| 悟郎とライブハウスの前で待ち合わせていると女の子たちが沢山ライブハウスの中に消えていった。 呆然とそれを見送っていると 「あっれー??」 と声をかけられた。 振り返ると一と翼が居た。 「ああ、ハジメちゃんと真壁くん」 「だーかーらー!お前は何度言ったら分かるんだ。実はバカだろう!」 翼にそう怒鳴られては「ははは」と笑う。 一は2人のそんな会話を見ながら溜息を吐いた。 「で、は何で此処に居るんだ?」 「ゴロちゃんが、昨日ハジメちゃんを沈めてたときに約束したの」 嫌な思い出が頭に蘇る。 まさか、花畑って本当に見えるものだなんて思ってなかった。 「じゃあ、悟郎と一緒に来るのか?」 「うん、そうだね」 そう話していると担任の悠里を引き連れて悟郎がやってきた。 「ちゃーん!って、何でツバサとハジメも居るの?」 「今此処で会っただけだよ。てか、悟郎は何で先生と一緒に居るんだ?」 「ほら、瞬くんって凄くヴィスコンティを大切にしているでしょう?だから、彼が大切にしているそれを見てみたいと思ったの。知らずに頭ごなしに否定するなんて彼に失礼だし」 悠里が言う。 その言葉に翼と一は顔を見合わせた。 そして、少しだけ嬉しそうに顔をほころばせた。 「というわけで、センセも一緒なんだよ。じゃ、ちゃん行こう」 そう言っての手を引く。 「あ!ゴロちゃん両手に団子だ!!」 「「花!」」 と悠里は同時に突っ込みを入れ、そのまま悟郎と共にライブハウスに入り、翼と一もそれに続いた。 翼と一が楽屋に顔を出しに行くと話すと悠里もそれに行くと言った。 「ちゃんは行かないの?」 「ゴロちゃん独りになるでしょ?一緒に居るよ」 「じゃあ、瞬にはと悟郎も来ているって話しとくわ」 そう言って一が翼と悠里と共に楽屋に向かっていった。 「...いいの?ちゃん」 悟郎が顔を覗きこんでくる。 「うん、いいよ。今日は色んなところが演奏するんだよね?」 そう言いながら興味深そうに周りを見渡していた。 「のど渇いたでしょ?」と悟郎が離れ、はそのままそこに居たら知らない人に声をかけられた。 こんな室内で道を聞かれるなんてありえないだろうなー、と思っていたら、意外にも人生初のナンパだった。 ほほう、これがナンパか... 適当にあしらいながらそんな事を思っているとドスの利いた声が向けられてくる。 ナンパ男はそのまま驚いて逃げていった。 「ありがと、ゴロちゃん」 「ううん、ごめんね。ゴロちゃんが中々帰ってこなかったからやな思いしたでしょ?」 そう言いながらドリンクを渡す。 「大丈夫だよ。もう少ししたら先生たちも戻ってきただろうし」 そう言って一口飲む。 「そっか...」と少し寂しそうにいう悟郎に「でも、ゴロちゃんが来てくれたからね。助けてくれてありがとう」と言葉を添える。 「えへへ。ゴロちゃん可愛くても男の子だもん。女の子を守るのはゴロちゃんの役目だよ」 そう言って照れくさそうに笑った。 暫くすると悠里たちが戻ってきた。 何故か悠里は今の時点でテンションが高くなっている。 何があったのだろうと思って翼を見上げると 「見慣れないからだろうな」 と呆れながら言う。 「ハジメちゃんは?」 「あいつは舞台裏から見るのが好きだからそっちに行ったんだろう。ああ、一が瞬の演奏が終わったらまた楽屋に行こうと話していたぞ。お前はどうする?」 チラリと悟郎を振り返った。 「ゴロちゃんは帰るけど、ちゃんは行ってみたら?面白いと思うよ」 「じゃあ、行く」 やがてヴィスコンティの演奏が始まる。 悠里はノリノリで音を楽しんでいた。 は横に立っている悟郎を見ると、彼は何か呟いていた。 の視線に気づいたのか悟郎はを見てニコリと笑う。 「シュン、凄いね」 「うん。本当だね」 言葉をそれだけ交わしてそのまま2人はステージに視線を戻した。 「じゃ、ゴロちゃん帰るから」 「うん、気をつけてね」 悟郎はそのままライブハウスの外に向かっていった。 「行くぞ。こら、担任。とっとと戻って来い」 意識をどこかに飛ばして先ほど以上のハイテンションの悠里を引きずりながら翼が楽屋に向かい、もそれに続く。 「あれ、悟郎は?」 「帰ったぞ」 楽屋前で翼たちを待っていた一が問うが、翼の言葉を聞いて「そうかー。悟郎も来ればよかったのに」と言いながら苦笑した。 「は来たんだな」 「中々出来ない経験かと思って」 「瞬のライブごとに来れば経験できるぞー」と言いながらドアをノックして開ける。 翼と一に続いて悠里が入り、はドアの外から中を覗う。 「何だ、まだいたのか」 そう言ってドアの入り口に居るに気づいたように視線を止めた。 「こんばんは」とが言うと「ああ」と少し無愛想に返す。 すると興奮冷めやらぬ悠里が彼に凄かったと感想を述べる。 「うん、凄かったね。ロックに詳しいわけじゃないけど。テンションは上がったかな?」 が悠里の言葉に続けてそういうと瞬は苦笑して「そうは見えなかったぞ」と言う。 「ステージの上から見えるものなの?」 「真壁が傍に居ただろう。でかいからな、コイツは」 そう言って翼を面倒くさそうに指差す。 「俺が民衆の目を惹くといいたいのか。それは仕方のないことだな」 高笑いをしながら口にした翼の言葉に瞬が深く溜息を吐く。 「ま、また気が向いたら来いよ。先生も、そんなに気に入ったんなら...」 瞬が言うと悠里は絶対に行くと意気込んでいた。 その言葉がよほど嬉しかったのか瞬は一瞬微笑む。 いつも無愛想にしている彼が微笑むなんて中々ないことだとは思っていた。だから、彼にとってのこのバンドがどういう存在かということが何となく分かった気がした。 ああ、悟郎はきっと瞬のこういうところが羨ましいのかもしれない。 今日見た彼の横顔を思い出してそんな事を思った。 「そうだね、羨ましいね」 は小さく呟いた。 |
桜風
08.7.18
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