| 夜中にザフト方面の書類を片付け、朝日が昇った頃に評議会のあるカナーバの執務室を訪れた。 ノックをすると意外と元気な声で「どうぞ」と返事があり、案内してくれた事務官がドアを開けてくれる。 「あなたたちは少し下がっていなさい」とカナーバは側近に言う。 側近たちは渋面を作った。 ホーキンスは、ザラ派だ。少なくとも、そういう目で見られている。 「いいから」といわれて側近たちは渋々出て行った。 「おかけください。コーヒーで、よろしいですか?」 「あ、いや。コーヒーはいい。昨日から何杯飲んだことか...」 溜息混じりにいうホーキンスにカナーバはクスリと笑った。 「用件を、一応お聞きしましょう」 コーヒーから紅茶に変更してそれを用意する。 「エザリア・ジュール」 「でしょうね。実は、タッド・エルスマンとユーリ・アマルフィからもメールが届いています。それについては、ただいま検討中といったところでしょうか」 彼女の言葉に嘆息ついた。 「何とかしてもらえないか、アイリーン」 ホーキンスの言葉にカナーバは溜息をついた。 淹れ終わった紅茶を運んでくる。 「どうぞ」と彼の前に置いた。自分のものも手前に置く。 「まあ、そうですね。彼女に社会的制裁を加えて...」と呟くカナーバに 「二度と政治に関わらない。ジュールの家督は息子に譲って隠居、ってのは弱いのか?」 カナーバはソファに深く座って眉間の辺りをマッサージする。 「それくらいしかありませんね。まあ、あとは監視をつけて軟禁という形になるかもしれません。少なくとも、地球側との条約を締結するまでは。・の名前は、出してもいいのでしょう?」 彼女の言葉にホーキンスは苦笑いを浮かべて頷いた。 の名前がどんどん大きくなる。 「それと、」とホーキンスが言うと「まだあるんですか?」とあきれながらカナーバが言う。 「ある。イザーク・ジュール。評議委員になりたいそうだ。プラントの情勢の安定、地球側との和平。それができるのは政治家だからな。ザフトを辞めて、そちらに力を尽くしたいといっている」 「母親が引退しても息子が政治に関わるのでは...」 と言葉を濁すカナーバにホーキンスは頷いた。 「ああ。だから、話を聞いてやってくれ。お前ひとりで判断しなくていい。むしろ、そうしないほうが良いだろう」 彼女は頷く。 「あと、アスラン・ザラ。イザークよりももっと立場が難しい。あれはまだどうしたらいいか分からなくて悩んでいるといっていた。話を聞いてやってくれ。オレとしてはお勧めなのが、アークエンジェルと共に地球に下ろすこと。あいつが生きているのはまだ発表していない。ザフトを抜け出したあとにMIAになったとも捏造できる」 「それについても検討の必要がありそうですね。...以上ですか?」 カナーバはそう聞いた。 ホーキンスは頷いて紅茶を煽る。 「ああ。ごっそさん。あ、ついでに。マクスウェル議員は?」 ラスティの父親だ。 「彼は、確かに熱狂的なザラ議長の支持者でしたが、エザリアのようにザフトを指揮していたわけでもありませんから、比較的軽いもので済むと思います」 「ん、わかった。悪いな、忙しいのに時間取ってくれて」 ホーキンスの言葉に彼女は頭を振る。 「あなたの頼み、断れるはずがありません」 そういった彼女に苦笑を浮かべた。 「倒れない程度にがんばってくれよ」 「兄上も」 と言ってカナーバはソファから立ち上がった。 イザークとはアークエンジェルへと向かう。 先ほど、フレイからキラが目を覚ましたと連絡が入ったのだ。 アークエンジェルの医務室に向かうと人だかりができていた。 「ああ、来たのか」とたちの姿を見つけたディアッカが言う。 「何、どうかしたの?」 「いーや。みんなあいつのこと心配してたから。目を覚ましたって噂を聞きつけて人が一気に集まったてわけだよ」 「話できないのかな?」 が見上げるとディアッカは首をひねる。 「もうちょい後来たほうが良いんじゃないの?」 はイザークを見上げた。 「そうしよう。待っているだけの時間は勿体無い」 イザークの言葉には頷いてまた夕方に来る旨を話した。 そして、昨晩イザークが付き合えと言った場所に向かう。 病院だ。 昨日のうちに連絡を入れていたのですぐに受け付けてもらえた。 は一人でイザークが手術室から戻ってくるのを待つ。 イザークは、傷を消しにきたのだ。 そう簡単にはいかない。何せ、ずっと消さずにいたのだから。 けど、あれは復讐を誓ったもので。それを消すということは、もうそんな気持ちはないということだ。 はそれが嬉しかった。 昨日、イザークに病院に、傷を消しに行くと聞いたときには驚いた。そして、すぐに嬉しいという感情が湧いた。 の笑顔を見たイザークが耳元で囁いた。 「自分の子供に、こんな姿を見せたくないしな」、と。 その言葉を聞いては、正直反応に困った。 びっくりしたのが一番で、次に来たのは意外にも『恥ずかしい』だった。自分はイザークの婚約者だから、しかもその婚約は子を設けられるかという基準によるものだからイザークの発言はごく当たり前だ。 だってそのつもりではあった。 けど... は思わずひざを抱えて俯いた。 「どうした?」 「知らない!」 の返事にイザークは口角を上げた。 「何だ、照れているのか」 「うっさいおかっぱ!」 そこからは以前のような子供じみた口げんかに発展した。 今回は誰も止めてくれる人物がいないので何とかお互い途中で終わらせるように努力をしたその末に、止まった。 思い出していては恥ずかしいやら、可笑しいやら。そんな気分になる。 手術室のドアが開いた。 ドクターが微笑んで頷く。 ストレッチャーに乗せられたイザークが手術室から出てきた。 麻酔が効いているのか、眠っている。 「今回、少な目の麻酔ですから早めに目は覚めると思います」 看護師に言われては頷いた。 病室でイザークの目覚めを待つ。 「...?」 眩しそうに目を細めているイザークが呟いた。 窓際に座って外を眺めていたは腰を上げてイザークの顔を覗き込む。 「おはよ」と短く声をかけると「ああ」とイザークは返した。 体に力を入れて起きようとした。 「ちょ、まだ無理でしょ?」 が言うが、イザークはなおも体を起こそうとするため、仕方なくはイザークの体を支えた。 視界が狭くてちょっと不快だ。 「我慢して。包帯は2日後にまた病院に来て取るんだって」 が先ほどドクターから聞いた言葉を伝える。 「わかった」とイザークは少し不機嫌に返した。 |
桜風
08.8.8
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