Like a fairy tale 92





「イザーク」

ニコルの声で医務室に通信が入る。

「失礼」と声を掛けてイザークは立ち上がり、その通信に応じた。

「なんだ?」

「テキストで通信が入ってます。『運命の女神からおかっぱへ』」

...何故それで迷わず自分に??

イザークはちょっとムカついたが口には出さない。

「『迎えに来るのが遅いと思います。早く来るように』だそうです。ただ...」

溜息を吐いたイザークがニコルに「ただ、何だ?」と促す。

「現在電波状態が悪いので、発信源が特定できないんです」

「ああ、大丈夫だ。行って来る」

カインを振り返る。

「申し訳ありません、少し席を外します」

イザークが言う。

「すまないな、父子そろって君に多大な迷惑を掛ける」

イザークは首を振った。

「別に迷惑でも何でもありませんよ。妻を、迎えに行くだけですから」

彼の言葉にカインは目を瞠る。

「まだ、君はそんなことを...?」

「お許し、いただけないのですか?」

イザークの言葉にカインは首を振る。

「違うよ、イザーク君。私は、君の母上を殺そうと思っていた。ザフトを、プラントを壊そうと思っていた」

「でも、のお陰でそれを防げました。と、その母上、ノルン殿のお陰で。防いだんです。つまり、起こらなかった事実は、結局無かったことと等しいのですよ」

イザークはそう言ってカインに敬礼を向けて部屋を出た。


イザークが出て行ってすぐに部屋のドアが開く。

「忘れ物かい」

カインが顔を上げると白いザフトの服を着た人物がもの凄く怒っている表情を浮かべて立っていた。

「ああ、忘れ物を取に来た。馬鹿な、親友をな」

そう言いながら彼は近づき、

「歯、食いしばれ」

と声を掛けて思い切りカインの頬を殴った。

カインの口の端から血が流れる。

「お前たちが此処まで馬鹿だとは思っていなかったよ。子供たちに感謝することだな。いや、それを育てた自分以外の周りの人間に感謝しろ。パトリックは、死んだ...」

「ああ」と力なく応えてカインは項垂れていた。「すまなかった、ホーキンス」呟くカインに「に言え」と冷たく返す。

ホーキンスがカインの見ているパソコンのモニタを覗き込む。

カインは、テキストを読んでいた。

「ノルン、の日記か?」

「ああ、本人曰くオレへのラブレターだそうだ。オレがいつも家を留守にしていたから、の成長を綴って、あの子が嫁に行く前に読ませるつもりだと最初に書いていた。子供の成長を知らない父親が気の毒なのだとな。『愛情たっぷりね』と自分の行動を自画自賛していたぞ」

「ノルンらしいな」

「ああ...は、ブルーコスモスだと知っていたそうだ」

「じゃあ、お前が妾の子だとも知っているのだろうな」

カインが頷き、「うちは、父の緘口令に従う親戚は居ないからな」と自嘲気味に呟く。

「それでも、アイツは守るほうを選んだんだ。偉いよ」

カインはまた頷いた。

「オレには出来すぎた娘だ」

「全くな。だから、オレの嫁によこせ」

「残念だな。イザーク君以外にはやらん。というか、まだ言うか。このロリコン!」

「うるせぇ!」

2人は顔を見合わせて笑う。

「“ジュール”も、これから大変だぞ。パトリックの右腕だったからな」

「大丈夫だろう。彼なら。が厳しい目で選んだ男だ」

ふん、と鼻を鳴らし「ナマイキな」と呟くホーキンスにカインは笑った。









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桜風
08.7.14


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