Dear my friends 1





4月ののどかな日。

中等部から高等部に上がった南悠里が受け持つクラスXに転校生がやって来た。

職員室でその存在を突然知らされた悠里は固まった。

「えーと、」と困惑気味に悠里は言葉に詰まる。

始業式は昨日で、今日転校してくるというのは些か半端だと思う。

というか、どう考えても半端だと思う。

「初めまして、です」

彼女は落ち着いてそう一言言って頭を下げた。

「き、衣笠先生!!」

ニコニコと悠里の隣に立っている先輩教師に助けを求めるように彼女は名前を呼んだ。

「ああ、さんは5日前に編入試験を受けて3日前に試験の合格を知らされて、制服が結局出来上がらなくて今はまだ私服なんですよ」

いやいや、聞きたいのはそこではない。

そこも確かに聞きたいことでもあったが...

「本当なら、編入試験の結果から言うとクラスAだったんですけど。あのクラスは定員に達していますからね。空いているのは、悠里先生のクラスしかなかったので今日から彼女は悠里先生の生徒ですよ」

ニコリと微笑んだ。

「え..あの」

「では、お願いしますね」

無敵の笑顔を向けられて悠里は何も言い返せない。

「じ、じゃあ。さん。教室に行きましょう」

「よろしくお願いします」

そう言って、は悠里の後について歩く。

職員室を出る前に一度振り返って衣笠に頭を下げた。

彼もそれを受けて頷く。


「衣笠先生。別にあの成績ならクラスAの定員とか関係なんじゃないですか?」

彼らの遣り取りを見ていた鳳が言う。

「ええ、まあ。そうですね。でも、彼女の保護者に頼まれたんですよね。あのクラスにって」

ニコッと微笑む衣笠に「はぁ...」と曖昧に返す鳳はどう反応していいかわからないという表情を浮かべている。

多くの保護者はきっとクラスAのような優秀な生徒が集まるクラスに入れたがるものではないかと思う。

「衣笠先生」

別の教師が声をかけてくる。

「何ですか、二階堂先生?」

「あの、さっきの女子生徒。彼女は、といいましたか?」

「ええ、そうですよ」

「ご両親は、大学で教鞭を執っていませんか?」

「ああ、そういえば。二階堂先生は確か、以前彼女のお父さんが勤めていた大学の出身でしたね」

「やはり!」

何だか嬉しそうに二階堂が表情を輝かせる。

「先輩、どうしたんですか?」

教授だよ、真田先生。落研のサークル顧問ですよ」

「たぶん、俺が入ったときにはいらっしゃらなかったんじゃ...」

真田がそういうと「ああ、そうだったかも知れないな」と二階堂も呟く。

「ちなみに、彼女のお母さんからは手品を習いました」

「えーと、確か。彼女のお母さんは獣医師だったような...」

衣笠が言うと

「ええ、そうみたいですね。獣医学の権威だとか。手品は趣味だそうですよ、かなり本格的な」

と二階堂がさらりと返す。

「...彼女のご両親って何者ですか?」

鳳が呆れたようにそういうと

「取り敢えず、今はヒミツです」

人差し指を口に当てて彼は微笑んだ。

その場にいる者は誰も深く聞こうとはしなかった。

聞いたって、どうしても教えてもらえないのは知っているから。










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桜風
08.6.20


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