| カインが選んだそのファイルには子供が2人映っているところから始まった。 映っているのは銀糸の髪とアイスブルーの瞳を持つ子供と、だ。 2人は見詰め合っている。といえば、なんだか可愛らしいが、どう見ても睨み合っている。 「あの、ノルンさん...」 スピーカーから流れたその声は、イザークの聞き慣れたものだった。 「何でしょう、エザリア様」 少しだけカメラがブレた。ノルンが振り返ったのだろう。 だが、その間もと、幼い頃のイザークはお互いから目を離さない。何の勝負だと聞きたくなる。 「その2人は、その...撮っていて楽しいものですか?ずっと睨み合っているではないですか」 呆れたようにエザリアが言う。 「何を仰っているのですか。運命の出会いで2人は見詰め合っているだけじゃないですか。ここまで情熱的に見詰め合っているなんて...感動です!」 「しかし、なんと言うか。鬼気迫るものが...」 エザリアが尚も困惑したように声を掛けるが 「命がけの恋ですね!」 ノルン言葉の後にかすかに溜息が聞こえた。 きっとエザリアが諦めたのだろう。 「でも、ノルンさんが羨ましいわ。私も娘がほしかった」 エザリアの言葉でとイザークがフレームアウトする。 きっとノルンが勢いよく立ち上がってしまったのだ。 「何を仰るのですか!イザーク君が女の子だったらの対になる遺伝子は見つからなかったかもしれないのですよ。それに、とイザーク君が結婚すれば、エザリア様にとってもは娘です!」 「ええ、まあ。そうなるわね。...ノルンさん、私にレンズを向けないで。あと、子供たちが驚いているわ」 エザリアの声にノルンは反応して自分をきょとんと見上げる子供たちにレンズを向ける。 「か、可愛いッ!!」 「親馬鹿ね、ノルンさん」 呆れたように言うエザリアに 「ええ、馬鹿です。でも、可愛いから仕方ないんです!」 と力いっぱい肯定して返す。 「エザリア様、この子達の結婚式はどうします?」 「もうその話!?」 流石にエザリアは声を上げて驚いた。 「ええ、その話です。私、式を挙げられなかったからもうには絶対に式を挙げさせたいと思っているんです。は真っ白なドレスを着て。あ、...ごめんなさい、エザリア様。イザーク君の婚約者になる子が本家ではなくて...」 途端にしゅんとした口調になるノルンにエザリアが笑う。 「構いませんよ、子供たちが幸せなら。それに、本家でなくても“”ですからね。親戚は黙らせますよ、私が。『家』を前面に出すのはノルンさんの本意ではないでしょうけど、そこは我慢してください」 「はい...」 「あら、もうこんな時間」 そう言って椅子を引く音がした。 「今日は、評議会が早く終わるんですよね」 ノルンが声を掛けると 「ええ、夫も久しぶりにイザークと夕食を共にできると楽しみにしていましたので。申し訳ありませんが...」 と言いながらイザークを抱く。 「いいえ、態々来ていただいて本当にありがとうございます。、イザーク君にバイバイしなさい」 母に声を掛けれたはイザークの手をきゅっと握って離さない。 「、イザーク君はおうちに帰るの。手を離して」 「や!」 が首を振る。 映っているエザリアも困った表情を浮かべている。 「、お願いだから」 「やーーーー!!」 そう言っては声を上げて泣き出す。 あの鬼気迫るにらみ合いは、本当に見詰め合っていただけなのかもしれない。 「!」 そう言ってカメラを床に置いた。の足だけが映る。 「なくな」 その声でがぺたんと床に座った。そして、その目の前にもうひとつ、イザークが座る。 「またくるから」 舌足らずな声がスピーカーから流れる。 そして、イザークはの額にキスをして立ち上がった。 はピタリと泣くのをやめた。イザークが唇を当てた額を呆然と手で押さえている。 「ほんとに?」 が聞く。 「ほんとうだ」 イザークが返しては嬉しそうに頷いた。 「じゃあ、がまんする」 「こ、これは...将来が楽しみです、エザリア様!」 ノルンが訴え、 「え、ええ。でも、私は心配になりましたわ。何処で覚えたのかしら...?」 エザリアが困惑した声を出す。 「ははうえとちちうえが...」 というイザークの言葉を遮るように「さ、帰りましょう」とエザリアがイザークの手を引く。 ちなみに、ノルンがエザリアをちょっとだけ映した。 顔が真っ赤でちょっと可愛い。 「では、また」 「ええ、では。今度はノルンさんがちゃんと我が家にいらっしゃい。そこで、子供たちの話をしましょう」 エザリアはそう言って玄関のドアを開けた。 イザークが一度振り返る。優しく微笑んだイザークは手を振って母と共に遠ざかっていった。 |
桜風
08.7.7
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