A memorial day 12





「ママたち喜んでくれるかな...」

ノルンが紅茶を飲み終わってからポツリと呟いた。

「そりゃ、ノルンたちがここまで用意周到に準備してるんだから。オレたちも細心の注意を払って、イザークたちに知られないように言動に気をつけて...」

ディアッカが言うと「え!?」と声を上げた者がいた。

皆の視線がそこに一点集中だ。

殆どが非難するもので、彼はたじろいだ。

「一応、確認しても良いかしら?」

怒りを押し込めた声でルナマリアが一歩前に出る。

その分、彼は一歩下がった。

「まさか、と思うけど。どちらかに言ったの?」

彼は答えない。

「どうなんだ、シン」

レイが静かに聞くと彼は口を開いた。

曰く、知ってると思ったんだ。

「言ったじゃない!ノルンが物凄く周到に準備して、両親を驚かせようと企画したことだって!!」

ルナマリアが声を上げる。

「だ、だって...!この間、イザークさんと本部で会ったとき、イザークさんから話を振ってきたんだ!『ノルンが、まあ、面白いことを考えたよな』って!!だったら、知ってるって思うじゃないか!!」

ディアッカはシンに同情の眼差しを送った。

「まあ、イザークは曲がりなりにも評議会の議員を務めたことがあるし?権謀術数渦まくあの戦後の大混乱の中での最年少評議員だ。あれで結構話術とか得意になったって」

苦笑しながら言うディアッカにシンは感動した。庇ってくれる良い先輩だ。

「ま、ノルン。ここは作戦変更だ。内容自体はあまり詳しくは言っていないんだろ?」

「知ってると思ったから」

ディアッカは泣きそうな表情を浮かべているノルンの頭を撫でながらシンに確認し、彼は頷いた。

「まあ、はどうしたって予備知識なしで帰宅するだろうし。何より、イザークは今日のこの企画をに言うわけないしな。だから、逆にイザークの協力があるのは有難いと思わなくちゃ。きっと、今日を外に連れ出したのだって、この企画のことを知っていたからだよ。帰る時間もそれなりに調整してくれるはずだ」

「...ホントに?」

「ああ、ホントだ」

「ディアッカさん、その根拠は?に、ホントに言わないでしょうか」とルナマリアが聞くと「4年前」と短く返す。

それで何かを皆が悟った。

ノルンとヴィンセントはもちろん分からないことなので首を傾げる。

「これは絶好のチャンスだぞ?」

苦笑してディアッカが言い、「かもね」とラスティは同意した。

前の戦争で、ノルンは議長に人質に取られていた。それを知らされることなく、イザークはずっと議長の掌の上で踊らされていた。はそれを最後の最後までイザークに言わず、ずっとひとりで戦っていた。物凄く悔しい思いをしたのはイザークで、密かにその報復の機会を探っていたに違いない。

「パパ、ママのこと嫌いなの?」

伺うようにノルンがディアッカを見上げる。

「いーや。全然。きっと大好きだぞ?」

「じゃあ、何で?」

「まあ、そうだなー...たまには悪戯がしたくなる男心ってヤツだ」

ディアッカの言葉にノルンはしたり顔で「男の人っていつまでも子供って言うもんね」と言い、その場に居た全員が噴出した。

「でも、そっか。4年前か...」

ポツリと誰かが呟いた。

長かったようで、意外とまだあれから時間が経っていない。

「でも、たった4年でも維持するのは大変だったはずよ」

エザリアが言う。最高評議会の内情をよく知っている彼女の口から出た言葉に、皆はラクスを見た。

「それでも、皆さんで作りたいと思っている未来ですから」

微笑んだラクスに「そうだね」とキラが頷き、「もちろんだ」とカガリが言う。

「僕も、できることはやっていくつもりです。に助けてもらった命だから」

ニコルが言う。

ノルンがきょとんとした。

「僕も昔はザフトでMSのパイロットをしていたんですよ」

「オレも」とラスティが言う。

「オレも、に助けてもらったんだ。他にもたくさんの奴らが、に助けてもらった。...アスランだって、そうだよな?」

振り返ってラスティが話を振る。

「あれは、助けてもらったって言うのか?」とアスランは苦笑した。死に掛けたのだ、彼女のお陰で。

でも、運任せでも逃げる道を作ってくれたのは確かに彼女だったな...

そうして彼らは懐かしそうに昔の話を始める。

コホン、と咳払いが聞こえた。

「一応、念のために言っておこうと思うのだけれども...イザークもも子供たちにがザフトに居たときの話はしていないはずよ」

エザリアに言われて話が盛り上がっていた彼らはぴたりと口を閉ざした。

振り返ってノルンとヴィンセントを見る。

「ママがザフトに居て、パイロットだったのは知ってる。英雄って呼ばれていたのも。だから、今はザフトに居ないんだってひいおじいちゃんの家で聞いたことあるし」

「ぼくも、きいたことあります。だから、みんなぼくもザフトに入るんだろうって言ってるみたいです」

ヴィンセントの言葉にノルンは目を丸くした。

「入るの?」

「かんがえ中です。ぼく、ちちうえのこともははうえのこともとても好きだけど、同じじゃないといけないことはないとおもうから」

「...い、意外としっかりしてるな」

ディアッカが呟く。

「だねー。やっぱ、そういう慎重さは必要だよ。パイロットになりたいなら特に。イザークってばそういうのが苦手でよくに『おバカさん』って言われてたから」

苦笑してラスティが言う。

「ママが?パパに?!」

ノルンが食いついた。

「ん?うん。よく言われてたよ」

ラスティが返すとノルンは駆けて部屋を出た。

「オレ、まずかった?」

「や、よくわかんね」

ディアッカが首を傾げてそう返すと同時に『パパはおバカじゃないよ!』というノルンの声が廊下からした。

ディアッカとラスティは顔を見合わせて同時に噴出す。

いやいや、素直な子だなぁ...









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桜風
11.7.25


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