Dear my friends 23





北海道に飛び、の母の勤める大学に向かった。

大学の事務室に行っての母の事を聞く。

「約束がない場合先生はお会いになりません」

「何だと?!」

事務職員の対応に翼が声を上げる。

「ちょっと、翼。落ち着け。あの、の事で草薙一が来てるって話だけでもしてくれないか?」

事務職員にそう言って迫る。

「し、しかし...今先生は不在なんです」

「何だと!?この俺が態々来たのに不在だと!いいから呼び出せ!!」

翼が金で解決しようとか手を変えて交渉をしているのを一が宥めながら止める。

「んー?あっれー??もっしかしてぇ...ハジメちゃん!?」

何だか最近聞きなれた呼ばれ方で名前を呼ばれて振り返る。

「おばちゃん!?」

「あ、やっぱりー!!すごーい!おばちゃんすごーい!!」

自画自賛を始めた。

「どうしたの、こんな北海道くんだりまで。修学旅行?あ!狐と戯れる?寄生虫持ってるかもしれないけど。馬にえさ遣る?手を食べられないように気をつけてね」

「そ、それずげぇ魅力的だけど...おばちゃんに聞きたいことがあって」

何とか誘惑に耐えて一は話を変える。

「んじゃ、研究室においで。というわけで、来客中ね」

事務職員に声をかけてそのまま一と翼と永田を引き連れて自身の研究室に向かった。


「で?どうしたの?てか、イイオトコに育ったじゃなーい?おばちゃんドッキドキ。あれ?学校は??...まあ、偶にはサボってもいいか」

何だかと性格が随分違う。

初対面の翼はその違和感に戸惑いを覚えた。

「ああ、うん。えっと、コイツ翼。真壁翼。オレのダチね。で、今日ここに来た理由はの事」

「...東京でのことは衣笠君に任せてるけど?」

拒絶するような彼女の態度に一は少しムッとした。

「今のことじゃなくて、昔の事」

そう言って先日のの事を話した。

の母は目を伏せる。

「...一君、覚えてないかしら?小さい頃のこと」

「オレ、あんま記憶力がないから。何か言えるほど覚えてないんだ。何となくぼんやり覚えてることはあるけど」

「そっか。には、もの凄くすまない事をしたと思ってるの。私も、元夫も」

「それは、どういうことだ?」

沈黙を守っていた翼が話に入る。

「あの子に愛情を注げなかったのよね。夫と私。分野は違うけど職種は一緒でしょ?大学教授。お互い負けたくないっていう気が強かったんだと思う。自分の研究成果をどれだけ多く発表するか。そういうことばかりに躍起になってね。ってほら、しっかりしてるでしょ?だから私たちも大丈夫だって甘えて。その挙句、あの子は...」

、何かあるのか?」

俯いているの母の顔を覗きこむように問う。

「ううん。そうね、あなたたちが卒業したときにがあなたたちとの別れを泣いて惜しんだら、教えてあげる。の事。君たちが知りたいことで私が知ってること。親として、最低なおばさんの話も」

「...今聞きたいんだけど」

「だーめ。青春って、山あり谷ありなのよ?」

それ以上の母は何も話してはくれなかった。

「おばちゃん、最後一個」

「はいはい?」

「...なんで、が日本に残るって聞いたとき一緒に住むこと考えなかったんだ?」

別に東京でなくてもいい。

どうせ編入するなら、北海道でも構わなかったはずだ。

「怖いから。また、あの子を傷つけるって思うとね」

「身勝手だな、アンタ」

翼が言う。

「そうね。そうよ」

悲しそうに目を伏せて頷いた。

「おばちゃん、が夏休みに倒れたの知ってる?」

「...衣笠君から聞いたわ」

「そう、わかったよ。じゃあ、また来るかもしれないけど。そんときは狐と馬、触らせてくれよな」

一の言葉にの母は苦笑しながら頷いた。

「一君、翼君。のために態々此処まで来てくれてありがとう」

そう言った彼女の表情は間違いなく母親のそれだった。

「おばちゃん、仕事はほどほどにな」

「一君はしっかり勉強しなさい。今じゃないと出来ないこと、沢山あるはずだから」

一は苦笑して頷いて手を振って部屋を後にした。








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桜風
08.8.1


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