Dear my friends 10





本当なら体育祭はサボろうと思っていたが、何となくあの岡崎の言葉にムカついて出ることにした。

そんなに激しい運動をしなければ大丈夫だろう。

結局、は玉入れ競争に出場することにした。



体育祭当日、見事な梅雨の晴れ間が広がった。

噂によると悠里は職員室に大量に照る照る坊主をつるしたらしい。

「照る照る坊主って単語、何年ぶりに聞いたかな?」

笑いながら歩いていると「おい、ヘチャ」と声をかけられた。

は何故か清春から“ヘチャ”と呼ばれている。

「おはよう、仙道くん」

「お前、またオレ様のトラップ全部回避したらしいな」

は編入して以来、清春のトラップに掛かったことはない。

対して、今年高等部の教師になったばかりの悠里は清春のトラップに高確率で掛かっている。

清春が悠里の事を気に入っている理由のひとつがそれで、が清春に気にかけられている理由もそれだった。

どうやら彼のプライドを傷つけながら校内を歩いているらしい。

「仙道くん、運動神経抜群だもんね。もの凄く楽しみだなー」

清春の言葉に応えずはそう言った。

「あァ?!ま、オレ様は天才だからな!どんなにクラスの奴が鈍くても、オレ様ひとりいれば余裕だぜ」

胸を張ってそういう。

清春の運動神経のよさは偶然見ることが出来たストリートバスケの試合で実証されている。


の出た玉入れ競技は午前のうちに終わる。

適当に球を放って籠に投げる。

それだけで出場したことになるからこの競技は楽だと思う。

競技が終わって校内を歩いていると何やら騒がしい声が聞こえてきた。

一の声だ。

が足を向けると、岡崎にナイフを向けている一の姿があった。

担任の悠里は一を掴んで止めている。

「ハジメちゃん、そんなもの振り回すのはどうかと思うよ」

がなんでもないことのように言ってきた。

!?」

「こういう道具に頼るほど、弱いって知らないの?」

「うるさい!!」

今まで向けられたことのない表情で怒鳴られる。

「取り敢えず、チャチな挑発に乗るものやめた方がいいよ」

そう言っては岡崎を振り返った。

「その通りだ、一」

新しい声が加わった。真壁翼だ。

彼の話によると屋上でサボろうとした瑞希が生徒会の役員が沢山いたため、それがかなわなかったと話したという。

「生徒会?」

「岡崎は、生徒会長だ」

翼が丁寧にに教える。

「ああ、そうなんだ?」

そう言っては岡崎を見た。尊敬の眼差しで見られると思ったのか、岡崎は胸を張った。

「クソッ、やってられるか!」

一はそう言ってその場を去っていった。

「一君!」と言いながら悠里が彼を追った。


ちゃん。この間職員室で言い損なったんだけど。生徒会に入らないか?君の成績から考えてクラスXってのは勿体無さ過ぎる。編入時に手続きが誤ったんだろう?でも、生徒会に入ったら周囲の君を見る目が変わるはずだ。カンニングしただなんて思われないぞ」

は深く溜息を吐いた。

「生徒会に入ってのメリットって何?それだけ??」

「受験時に、推薦がもらえる」

「くだらない。それだけ?勉強すれば済むだけの話でしょう?推薦を貰おうなんて理由で生徒会に入るってのは、自分の実力がないってのをよーく理解している人の考えかしら?それに、それが目的で生徒会って...ウチの生徒会メンバーが生徒会に入った理由って自分の進路なんだ?何処の政治家よ」

の言葉に岡崎はフルフルと震え始める。

それに気づいたがは続けた。

「勇ちゃん。とうとうバカなこと、しちゃったんだ...」

冷めた瞳を向けて言ったの言葉に岡崎が激昂した。

「何だと!?バカなこととは何だ!!お前は知らないからそう言うんだろう。草薙は、部活の練習中に後輩に対して傷害事件を起こしたんだ。やはりクラスX..いや、B6には碌なのがいないな」

怒鳴れらても動じずは左手の人差し指を立てた。

「ひとつ忠告。人の足を引っ張る行為をした人は、その時点で相手の足元に這い蹲っているってことになるんだよ。そして、自分の足元に底のない穴を掘っているようなものよ。近い言葉で、人を呪わば穴ふたつ」

「し..証拠は!?証拠は何だ!!俺が草薙に何かをしたって言う証拠は何だ!!」

に向かって声を張る。

「9年間、幼馴染をしていたわたしの経験上の結論。ハジメちゃんは、自分より弱い人を傷つけない。生粋のお兄ちゃんだもん」

「そんなの、子供のときの話だろう。変わったんだよ、あいつは。あんなカスになったんだ」

「...可哀想な人ね」

哀れみの視線を向けては岡崎を置いてその場を去った。


「おい、お前」

は振り返る。

翼だ。

「真壁くん」

「Family nameで呼ぶなと前に言わなかったか?」

不機嫌にそう言った。

「言ったかもね。で、何?」

「知っていたのか、一の..サッカー部の事件」

感心したように言ったが

「ううん、さっき初耳。ハジメちゃんが部活を辞めたのは聞いたけど...」

がさらりと返した。

「では、何故お前はさっき岡崎にああ言ったんだ?」

眉間に皺を寄せてそういう。

「3年間。ハジメちゃんと勇ちゃんのコンビを見た。わたしは第三者だったから、勇ちゃんがどんな目でハジメちゃんを見ていたかを目にしていたのよね。憧憬と羨望に嫉妬。それが混ざっていた。で、勇ちゃんの性格を考えたら、ね?」

の言葉に満足そうな笑みを浮かべて「そうか」と翼は言った。

「ところで、一が出るはずだった種目は覚えているか?」

「騎馬戦と...」

指折り数えながらは言う。

「じゃあ、それは俺が全部出てやる。担任が一を連れ戻せるとは思えんからな」

「同感。あんなハジメちゃん、わたしも初めて見るもん」

寂しそうに微笑んではそう呟いた。










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桜風
08.7.1


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