Like a fairy tale 84





が母艦に戻ると部下たちがその帰艦を迎えた。

「お疲れ様。ごめんね、途中から放っぽりだして」

が言うと部下たちはそれぞれ首を振る。

のあの速さには自分たちはついていけないから、と。

そして、核ミサイルの第1波を全て撃ち落したに対して尊敬の眼差しを向けていた。

「そんな、褒められることはしてないのよ」

一言言ってはドックを後にする。

「人を沢山殺したのだから...」

部下が傍からいなくなって自嘲気味に笑って呟いた。


「現在の状況は?」

ブリッジに向かい、状況の把握に努める。

「地球軍は下がりました。こちらも補給をしております。あと、ジェネシスについてですが、今回は60%で射出したとの事。エザリア・ジュール議員からそれを隊長に報告しておくようにと伝えられています」

は少し考えて「了解」と返した。

なるほど、あれで60%ということは、もし、次に同じことをしたら出力が上がっていた場合ノルンも一緒にジェネシスの射線域に入るというコトだ。

エザリアはその注意を促したかったのだろう。

「あと、エザリア・ジュール議員からもし可能なら本部に出頭するようにとのことですが...」

艦長に言われた。

「...留守にしても?」

「構いません。すぐに地球軍からの攻撃は再開されないでしょうし」

艦長の言葉に頷いては本部へと向かった。






「母上」

本部に戻り廊下を歩いていると母の姿を目にして思わず声を掛けた。

母は足を止めて嬉しそうに自分の名前を呼ぶ。

「ずっとこちらに?」

「ええ、大事な局面ですから。間もなく、ジェネシスの2射目が行われます。そうすれば、この長かった戦争も漸く終わるわ」

母の言葉を聞いてイザークは「あの、」と言葉を切り出す。ジェネシスという存在にイザーク自身疑問が生じている。

「あなたも、連戦で疲れているだろうとは思うけれども、あと少しです」

「はい...」

母の向けてくるその労いの言葉によって何も言えなくなる。

「未来は、わたくしたちのものよ」

コロニーメンデルで話をしたディアッカのことが頭から離れない。

「あの、母上。2射目の照準は..」

イザークが聞こうとしたらエザリアの側近が時間だと告げる。

「では、無茶はしないで。貴方の隊は後方に回します」

母の言葉にイザークは驚く。

「あなたの仕事は戦後の方が多くなるのよ。...さんは、残念だけど最前線に出てもらうことになったけれど」

「な!?母上!!」

「仕方ないのよ、あの子は『』なのだから。わたくしも、あの子をそんな危ない目に遭わせたくないのだけれど、彼女は“シルバーレイ”を継ぐ者なの。見たでしょう?さっきの戦闘を」

母の言葉にイザークは言葉に詰まる。

確かに、凄かった。

今まで自分が『温い』と表現していたあのの戦い方とは全然違った。的確に、最小限の動きで敵を沈黙させる。そして、プラントに向かっていた核を全て落とした。たった、1機で。

あれが“”なのかと思った。

けれど、それでも納得が出来ない。

「ですが!」

「今、言ったけれども。貴方は戦後に大きな役目を担うことになるわ。そして、さんは今、大きな役目を担うの。戦争が終われば、彼女はゆっくり出来るわ。そう、あなたと幸せな家庭を築くの」

エザリアはイザークの頬に唇を寄せて去っていく。

「ああ、そうそう。さっきまでさんとお会いしていたのよ」

振り返って言う母に

は今何処に!?」

とイザークは駆け寄った。

「さあ?ドックに向かっていたわ。第5区の」

そう言って母は司令室に向かって行った。

「くそッ!」

イザークはそのまま母の言った第5区のドックへと向かって行った。




行き交う人と何度も肩をぶつけながらイザークは走った。

前方に見慣れた背中を目にする。

!」

彼女は振り返った。

「ああ、イザーク。さっきはありがとう」

そう言って微笑むはいつもと変わらない。

「隊長、」を促すのは彼女の部下だろう。

「うん、先に行ってて。大丈夫、私は時間をちゃんと守れるから」

と部下に言って先に行かせる。

「何?どうかした?ねえ、怖い顔をしてるわよ」

の穏やかな表情に対してイザークは睨んでいる。怒っているのだ。が最前線に行くというのに、自分は後方で...

それを覆せない自分が歯がゆい。

「大丈夫、イザーク。ジュール隊の居る宙域まで敵を向かわせないから」

「違う!」

の言葉に思わず声を荒げる。

はきょとんとした。

「俺は、俺は...」

は静かにイザークの手を取った。

「大丈夫。私はよ」

が微笑む。

その表情を見ると、余計に苦しい。

「ねえ、イザーク。私、今まで貴方に言ってないことがあるのに気がついたわ」

「聞かない」

聞きたくない。

「聞いてよ」

「嫌だ。言いたいことは戦後に言え」

困ったなぁ、とは苦笑する。

「でも、言うわ。ねえ、イザーク。私、あなたと婚約者になれてとても幸せよ。ありがとう」

「聞かないと言っただろう!」

イザークが怒鳴る。心なしか、涙目だ。

「うん、言った。けど、イザークはいつも私の話を聞いてくれてたの。それなのに、私はイザークに内緒にしていることが沢山あるの。ごめんね」

「謝るな」

「うん、分かった」

そう言っては背中を向ける。

「じゃあね、イザーク」

思わずイザークは彼女の腕を掴んだ。

「俺も、に言いたいことがある」

は振り返ってイザークの目を見る。

「けど、今は言わない。この戦いが終わったら、言う。だからちゃんと生き残れ。いいな、絶対だぞ」

が目を伏せた。そのまま頷く。

「わかった」

呟くように返してはドックに向かう。

イザークはその背中を見えなくなるまで見送った。









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桜風
08.6.23


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