Like a fairy tale 94





「よー、おふたりさん」

そう言って医務室に入ってきたのは奇跡の生還を果たしたというアンドリュー・バルトフェルドだった。

は立ち上がり、敬礼をする。

イザークもそれに倣おうとしたが「オレはもうザフトじゃないだろう」と苦笑して2人を手で制した。

「それに、君たちも隊長さんなんだろう?」

と続ける。

そういわれて初めて思い出した。

とイザークは顔を見合わせて「あ」と呟く。部下たち、どうしてるんだろう。

2人の表情を見てバルトフェルドは笑う。

「ホーキンス隊長が面倒を見ておられたようだ。安心したまえ」

2人は安堵の息を吐く。

「ホーキンス隊長は...?」

が聞く。

「ああ、ちょっと捜索をお願いしているんだ。長い時間付き合ってはもらえんだろうが、帰還命令が出るまでの間はこちらに付き合うと仰ってくださってな」

イザークとが顔を見合わせた。

「捜索、ですか?」

イザークが問う。

「ああ、こちらのパイロットが、な」

言いにくそうに言う。

「私も、出ましょうか?」

イザークが言うと笑いながら手を掲げて制す。

「いい。君たちは疲れているだろう。先ほど、ホーキンス隊長が仰ったとおりこれからが大変なんだ。僕は、プラントに戻らないけどね」

軽く言う。

「戻られないのですか?」

「まあ、これだけ大事にしたし。別にプラントに未練もないからね。ああ、でもこの艦に乗っていてプラントに戻るという人たちもいるから一応プラントの方には寄港する予定だよ」


暫くしてホーキンスが戻ってきた。

やはり見つけられなかったようだ。

地球軍のほうでも速やかに停戦の動きが取れていないところもあり、途中で攻撃を受けたりしたと言う。

「だから、もしかしたら...」、と言葉を終わらせた。

「んー、難しいですな」

「ああ、この混乱の中、人ひとり、MS1機捜し出すのは骨が折れる。すまないが、帰還命令が出てしまったし。戻らにゃならん」

ホーキンスはそう言ってを見た。

「この艦も寄港するらしいからはこの艦で戻れ。お前の隊はオレが預かっている。イザークは、デュエルに問題ないな?」

イザークが「はい」と頷くと

「んじゃ、お前は隊を引き連れて母艦で帰還しろ。今、ザフトは相当混乱してるからな。うろたえるなよ」

ホーキンスに言われてイザークは頷き、ドックへと向かった。

「あの、ホーキンス隊長」

「カインのことは、心配すんな。オレが何とかしてやる。エザリア・ジュールも一応できる限りのことをしよう。政治の方面にはあまり顔が利かないから少々心配だけどな。まあ悪いが、ジェネシスを破壊したお前の名前を出すことにはなるだろう。そこは我慢してくれ」

は頷いた。



ザフトの軍港に帰還した。

エターナルから降りる。

は部下に散々文句を言われた。「忘れていたでしょう!?」と。

素直に謝るに彼らは笑う。ホーキンス隊長に拾ってもらったから怒っていない、と。

後で聞くとイザークも同じように部下に指摘されたそうだ。『のことしか頭になかったでしょう?』と。

二コルの両親が港まで迎えに来ていた。

二コルは父親に頬を叩かれ、ものすごく怒られている。

ニコルが頭を下げると、傍にいた母親に抱きしめられた。彼女の頬には涙が流れていた。

アークエンジェルも寄港した。一応、諸々の補給が必要だから。

ディアッカはプラントに戻ると決めたらしい。

艦から降りると父親に殴り飛ばされていた。

そして、一緒にいた母親にも殴り飛ばされていた。

その光景を目にしたとイザークはそろって目を丸くした。

顔を見合わせて笑う。

それでも、ディアッカの両親は嬉しそうな表情を浮かべていた。



「で、だ」

なぜかホーキンスの隊長室に呼び出されていた。

「お前ら、この先どうする?」

イザークと。ディアッカにアスランが呼び出されていた。元クルーゼ隊。ニコルは除隊が決まっている。

「私は、除隊します」

があっさり言う。

「寿退職か!」

ディアッカがからかうように言うが、

「“”が軍の中にいると、利用されるからね」

と冷静にが返した。

「まあ、『シルバーレイ』だしな。まあ、そっちはオレが動ける。処理しよう。イザークは?」

「俺も、ザフトを辞めようかと思っています」

イザークの言葉にアスランとディアッカは驚いていた。

「辞めて、どうする?」

「今は、軍よりも国交の正常化、それと国内情勢の安定をさせるのが優先事項だと思っています」

「つまり、政治?」

ディアッカが聞くと頷く。

もともとこの戦争が終わったら軍は辞めるつもりだった。母が言っていたように、戦後は忙しくなる。つまり、政治の方に加わるということだ。そのつもりで勉強もしていた。

ただ、こういう終わり方は想像しておらず、正直政治家になれるかすら立場的に曖昧だ。

「んー。これは、オレの管轄外だな。カナーバ議員に相談してみよう。一応、今の臨時最高評議会議長だからな。エザリア・ジュールのことがあるから少し難しいかもしれんが。彼女はパトリックみたいに頑なではないだろうから。話くらいは聞いてくれるだろう」

そういってディアッカに目を向ける。

「オレは、復隊したいかな?って、除隊したつもりもないんだけど...」

「ん。わかった。MIAを取り消していろいろもみ消してやる」

心強い言葉だ。

そして、アスランに目を向けた。

「オレは...」

「ま、アスランは以上に難しい立場だな。親父がパトリックで、カインと違って思い切り公衆の面前で色々やってたし。正直、プラントに留まることは勧められないな、オレとしては」

ホーキンスが言う。

アスランの父親の名前はは政治的にも、軍事的にも利用価値があり、その息子はこれまた同じように利用価値を見出せる。

『国内情勢を安定させたい』とイザークが言っていたが、その逆の状況を作り出せるのが“アスラン・ザラ”だ。

「んー。じゃあ、ま。イザークとアスランは議長に相談ってことで。アスラン、いつ議長が時間取れるかわからないけど、それまでに自分の未来について考えておけ。そう時間はないが、今日の今日にはならんだろう。早急に処理せにゃならん案件が山とあるはずだからな。アークエンジェルも2、3日は滞在するらしい。まあ、クルーは艦内待機ってやつになるけどな」

そういってホーキンスは話を終えた。

自分の仕事も少なくないのに、たちのことまで気にかけてくれていた。

たちは深く頭を下げて部屋を後にした。









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桜風
08.7.28


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