| 先日、一から『ハワイ行かね?』とメールを貰って、本日がハワイに行く日に決まった。 何でも。 翼は海外にバカンスに行きたい。 けど、悠里が『補習があるからそれはダメだ、そんなに行きたきゃハワイをもってこい』と言ったらしい。 そして、翼は本当にハワイを持ってきた。 真壁財閥、恐るべし。 場所が分からないと話したら一が駅から一緒に行ってやると言ってきた。 なので、一と共にそのハワイ施設へと向かった。 「真壁くん、本当に凄い..アホだね」 「いやいや。此処は礼を言うべきところだろう?というか、翼の事を苗字で呼ぶのやめてやれよ。嫌がってるのは知ってるんだろう?」 呆れながら一が言う。 いつもは翼を“真壁”で呼ぶ。 自身も彼がそれを嫌っているのは知っているが、 「だって、真壁君はわたしのことを名前ですら呼ばないもん。わたしは“お前”じゃない」 という理由で呼ばないことに決めた。 「だと思った...けど、翼が先に折れるとは思えないんだけどなー」 苦笑しながら一が言うが、は取り合う気がないらしい。反応しない。 しかし、と一はをチラリと見た。 はよくよく考えてみたら、翼の思うとおりならない人物のひとりだ。勿論、清春にとっても思うとおりにならない人物だ。 悠里とは対極にある存在であるために、翼や清春にとっては何だかんだでも気になる相手になってしまっているようだ。 「なに?」 視線を感じては一を見上げた。 「んにゃ。って、何かすげー人間のような気がしてきた」 は数秒悩んで「でしょ?」と返してみた。 「ちゃん、はっけーん!」 その声が聞こえて振り返るが、ふっと景色が変わった。 一が腕を引いて悟郎の突進を避けさせてくれたようだ。 「何だよ、ハジメ!ゴロちゃん、ちゃんにハグしようとしたのに何で邪魔するのさ!!」 掴みかからん勢いで一に迫る悟郎に一は溜息を吐き 「お前なぁ...いつも先生に抱きついては先生に尻餅つかせてるだろうが。いい加減、手加減を覚えろよなー」 と呆れたように言う。 一の言葉を聞いて悟郎は膨れる。 「まあ、とにかく。急がないかい?とにかく暑い...」 炎天下の中の立ち話。は帽子を被ってはいるが、それでも暑いものは暑い。 と同じく暑いとは思っていた2人はあっさり納得して真壁財閥が建設したハワイ施設へと足を進めた。 「何だ、これ...」 はドーム型の大きな建物を見上げて呟いた。 「凄いよね、ツバサ。こんなのピロポ〜ンと軽く作っちゃうんだもん」 「だな。相変わらず凄いな」 苦笑しながら一がそう言って「行こうぜ」と2人を促した。 着替え終わって皆が居るであろうプールサイドへと向かった。 プール?海って言ってなかったっけ?? まあ、室内の海はきっとプールという表現で良いのだろう。 ふと見ると、ずっと向こうのプールサイドには担任の南悠里が居る。 「先生も呼んだの?」 近くに居た清春に聞く。 「おー、まあ。カベのやつ..詰めが甘かったんだよなー、ククク。てか、何だヘチャ。気持ち悪ッ!お前骨と皮だけじゃなねぇか!!」 はニコリと微笑んで 「あーっと!足が滑った!!」 と叫んで清春をプールの中に蹴っ飛ばした。 ドボーンという派手な水飛沫が上がって暫くして清春の顔が水面に上がってきてを怒鳴りつけている。 は何の反応も見せずにそのまま悠里の元へと足を向けた。 「こんにちは、先生」 「あら、さんも?って...」 う、羨ましい...! 悠里はを見て思わず言葉を飲んだ。 年中ダイエットをしたいと思っている悠里のの体系は羨ましいものであった。 が、は 「体力ないから、もう少し肉は欲しいです」 と悠里の思っていることを否定した。 何より、さっき清春に“骨と皮”と表現されたばかりだ。 「あー!ちゃん!!」 またしても悟郎がダッシュしてきたが、それは途中で瑞希に止められた。 「むー!何だよ、ミズキ。ゴロちゃん、ちゃんと手加減してちゃんにハグする予定だったんだよ!!」 と瑞希に抗議するが、 「水着の女の子に、抱きつくのは..良くない」 と全うな意見を言われてふてくされる。 「トゲー!!」 トゲーも全面的に瑞希の意見には賛成のようで一際大きな声で鳴いた。 「というか、真壁くん。此処で補習?」 「だから、Family nameで呼ぶなと何度も...!」 抗議する翼を黙殺して傍にあるテーブルを覗き込む。 「数学?というか、これって、防水加工?」 テーブルの上の本を取って捲る。何処でも勉強が出来る優れもののようだ。 ふと、振り返ると何故か翼が一に抱きついていた。 翼は一への嫌がらせのつもりだろうが、先生は中々眼福と喜んでいるようだ。顔がにやけている。 「先生って、本当に顔に出ますね...」 が言うとハッと表情を引き締めて、「そ、そう?」と返した。 は答えずに別の参考書を手に取った。 「む、お前は向こうに行かないのか?」 仕方なく補習を受けることにした翼がに言う。 「ああ、ごめん。先生との楽しい補習の時間を邪魔するわけにはいかないかな?」 からかうようにが言う。 「き..!そんなに言うなら、お前が補習を受ければいいだろう。そうだ、担任。そんなに補習をしたかったらコイツにすればいいだろう」 いいことを思いついたといったように胸を張って翼が言うが、 「わたしに補習は必要ないでしょう」 とがあっさり却下した。 しかし、ここに留まれば邪魔だろうと思いその場から離れて一たちの元へと向かうことにした。 |
桜風
08.7.11
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