれの母艦の受領を行う。

隊長は、少し残ってちょうだい」

母の意外な言葉にイザークは眉を上げた。

「はっ」

部屋を出ようとしていたは返事をして足を止めた。

イザークは仕方無しに「失礼します」と部屋を後にした。


「ノルンの、動力部のことだけど...」

話を切り出したエザリアに

「それは、お断り出来ることでしょうか?」

が返す。

「ええ、まあ。時間が掛かるというのがあるから、その間は別のMSで出てもらうことになると思うし」

「他のMSで出るだけならまだしも、ノルンのOSの調整は私にしか出来ません。流石に、隊長が抜けた隊って格好がつきません。大丈夫です、今の動力でも前以上の動きは可能ですし、下手に弄られると却って調整に時間が掛かったり動きが鈍る可能性があります」

がそう返すとエザリアは頷いた。

「わかったわ。あなたがそこまで言うなら...ノルンの改造はもう終了したそうよ。あとは、OSの調整をして頂戴」

「了解しました」

と敬礼をして部屋を後にする。





本部に駐留しているとボアズへの進行が始まった報せを受ける。

ノルンの調整をしていると副官が呼びに来た。

「ボアズに!?」

流石にも驚く。

「新兵のパイロットたちは息巻いてますよ。出撃を!とね」

副官に言われてはノルンを見上げる。

「これ、ずっと隊長が調整されていたんですか?」

ノルンを見上げて副官が問う。

「ま、私しか受け付けてくれないから」

「何で廃棄しなかったんですか?不便でしょう?調整に時間が掛かるならお休みする時間もないでしょう」

彼の言う事は尤もだ。

「まあ、隊長じゃなかったから。前までは」

「じゃあ、今回から...」

そう言った副官にニッと笑う。

「今のザフトにこれ以上早い機体は無いの。フリーダムとジャスティス、いなくなったからね。ま、ノルンはもう出られるし、詳しい情報、知りたいからブリッジに向かうわ。若い子たちは取り敢えず宥めてて」

副官にそう言ってはブリッジに向かった。

「何で、今来たのかしら...」

の呟きに艦長が「は?」と返す。

「ああ、いえ。だって、今までずっとこなかったでしょう?正しくは、“来れなかった”でしょうけど。でも、ボアズの守りの堅さを知らないわけでもないし、だったら何故今突然こんなに...」

ボアズの戦況を耳にしながらは呟く。

「あの、新型MSや、自分たちの製造したMSの大量生産によって思い上がったのでは...?」

艦長の言葉には眉を顰めた。何かが引っ掛かる。

「ま、それも有るだろうけど。違う何かが有る気がする。うちに出撃命令は?」

「ないです」

オペレーターが応えた。

「そう...」

命令が出ないのに出るわけには行かない。

はそのままブリッジに止まった。


ブリッジのモニタに映る映像にオペレーターたちは言葉を失う。

「核、か...そりゃ、勢いよく攻めて来るわね」

の呟きに1人のオペレーターが振り返って睨む。

は静かに彼に視線を返した。

「何かしら?」

「何故そんなに落ち着いて...!!」

「此処で慌てても仕方ないからよ。次は、ヤキンかプラントか...出撃命令が出るわ。皆もそのつもりで。ブリーフィングルームに居るから、何かあったら呼び出してちょうだい」

静かに、温度を持たないの声に艦長は「はい」と声を返し、それを聞いてはブリッジを後にした。

頭に浮かんだのは“鍵”とフレイの存在。

「...なるほど、この方法なら戦争は終わるわ。けど、受け入れられない方法ですよ、クルーゼ隊長」

エレベータの中で静かには呟いた。









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桜風
08.6.23


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