| 放課後、悟郎が一と瑞希の腕をガッシと掴んでバカサイユへと向かう。 「ちょ、ちょっと。悟郎、何だよ。何でオレと瑞希は逃げられないように捕まえるんだ?!」 一が抗議をするけど、「いっいから〜!」と上機嫌でそのまま引きずっていく。 不思議に思いながらも残りの3人は彼らのあとについてバカサイユへと向かった。 「しかし、担任は何で態々バカサイユで補習なんて言い出したんだ?」 翼がそう呟いた。 相変わらず悟郎は上機嫌だ。 ワケが分からないといった表情で皆に見られているが、悟郎は全く気にせずにノートを全部テーブルの上に並べている。 「おい、風門寺。気持ち悪いぞ、お前」 瞬がそういう。 暫くするとバカサイユのドアがノックされた。 「こんにちはー」と悠里が入ってくる。 「おい、ブチャ!何で態々バカサイユで補習なんだァ?」 清春が言うが、悠里は笑顔を浮かべて 「えーと、今日からみんなの補習をする時間、私のサポートをしてくれる人を紹介します!」 と言ってドアに隠れている人物の手を引いた。 突然でもうちょっと前振りがあると思っていたは慌てたが、腕を引かれてドアの中に入れられたので、居心地悪そうに視線を彷徨わせ、誰とも目を合わせずに「よろしくおねがいしまーす」と呟いた。 ああ、だからかとこの部屋の中に居る全員が悟郎の上機嫌の理由を理解し、それぞれ表情が柔らかくなる。 「ちゃーん!!」 視線を彷徨わせていたため、突進してきた悟郎に気づいたのは自分に抱きついてくる寸前で、更に、どんなに女装をしていても悟郎が男であることは変わらず。は悟郎のその勢いを受け止めきれずによろけて尻餅をついてついでにドアに頭をぶつけた。 「イタイよ、ゴロちゃん」 「うわーん!ゴロちゃんポペラ嬉しい!!ちゃんがまたバカサイユに来てくれて感動だよー!!」 マウントポジションのまま悟郎は泣きながらの来訪を喜ぶ。 「おい、悟郎。いい加減の上から降りろ。あと、。パンツ見えそうだぞ」 一の一言で悟郎はの上に乗りっぱなしの自分の状況を思い出し、は一に指摘されて慌ててスカートの裾を整えた。 「ちょっと、ハジメ!女の子になんて事を言うのさ!!ゴロちゃん怒るよ!そんな事を言うなんてまるでキヨみたいじゃん!!」 「おいコラ、何言ってんだよオメェはぁ!?ああん?」 キヨみたい、と言われてそんな比較対象にされた清春は何だかカチンと来たらしく悟郎に向かって喧嘩を吹っかける。 「えー!だってキヨってセクハラばっかじゃん。ホントの事だよ。ゴロちゃん、ホントの事を言っただけだよ」 悟郎のお陰で強打した後頭部を抑えているに一が手を差し伸べる。 「大丈夫か?」 躊躇いがちにその手を取って「ありがとう」とは返した。 「余計なことをしたのは悪かった。うん、オレだって勇次のことで誰かが勝手に色々と嗅ぎまわったら怒ると思うから、それにだけは謝る。けど、この先もお前が嫌だって言っても心配はするからな。それだけは、譲らないからな」 「...叩いてごめんなさい」 が頭を下げた。 「いいって。この前までストリートで暴れてたんだから女の子に殴られたくらいどうってことないってな。あ、でも思い出した。って左利きだったんだよなー。右側殴られたのって中々ないからそれはびっくりしたかな」 ぐしゃぐしゃとの頭を撫で繰り回しながら照れたように一は少しだけ早口にそう言った。 「ごめん、今でも咄嗟に出るのは左みたい」 髪を直しながらは苦笑してそう言った。 「みんなも、ごめんなさい」 は部屋の中にいる人物たちに頭を下げた。 それぞれが別に気にしていないといった風な笑顔を浮かべる。 「さ、仲直りも終わったことだし。補習を始めます。さん、一君と瑞希君をお願いね」 一と瑞希は顔を見合わせた。 取り敢えず、他のメンバーとは違うテーブルについた。 「補習のサポートってのは、突然今日言われたから。先生みたいに講義する準備もないし。だから、今日はこれで」 と言ってプリントを一と瑞希の前に伏せて置いた。 「な、何だよこれ」 「テスト?」 首を傾げながらが言った。 「テストぉ?!」 一が聞き返すと頷く。 「ルールを言います。それを50分で解いてください。今日は、抜き打ちって感じだから6割。100点満点中60点取れたら明日の補習は無し。取れなかったら明日も補習。本当は7割って言いたかったんだけど、流石に抜き打ちだからね。ハジメちゃんは動物が好きだから、動物関係の問題もある理科。瑞希はどれが好きかわかんないから、歴史ね」 「何だよ、貴婦人だ!」 「リ・フ・ジ・ン!貴婦人って何よ!もう、ハジメちゃんってば...」 間違いを正して溜息を吐いた。 「で、今回は特別にご褒美。ハジメちゃんには、私が知っている野良にゃんこのたまり場を教えます。瑞希は..何が良い?」 「野良にゃんこ!?本当か!!オレが知っていないスポットだよな!!」 「...それは、ハジメちゃんが60点取れたら分かること。もし、ハジメちゃんが知ってるスポットだったら別のスポット探して教えるから。わたしがそういうの得意なのはハジメちゃんも知ってるでしょ?」 「よーし、分かった!男に二言はないからな!!」 腕まくりをして言う一に 「は、女の子......」 瑞希が突っ込む。 「ホントにね。失礼だよね、ハジメちゃんって。で、瑞希は?」 「.......手」 ポツリと呟いた。 「瑞希は、と手を繋いで帰りたいんだってさ」 一が訳す。 2人でいるときは瑞希も口数は少なくないから、もこういう単語で話を終える会話は未だに苦手だ。 「はいはい。手ね。それで良いのね?」 コクリと頷いた。 「一応、テスト問題の横に括弧の中に数字が入ってるからそれ点数ね。計算して答えてもいいけど、全部頑張っていいよ。じゃ、用意は良い?」 「よっしゃー、来いや!」 「うん。大丈夫」 は頷き、ストップウォッチをテーブルに置いた。 「よーい、スタート!」 |
桜風
08.8.15
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