Dear my friends 19





「おい、清春。は!?」

「これ」

不機嫌に清春が返す。

は清春の肩に頭を載せて目を瞑っている。

「病院は嫌だっつうから。とりあえず日陰に連れてきて頭を冷やしてみた。少し水分は補給したけど、それだけだな」

仙道の言葉を聞いて一がの顔を覗きこむ。

「ナギ、ひとりか?」

「いや、翼がこっちに車回してくれている。悪かったな、清春。が面倒をかけた」

「本当にな。さっきも言ったけどよ、携帯忘れたってよ」

そんな会話をしていたら翼がやってきた。

「どうしたんだ、結局」

「わかんないけど、とりあえず熱中症とかそんなかも。病院は嫌だって言ったらしいんだ...」

一が言うと翼が「永田!」と言いながら指を鳴らす。

「はい、翼様」

「病院が嫌なら医者だけでも呼んでやれ」

「悪いな、翼」

「...で?ナギはこのヘチャの家は知ってんのか?」

清春が言うと翼が一を見る。

「や、ごめん。オレも知らない」

「マダラの奴なら知ってんじゃないのか?」

「前、聞いたら知らないって言ってた...」

「じゃあ、仕方ない。とりあえず俺の家に運べ。で、担任に連絡を入れて住所を調べさせればいいだろう。保護者は?」

「...聞いてない」

夏休み前にバカサイユで彼女の母親は北海道だといっていた。

だから、きっと都内に彼女の保護者となっている人物がいるはずだ。

「まあ、これも担任に調べさせればいいな」

呆れたように翼が言う。

「じゃ、運ぶな」

そう言って一がの体を横抱きにしてひょいと持ち上げる。

「清春はどうする?」

「オレ様はこう見えて忙しいんだよ」

そう言って立ち上がる。

少し顔を顰めた。

が頭を載せていたから肩が凝ったのか。それとも動けずに同じ姿勢でずっと居たから足でもしびれたのか。

まあ、今は追求をしないほうがいいだろう。

「ほんと、ありがとな」

「別に、ナギのためにしたわけじゃねぇしよ。そいつはまだオレ様のイタズラに何一つ引っかかってないからな。このままくたばられても面白くないんだよ」

そっけなくそう言って一たちに背中を向けて遠ざかっていった。



翼の車で彼のマンションへと向かい、を運び込む。

そこらのベッドよりも寝心地の良さそうなソファにそっと下ろす。

「じゃあ、先生に電話入れてくる。あ、ついでに悟郎にも」

「わかった」

そう言って一はベランダに出る。

その間に永田が手配をした医師がやってきて、一応熱中症だろうと診断していった。

本来なら病院でちゃんと診断を受けるべきだと進言したが、本人が嫌がっているし、今のところ命に別状がないのだから同意なしに医療行為をするのはどうかということでとりあえず、現時点では見送ることにした。

がうっすらと目を明ける。

「起きたか」

耳に届いた声に驚く。何よりこの寝心地のいいベッドは何だ!?

慌てて体を起こそうとしたの肩を誰かが押さえつける。

「寝てろ。熱中症だと言っていたぞ」

「病院に..連れて行ったの?」

怯えたようにが翼を見上げる。

「清春から聞いたから病院には連れて行っていないが、doctorを呼んで診せたんだ」

その言葉を聞いては安心したように息を吐いた。

「ありがとう。まか..えーと、くん」

「何だ、それは!」

眉間に皺を寄せてのわけの分からない言葉に抗議をする。

「や、だって...あなたは苗字で呼ばれるのが嫌いなんでしょ?流石にお世話になっている身で嫌がっていることをするのはいかがと思って...」

というの言葉に少しぽかんとして翼は深く息を吐いた。

「名前で呼ぶって選択肢はなかったのか。お前はやはりバカだろう...

は驚いてじっと翼を見る。

最初は何でもない風に振舞っていたが、の視線にいい加減居心地が悪くなったのか

「いい加減何かしゃべったらどうだ!!」

と怒鳴る。

「あ、うん。分かった。えーと、翼...“くん”ってあったほうがいい?」

「無くていい」

「わかった。ありがとう、翼」

が微笑んで頭を下げた。

「お?起きたんか?」

一が戻ってきた。

「先生に連絡したから待ってろ。保護者が来てくれるぞ」

そう言っての顔を覗きこんで顔色を覗う。

「少し、まだ蒼いな」

「まって、ハジメちゃん。さっきの、何?」

「“さっきの”?...ああ、保護者ってやつ?おばちゃんが北海道ならこっちに誰かいるんだろ?オレはの家、知らないし。先生は家の住所は知ってもの家の鍵持ってないし。が起きなかったら連れて帰るのに鍵が要るだろうし」

それはそうだが...

この2人は自分の保護者が先生と共に現れたらもの凄く驚くだろうなー、と思いながらぼんやりとしていたら、来客を告げる音が部屋に響く。

永田が悠里を迎えに行き、戻ってきたときには、悠里と衣笠を連れて戻ってきた。

「Why?!な、何故衣笠先生が担任と一緒にここにいるんだ!!」

「そ..そうだよ。先生。何で衣笠先生が!?」

翼と一が驚きを隠すことなく叫ぶ。

「ふふふ、僕がさんのこちらでの保護者ですからね」

穏やかに笑いながら部屋の中に入ってくる。

「ああ、さん。外出をするときはちゃんと日傘を差すか帽子を被らないと。毎日暑いんですからね」

「はい...」

「しかし、仙道君もいいところがありますね。街中で倒れこんでいるところを仙道君が拾ってくれたんでしょ?」

その言葉には頷いた。

「はぁ...とりあえず、此処は居心地がいいですが、帰りましょうね」

衣笠の言葉に頷いてが起き上がろうとする。

「や、ちょっと待って。つうか、何で衣笠先生がの保護者?葉月さんとかじゃなくて、何で衣笠先生??」

一が説明を求める。

衣笠がを見ると彼女は頷いた。

「僕の姉は、さんの2番目のお母さんだったんですよ。だから、僕は昔彼女の伯父になったことがあるんですよ。まあ、姉はさんのお父さんと離婚したのでもうさんと姻戚関係は無いんですけどね。
それに、僕は大学時代さんのお母さんの授業を受けて無理を言ってゼミにも入れてもらったこともあるんですよね。だから、その関係で、今回はさんの保護者を買って出たんですよ」

そんな複雑な家庭の事情と言うか、衣笠との関わりがあったなんてつゆも知らず。

それは、悠里も同じくびっくりしたようにと衣笠を交互に見遣っていた。

「では、帰りましょうか」

「ああ、じゃあオレが運んでやるよ。まだ辛いだろう?」

そう言って一がを抱き上げる。

「ハジメちゃん?!」

「ん?大丈夫って、落とさないからさ」

そう言ってそのまま玄関に向かう。

「あ、衣笠先生。それがのサンダル。持ってきてくれないか?」

「ああ、これですね。はいはい、いいですよ」

そう言いながら衣笠がのサンダルを手にする。悠里も慌てて2人の後を追った。

「あ!翼!!えーと、お邪魔しました!!」

一の肩越しにが部屋の中に残っている翼にそう言った。

「もう無理はするな。あと、携帯は忘れるな」

ヒラヒラとは手を振って応えた。

先ほどよりも随分顔色の良くなったに苦笑して翼も手を振り返した。










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桜風
08.7.25


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