A memorial day 1





何か、最近おかしいな。

は何となく娘の様子を見ながら首を傾げた。

何かをたくらんでいる。

彼女はイザークの遺伝子を継いでいるだけあって、意外とうそ嘘がヘタだ。しかし、素直なことはいいことだ。


「ノルンが変?」

仕事から帰って自室で読書などをしながら寛いでいるとが眉をしかめて声を潜めながら訴えてきた。

「最近、ノルンが変なんだけど」

そんな妻の報告にイザークは眉間に皺を寄せて疑わしそうに彼女の言葉を繰り返した。「ノルンが変?」と。

少し考え、「いつもと、どう違うんだ?」と聞いてみた。

「なんか、秘密を持ってるわね」

「昔は言わなかったか?女性は秘密のひとつやふたつあって当然。ミステリアスなのがこれまた素敵じゃない、と」

言ったかなぁ?

自分の軽口なんて一々覚えていない。

「でも、まだ子供じゃない」

「...はノルンの秘密をどうしても知りたいのか?」

イザークが確認するとは神妙な面持ちで頷いた。

「何故?」

「純粋な知的好奇心」

「なら、却下だ」

すげなくそういったイザークはが持ってきたコーヒーに手を伸ばした。

「えーーー!!なんで?気にならない??ノルン、恋をしちゃったかも」

ピクリとイザークの手が止まる。

「恋だとぉーーー?!誰だ!どんなヤツだ!!俺の前に出て来い!!」

あ、まずい。うるさくなってしまった。

は肩を竦めて「いやいや、もののたとえ」と宥める。

「まあ、そうだな。だが、子供にだってプライバシーってものがあるだろう。認めるべきだ」

そりゃ、認めるべきだとだって考えている。

それでも、やっぱり気になるのだ。

「聞いてみたのか?」

「一生懸命秘密にしようとしていることを?堂々と?聞けるわけないじゃない」

「こそこそ暴こうとする方が尚悪いと思うが?」

イザークの突っ込みにはグッと詰まる。これはイザークの正論に勝てそうにない。

「はーい。もうちょっと様子を見てみます」

「その方が良いだろう」

イザークはさもあらん、としたり顔で頷いた。

少し面白くないなー、と思ったがまああの子もいいたくなったら言うだろうとも納得してイザークの隣に座って体重を掛ける。

ちょっとやそっとではびくともしないイザークにさらに体重を掛けた。

「なんだ?」

「甘えたい年頃なんです」

そんなもん、とっくの昔に終わっているだろう...

そう思ったが口に出したらこれまた大変なことになりそうなのでイザークは「そうか」と返して本を閉じた。

そして隣に座っているをひょいと持ち上げて自分の膝の上に載せた。

「さて、どうしたらよろしいのでしょうか、わが姫」

は自分から甘えてくるくせにこうやって丁重に扱おうとすると途端に逃げ出す。

だが、今回は読書の邪魔をされたイザークとしてはそれを良しとしない。

逃げ出そうとするに覆いかぶさるようにしてキスをした。最初はジタバタしていたが、観念したのか暴れることをやめてやがてイザークのキスに応え始めた。


突然部屋をノックされては慌て、イザークは顔をしかめた。

「ごめん」と謝ったは返事をしながらドアに向かう。

残されたイザークは舌を少し出していた。

まあ、驚いても思い切り噛まれなかったんだ。良しとするべきなのだろう...

ドアの向こうに居たのは子供たちのようでおやすみなさいの挨拶をしにきたようだ。

イザークも立ち上がり、ドアに向かった。

「パパもおやすみなさい」

ノルンが頬にキスをする。

「ああ、おやすみ」

イザークもそれを返し、息子にも同じことをした。

ドアを閉めてはそこから遠ざかり「びっくりしたね」とイザークに言う。

イザークは盛大に溜息をついたが、誰も悪くないことなので誰も責められない。

「そうだな」

不機嫌に返すイザークに「ごめんって」とが謝る。

とりあえず、何と言うか。気がそれてしまったのでイザークは読書を再開し、は部屋を出て行った。

「くそ...」

何となく悔やまれる。そんな気分になってしまったイザークは読書を放棄し、そのままごろりとベッドに寝転んだ。

「しかし、さて。どうしたものか...」

ポツリと呟く。

サイドボードの上においてある写真立。

あとひと月半だ。









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桜風
11.5.9


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