A memorial day 16





「おー、やってるなー」と入ってきたのはホーキンスで、カインも一緒だ。パーティが始まって時間が経っての登場だ。

その間にも、ニコルのピアノ演奏にミーアの歌声。そして、ラクスの歌声も披露された。

ラクスの歌を聴くのはノルンたちは初めてで、彼女が歌い終わるとしきりに手を叩いて感動していた。

ミーアとラクスのデュエットなんてもうこの先も見られそうにないことだ。


「おじいちゃん!」とノルンは駆け寄った。

「すまんな、遅くなった。の驚く顔を見損なった」

苦笑しながらカインが言う。

「ママ、凄く驚いたよ。特に、クラッカーに」

ああ、クラッカーか。

自分もその反応しそうだなーと思いながらうんうんとノルンの話を聞いている。

「クラッカー以上に驚いたことはありますけどね。お久しぶりです、お父様」

に声をかけられてカインは「ああ、久しぶりだな」と顔を上げた。が振り返った先の人物を見て、確かにビックリするなぁと納得した。

「けど、お2人が揃っていらっしゃるとは思いませんでした」

がそう声をかけて持ってきたドリンクを渡そうとして手を止めた。

「アルコールは?」

「今日はオレは解禁だ。ホーキンスが飲まないという話になっている」

「...ホーキンス隊長なら」と言ってが振り返った。その視線を辿ったカインはフルフルと震え始める。

はとっさにノルンの耳を塞いだ。

「ホーキンスーーーーーー!!」

国防委員長閣下の怒声にザフトに所属している全員が『気をつけ』となった。

「おー、どうしたー。おこんなって。何せ、今日はのめでたい日なんだしよー」

「お前、言ったよな。飲まないから連れてけ、と。もう一度言うぞ?『飲まない』ってお前は言ったんだ」

「...あれ?カイン。お前って相変わらず素直だなぁ。オレがこういう席で飲まないなんてありえると思ったのか?」

こめかみに血管が浮いている。

「お父様。ノルンたちが怯えるので怒鳴るならホーキンス隊長を連れて外でお願いします」

が冷静に突っ込んだ。

父は『ノルン』が出ると多少大人しくなってくれる。実はこれは、ホーキンスの入れ知恵でもあるのだが...

カインはグッと言葉を呑んで何度か深呼吸をした。

「イザーク君。確かこの邸の敷地内に射撃場、あったね?」

のリクエストで昔に造った。

「あ、はい。こちらです」

イザークは慌ててカインを部屋から連れ出した。

カインが邸から完全に出て行き、声が届かない場所まで移動したと思われるタイミングでは溜息を吐いた。

「ホーキンス隊長。お父様を怒らせないでください。みんなビックリしているじゃないですか」

半眼になって抗議する。

「や、だって。ジュール家のワインだぜ?のまいでか!」

主張するホーキンスには溜息を吐く。もちろん、室内にいる彼の子供達も深く溜息を吐いた。

「ノルン、ここお願いできるかしら?」

突然そう言われてきょとんとした。

「お客様に不自由のないように気を配ってくれる?」

「うん!任せておいて!!」

ノルンが元気良く頷いた。


銃声が響いている。

「お父様」

娘の声が耳に届いてヘッドホンを外した。

イザークはカインの傍に待機していた。何となく、席を外せなかったのだ。

「ああ、どうした?エザリア殿まで。、こんな硝煙くさいところに連れてきて良い方ではないだろう」

父に窘められては首を竦めて「ごめんなさい」と謝る。

エザリアも何故ここに連れてこられたか分からないといった表情だった。

「ところで、お父様。落ち着かれましたか?」

「まあ、多少は。アイツは今度休日出勤を命じてそれで...」

地味な報復を思いついたようだ。

「それは良かった。ところで、子供が出来ました」

「そうか。それ..ん?今何と言った?」

の隣に立っているエザリアも目を丸くしている。

「3人目の孫の顔が見られそうですよ」

「...うん」

イマイチ理解できないといった表情でカインは頷く。

「えーと、えーと」

があまりにもさらりと報告するものだから、エザリアも自分が理解した状況で良いのだろうかと悩み始めた。

」とイザークが窘め、「先日病院に行ったそうです。それで、分かったみたいです。俺も、さっき聞いたばかりです」と状況を説明する。

エザリアとカインは目をぱちくりとした。

お互い、顔を見合わせる。

そして、同時にきちんと理解した。

「おめでとう!」とエザリアはを抱きしめる。

カインは先ほどまでの鬼の形相はどこかに行ったようで、うんうんと頷いていた。

「父上にも報告しないとな」とカインが言う。

「明日、わたしが行こうと思います」

「聞いてないぞ」とイザークが言い、「今思いついたの」とが返した。

「どうせ、ノルンのことだからお祖父様にも招待状を出していたんじゃないかな?気にされているといけないから」

「ああ、そのとおりだ。招待状が届いたが行けないからと呼び出されてな。今日はそれで少し遅れた。預かってきたものがあるから戻ったら渡そう。手紙もあったぞ、たしか。ノルンにも」

「では、戻りましょう。ノルンもきっと頑張ってくれているとは思いますけど、行き届かないところは多いでしょうから」

エザリアがそう提案し、カインも異議はなかったようで射撃場を後にした。

「大丈夫?」

憔悴した表情を浮かべているイザークにが声をかける。コクリと頷いたイザークは「ちょっと怖かった」と心の中で呟いた。









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桜風
11.8.22


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