| 家に帰ると娘と息子が揃って 「ママが死んじゃうー!」「ははうえがしんでしまいます!」 と口々に訴えてきた。 一食抜いたくらいでは死なないが、子供たちがそれだけ心配していることは分かる。 「ところで、パパ。果物屋さん開くの?」 持って帰ったあれこれを見てノルンがきょとんと聞いた。 「いいや。これは全部見舞いの品だ。は寝室だな?」 「あ、手洗いうがいして!」 いつもが言う言葉だ。イザークは思わず噴出して「了解しました」と答えてまずは洗面所へと向かった。 「具合はどうだ?」 「だいぶ落ち着いた。けど、普通の食事はとる気にならなかったから夕飯はパスしただけ」 ごろりと寝返りを打ってが答える。「おかえり」と言うに「ただいま」と言ってイザークは彼女の額にキスをした。 「早速で悪いが、どれが良い?少しくらい何か口にしろ」 そう言ってイザークはの枕元に果物をひとつひとつ並べた。そして、プリンも。 「オレンジが良い。って、どうしたの、これ。あ。これはディアッカでしょ?」 プリンはディアッカからだとが言い当て、イザークは少し驚く。 「何故?」 「この間、ミリィがこっちに来たのよ。スイーツの美味しい良い店知らない?って聞かれて。行ったことないけど、ここのプリン美味しいって評判だって教えてあげたの。フレイが言ってたから間違いないと思って。美味しかったら今度買ってねーって話してたから」 なるほど、とイザークは納得した。 「プリンはどうする?」 「明日の朝」 が答えると「了解」と返してイザークは一旦部屋を出た。 食べやすく切ったオレンジを持ってイザークが戻ってきた。体を起こすのを手伝ってくれる。 「お父様、でしょ?」 一瞬何の話か分からず、このオレンジを選んだ人物の話だと察して頷いた。「良く分かったな」と。 「まあねー。勤務時間中だったんじゃないの?」 「皆そうだよ。お陰で本部傍の果物屋は儲かったな」 金に糸目をつけそうにない4人だ。その中で最高級のそれを選んだに違いない。 ひとつが食べた。 「ねえ、イザーク」 オレンジを口に含んだ瞬間、幸せそうな表情を浮かべたのに今は少し悲しそうに俯いている。 「何だ?」 「デュエルって、あんなに重かったんだ?」 「...今日、が乗ったのは複座型だろう?そう報告されたと聞いたが?まあ、だからもう少し軽かっただろうな、たぶん」 「でも、アサルトシュラウド」 「それは確かに..うん。その分、重かっただろうが。どうした?」 「びっくりした。わたし、今までZGMF-X00Aに乗ってたでしょ?」 機体の識別番号を言われて一瞬戸惑ったイザークだったが、の機体の番号だと思い出して頷く。 「あれは、それでなくとも軽かっただろうが。パイロットの意向でスピード重視にしたからな」 そうなのだ。うん、自分の機体が他と違っていただけなのだ。 「衝撃的だったわ...スラスター全開であれくらいしかスピードが出ないんだもん」 呆然と言うに 「でも、今回はそれで良かったんだろう。アレ以上のスピードが出たら体にかかる負荷が大きすぎる。たぶん、ヘルメットを被っていなかったのも今回酔った原因でもあるだろうしな」 イザークに指摘されては「そっか」と呟く。 パイロットスーツとヘルメット。それを身に着けていたらこの程度で気分が悪くなったりしなかっただろう。 途端にはすっきりした表情を浮かべる。 「だが、もうこれっきりにしろ。心配するだろう...」 「でも、わたしがMSに乗っていたあのときを知ってるでしょ?」 「子供たちは知らない」 キッパリとイザークに言われては口を噤む。 「子供たちに、その身で戦争を体験させたいなんて思ってないんだろう?」 「あたりまえじゃない!」 思わずムキになって答えては慌てた。「ごめん」と小さく謝る。 「いや」と返して、イザークは苦笑した。 「ところで、」そう言ってイザークは話を変える。 「いいよ?4人で??」 「いや、2人だ。俺との2人で出かけないか?」 は首を傾げる。 「でも、ノルンはお出かけが好きだからねー」 「たまには許してくれるだろう。俺とが2人で出かけることくらい」 「そうかな?」が首を傾げていると部屋をノックする音がした。 返事をしてイザークがドアを開けるとドアの前には寝る準備の整った子供たちが立っていた。 「おやすみなさい、パパ」そう言ってノルンがキスをする。 「中に入って良いぞ」 イザークに言われてノルンとヴィンセントは「失礼します」と言って部屋に入り、の元へと足を運んだ。 「ママ、大丈夫?」 「うん、かなり。心配してくれてありがとう」 そう言っておやすみの挨拶をする。 「ははうえ」とヴィンセントが背伸びをした。 は体を屈めてキスをする。 「おやすみなさい」 「そうだ、2人とも。さっき、と話していたんだが...来週末、と2人で出かけても良いか?」 反対するぞー...そう思いながらが見守っていると意外なことに「いいよ!」と元気な声が返ってきた。 「え?わたしとイザークで出かけるのよ?ノルン、ヴィンセントと一緒にお留守番って言う話よ?」 一応、が解説すると「うん!」とノルンが頷く。ヴィンセントもコクコクと頷いていた。 「あのね、その日。ルナお姉ちゃんたちとお菓子を作る約束してたの」 ノルンが目を輝かせて言う。 随分先の話を約束したんだなぁ... は首を傾げた。 「じゃあ、その日は大人しく留守番頼めるな?」 イザークが言うと「まっかせといて!」と胸を叩いてノルンが頷いた。 は寂しそうに「ホントに良いの?」と確認していたが、彼女の意思は固く、一緒に行くとは言ってくれなかった。 |
桜風
11.7.4
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