Dear my friends 2





「えーと、さん」

「先生、こっちです」

悠里は後ろからそう言われた。

「え?」

「そっちは保健室です、先生。教室に、行くんですよね?」

に指摘されて回れ右をした悠里は「ははは」と照れ笑いを浮かべた。

「凄いわね、私って高等部に上がってきたばかりでね。未だに道を覚えられなくて」

「無駄に広いですからね、この学園は。お金が掛かってるなって思いますよ」

苦笑しながらが応える。

初対面、職員室では何だかとっつきにくい子だと思っていた。

何より、衣笠の話では今回の編入試験の結果はクラスAに入れるくらいのものらしい。少し構えてしまっていた。

「ところで、さっき含みのある言い方だったと思うんですけど。E組に何か問題でもあるんですか?」

「え!?あ..ああ...」

最初は何のことか分からなかったが、先ほど職員室での衣笠の発言の事だと気づいた。

「あー..えーと。E組は通称クラスXって呼ばれてて。成績が少し..良くない生徒が集まっているの。その中で、えーと...特によろしくない生徒の事はB6って言って、いろんな意味でこの学園で有名な男の子たちがいるのよ」

「...“B”って“バカ”の頭文字ですか?」

「は、はっきり言うわね」

「なるほど...」

は肩を竦めて苦笑した。


やがて教室の前にたどり着いた。

「えーと。ちょっと最初は眩しく思うかもしれないけど。いつか慣れると思うから。私は、まだ慣れないけど...」

苦笑しながら悠里はそう言って教室のドアを開けた。

それに続いてが教室に入ると教室の中がざわりとする。

全くそれを気にしないは背筋を伸ばして教卓の隣に立つ。

「えーと、突然ですが。転校生の紹介します。さん」

促されては一層背筋を伸ばした。

で..」

突然目の前に大きな物体が迫ってきたかと思うと今度は背後に衝撃を受ける。

取り敢えず...

「イタイ、イタイよ瑞希。わたし、今の瞬間であっちこっちが痛くなった。ねえ、取り敢えず重いから。ね、重いから...」

いつも寝てばかりいると評判のB6のひとり、斑目瑞希が転校してきた少女に勢いよく抱きついたのだ。

席も後ろだというのに、そのスピードは普段の彼からは想像できないくらいの俊敏さで、暫く教室内がシーンと静まっていた。

「ま、斑目君?」

、久しぶり。会えて嬉しい」

「うん、わたしも嬉しいから。取り敢えず重い...」

「トゲー!」

瑞希がいつも連れ居ている白いトカゲのトゲーが声を上げる。

「あ、トゲー。久しぶり。ちゃんと新鮮なご飯もらえてる?瑞希、ちゃんと甲斐性ある?」

目の前に現れた白トカゲに驚く様子を見せないで彼女はそう言った。

「大丈夫。毎日虫、あげてる。ね、トゲー」

「トゲー!!」

「ん。じゃあ、重いからどいて」

やっと今の状況を飲み込んだクラスのひとりが教壇に向かう。

「おい、瑞希。女の子を突然押し倒すのはどうかと思うぜ?しかも、転校初日だろう?」

そう言ってきたのは、B6のお母さん..ではなく、取り敢えずお兄さんポジションと目されている草薙一だ。

彼の顔を見て「あ」とが声を上げる。

「ん?...あ!!?じゃないか!!」

「やっぱりハジメちゃんだ!!」

意外な面識に瑞希の腕の力が緩み、そのまま一がをひょいと持ち上げる。

「うわ、どうした。久しぶりだな!星太は元気か?」

「帰国子女に憧れて海の向こうへ行っちゃったけどね。たぶん、元気」

「つか、。背ぇ伸びたな」

一の指摘には気を良くする。

「ふふん、2年間で20センチ。男の子が体験するという成長痛、体験しました!」

「てか、その2年間で成長は止まったんだな...」

まじまじと改めてを見れば、身長は160センチくらいだということは分かる。

彼女は近所に住んでいたのだが、引っ越していった。そのときの身長はたしか140センチくらいだったと思う。

「嫌なツッコミしないの!...取り敢えず下ろそう」

持ち上げられたままのは冷静にそう指摘した。

下から不思議そうに見上げる瑞希に気づいた一も「そうかも」と言ってを下ろす。

「えーと、先生。もう自己紹介とかそんなの出来る雰囲気ではないので、席についてもいいですか?」

「僕の隣、空いてる...」

瑞希がそう言ってを促すが

「いやいや、お前の隣空いてねぇだろ。今日、欠席もしてねぇし。ほら、居るだろう!?」

一が止める。

「居ない、居ない」

「いや、居るって。お前、隣の席の奴に失礼だぞ!!」

「見えない」

「見ろよ!」

「...斑目瑞希の隣の席の人、挙手してください」

が言うとおずおずと独り手を上げた人物が居た。

「居るじゃん」

瑞希を見るとチッと小さく舌打ちをした。

「たしか、悟郎の席の隣が空いてるだろう」

そう言って一が顔を向けると

「うん、ゴロちゃんの席の隣は正真正銘空いてるよ!」

「そうね。風門寺君の隣に」

「...風門寺くん?ゴロちゃん??」

首を傾げながらはそのまま元気に返事をした女子生徒の格好をした風門寺悟郎の隣の席に向かった。

「初めまして、風門寺悟郎です。ゴロちゃんって呼んでね」

「...分かったわ。よろしくね、ゴロちゃん」

ど、動じねぇ...!!

クラス全員が同じ事を思って改めて感心した。










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桜風
08.6.20


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