A memorial day 8





「乗り物酔いってどんな感じ?」

ハンドルを握りながらディアッカが軽い口調で聞いてきた。

「胃の中身が激しいサンバ躍ってる」

それは辛いかもなぁ...

「って、あれ?今日はイザーク休みじゃないのか?」

議会中ではないから休みは結構定期的だったと思う。

「同僚で、今日が当番の人がどうしても外せない用事が出来たんだって。で、代わってあげたって言う...」

の言葉にディアッカは「オトナになったもんだよなー」と苦笑した。

も同じことを思った。

「ママ、大丈夫?」

「ははうえ。きぶんはどうですか?」

助手席にはノルンが乗った。後ろの方が楽だろうから、と彼女から申し出てくれたのだ。そして、ヴィンセントはの顔を覗きこんでは心配そうな表情を浮かべている。


ジュール邸に車が止まる。

先に連絡を入れていたので、家の者が慌てて出てきた。

車を家の者に任せてディアッカはを抱えて寝室に向かう。

「んじゃ、おだいじに」

「あ、車で行って。本部でしょ?」

に言われてディアッカは頷く。

「イザークが乗って帰れば良いから。ありがとう」

「りょーかい」と言ってディアッカは部屋を後にした。



部屋がノックされて返事をすると「よ!」と顔なじみが覗いてきた。

「ああ、ディアッカか。すまないな、話は聞いた。世話になった」

、相当落ち込んでたぜ?」

苦笑しながらディアッカが話す。彼女と会話をしたときはそれには触れなかったが、は相当参っていた。

体がキツイこともあるだろうが、MSに乗って体調を崩したなんてショックだっただろう。口には出さないが、彼女との付き合いも長いのでそういう空気は読める。

「あと、これな。イザークが乗って帰れって」

そう言って車のキーを渡す。

「ああ、わかった」

「んで。これ、見舞い。に渡して」

そう言ってディアッカが差し出したのはイザークでも耳にしたことがある有名な洋菓子店の箱だった。

「ここのプリンがめちゃくちゃ美味い!」

「ほう?ノルンが喜ぶな」

への見舞い品だけどな」

笑ってディアッカは念のために申し添えておいた。

コンコンとノックの音が聞こえた。

返事をすると入ってきたのはホーキンスだった。

「どうされましたか?」

「これを、に。乗り物酔いだろう?やっぱりスッキリするものが良いだろうと思ってな」

ホーキンスが掲げたのは果物かご一杯のレモンだった。

「はあ、お気遣いありがとうございます」

「副委員長閣下。今は勤務中ですよ」

人のことは言えないが、ディアッカが念を押す。

「うるさい!カインの目を盗んで買ってくるのがどんだけ大変だったか...」

「残念だったな。がいちばん好きな果物は、オレンジだ」

不意に加わった声に皆が驚いた。

「と、いうわけで。すまないが、そのレモンはともかく。これを預かってもらえるか?」

「え、あ。はい。確かに、お預かりします」

そう言ってイザークはカインからオレンジが山のように盛られている果物かごを受け取った。

「あらあら。でも、イチゴも好きだと伺いましたわ」

またなんか出た!?

皆が見ると少し離れたところで果物かご一杯のイチゴを持ったラクス・クラインが微笑んでいる。

「これも、お預かりいただけますね?」

「あ、はい。了解しました」

「でも、やっぱり寝込んでいるときは桃だと思うんだよね」

これまた果物かご一杯の桃を差し出されてイザークは辟易した。キラからは桃だ。

「果物屋、開けるんじゃないのか?」

イザークが抱えている果物かご4つを眺めてディアッカは苦笑した。



勤務時間が終わって、イザークが果物かご4つと、菓子箱1つを持ってザフトの廊下を歩いていると向かいから顔見知りがやってきた。シン・アスカだ。

「お疲れ様です」

敬礼をされれば、返さなくてはと荷物を床に置こうとしたら「いいですよ」と笑いながら止められた。

の噂、随分広がっていますよ。と、言っても『いち一般人の女性』でですけど」

「まあ、普通はMSに乗ろうとは思わんだろうからな」

呆れた様子でイザークが返す。

「それ、お見舞いですか?」

「まあな。持って帰らんと全員がうるさいからな。そういえば」

とイザークは話を変えてみた。

それから少し話をしてシンが「まずい」と時計を見て言う。

「おい、今の話はには漏らすなよ?」

イザークが釘を刺す。

「もちろんですよ!イザークさんも!!じゃ、失礼します!!」

そう言ってシンは駆けて行った。

「言うわけないだろう...」

クツクツと笑いながらイザークは帰宅するため、駐車場へと向かった。









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桜風
11.6.27


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