Dear my friends 6





その日の授業が終わると教室に担任の悠里がHRのためにやってくる。

教室に居た悟郎と瑞希に声をかけてきた。

どうやら、彼女は彼らに補習をしなくてはならないらしい。

だが、2人とも面倒くさいと言って逃げる。

慌てて悠里は彼らを追いかけるが、1人が2人を追いかけるのには無理がある。

ターゲットを絞って追いかけたほうが効率が良いに決まっている。

悠里の行動をボーっと眺めていたはそのまま借りた教科書を一の机の中にしまった。

職員室に向かっていると後ろから声を掛けられて振り返ると悠里が追いかけてきていた。

「大変ですね。先生1人で6人を見るんですか?」

が問うと

「あー、そうなのよね。でも、みんなきっと良い子だし。大丈夫よ!!」

何処から来ている自信かわからないが、そう言いきった悠里には微笑ましいとも思った。

瑞希は、本人がその気になれば悠里の手を煩わせることはないだろう。

まあ、その気にさせるのにもの凄く時間と労力と気力が必要だろうが。

一は、小学校のときから体育の成績以外は「1と2」の行進状態だった。

今でもそれは変わらないのかもしれない。

他のメンバーはよく分からないが、たぶん翼は普通にバカだ。


「ところで、さんは衣笠先生とは昔からの知り合いだったみたいね」

「ご本人にお会いしたのは5日前ですけど」

その言葉に「え?」と思わず声を漏らした。

昼時間に聞いた話では姪だったことがあるとか言っていたのに。

「まあ、複雑な家庭なもので」

が言うが、それはそれ以上の詮索を拒絶するような声音だった。

悠里はそれ以上何も言えずに口を閉ざした。

職員室に着いて「失礼します」とが入るが衣笠の姿が見えない。

「衣笠先生は、どこに...」

「校内の見回りに出ましたよ」

というのは二階堂だ。

「これを、預かっています」

そう言って茶色の封筒を渡された。

中を見ると昼に頼んだ書類だ。

「ありがとうございます」

先生は、お元気ですか?」

そう聞かれては二階堂を見上げた。

「たぶん、元気ですよ」

「その、お母様の方は?」

「元気でしょうね。動物といえば北海道!って今年はそちらに赴任しましたから。ヒグマとハグをするのが今回の目標だそうです。野生の」

温度のない声ではそう返した。

「えーと、君は覚えていないかもしれないけど」

「覚えていなすよ。父の生徒さんで唯一うちに来た人ですよね?落語を披露してくださったけど、もの凄く面白くないと母に酷評されて挙句手品を教え込まれた」

の言葉に二階堂は絶句した。

その通りだ。

「あ、そうなんですね。覚えていたんですね」

「お話は以上ですか?」

「え。ああ、そうですね」

二階堂の言葉を聞いて「では、失礼します。衣笠先生にありがとうございましたとお伝えいただけますか?」と言って職員室を出て行った。

慇懃な態度を取っているがその纏っている雰囲気は拒絶を示すもの以外の何物でもない。

息を詰めて見送っていたようで、彼女が視界から居なくなったその瞬間に深く息を吐いた。


「瑞希、帰っちゃったかな?」

そう思って校内を歩いていたら見たことのある人物を目にした。

「あ、ゆぅ..」

名前を口にしようとしたところで背後から口を押さえられてそれがかなわない。

そのまま見上げると一だった。

彼の姿が見えなくなると、の口を塞いでいた手が緩む。

「勇次には声、掛けない方がいいぜ。はクラスXなんだからきっとヤな思いをする」

が不思議そうに一を見上げる。

その先には何かを耐えるような表情をした一が居た。

「ねえ、ハジメちゃん。部活は?」

「辞めた」

不機嫌に短く返されては「そう」と返した。

「ねえ、瑞希見なかった?」

「バカサイユに居るんじゃないか?居なかったら、帰ってるだろう」

「ありがとう」

「おー。じゃあ、また明日な」

そう言って一はから遠ざかっていった。

「そっか、辞めちゃったんだ...」

一の背を見送りながらは小さく呟いた。










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桜風
08.6.29


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