Dear my friends 30





が悠里の補習の手伝いを始めてから、一と瑞希は殆ど彼女が補習を受け持つようになった。

他の人も別に構わないと話をしてはいたが、悠里は教師では生徒で。生徒を指導するのは教師の勤めだと言う悠里が自分と同じ人数面倒を見てもらうわけには行かないと固辞したため、が面倒を見るのは2人と決まっていた。

「でも、ハルと瞬のセットだけは嫌です」

の言葉に悠里は「やっぱりそうよね...」と項垂れた。

彼ら2人が揃ったら大騒ぎで補習も進まない。

でも、随分と2人とも補習に出るようになったのが悠里にとっては嬉しく、それくらいの苦労は仕方ないとも思っている。


「てか、何でこんなに暑いの?」

机に突っ伏してが言った。

「えー?確か空調の故障だろ?」

そう言いながら大人しく問題を解いているのは一だ。

「もう補習やめよう」

「お!いいコト言うな、瑞希。、そうしよう!!」

「出来ません。出来るわけないでしょ...バカサイユは、今日も賑やかだろうしね」

瞬と清春が揃っているのだ。きっとそういう事態に陥っているはずだ。

「まあ、バカサイユなら空調設備に不具合なんてないだろうしなー...」

「翼って変なところで完ぺき主義者だもんね。自分の作った施設に不具合なんて彼のプライドが許さないだろうしね」

「だろうな」と言って一が天を仰いだ。

ちょっと勉強に飽きてきた頃のようだ。

休憩をしようと思ったら教室の入り口に人の気配がしては顔を上げた。

クラスAの生徒だ。

彼らがまたこのクラスに態々やってきて無意味に罵ろうとしてきたようだ。

「ぁあ?!」

大人しく補習を受けてはいたが、やはり何となくストレスは堪っているみたいだ。

一が立ち上がると同時にも立ち上がり、そのまま教室のドアに向かっていく。

「な、何だよ...!」

喧嘩を吹っかけにきたクラスAの生徒はに怯む。

はその生徒を目の前にして突然英語を捲くし立て始めた。

「え?..は?!」

何を言っているのか聞き取れないらしく彼らは混乱してきたようだ。

「何つってんだ?」

小声で瑞希に一が聞く。

「たぶん......出て行けとか」

なるほど、と納得してドア入り口のを見遣った。

というか驚くほど流暢な英語だが、相手には通じていないようだ。というか、ヒアリングできていないようだ。

の英語に怯んだ彼らは何の因縁もつけることができずにそのまま逃げるように去っていった。


「ったく、暇人め...!」

そう言っては乱暴に教室のドアの鍵を掛けた。

、気が立ってるか?オレらバカだからイライラしてきたか?」

「やる気のあるうえ、頑張ってる人に対しては怒りません。寧ろ、暇で人を陥れることしか考えていない奴が偉そうにしてるのがムカついただけ。というか、暑い!!」

イライラの原因はこの暑さらしい。

「窓、開けるか?」

外では野球部やサッカー部が部活の興じており、声が教室の中に届く。

気が散るといけないから、と窓を閉め切って補習をしていた。

「開ける。暑いよ...なんだよ全く」

相当参っているのだろう。ぶつくさと文句を言いながら教室の窓を開けた。

「金返せー!!」

突然外に向かって叫ぶ。

流石に、その行動には一も瑞希も驚いて顔を見合わせる。

、もしかして葛城先生に金貸したのか?返さないって有名だぞ?それなのに瞬の奴は貸すしなー...」

「瞬って意外とお人よしだもんね」

は自分の席に戻りながらそう返した。

「......取立て、手伝おうか?」

瑞希が言う。

「いや、貸してない。借りないでしょう。わたしの保護者が誰かを知ってるみたいだから」

の言葉に更になぞが深まる。

「じゃあ、何で...」

「この学校の授業料ってべら棒に高いの知ってるよね?そんな高い授業料を取っておきながら快適な学校生活を提供出来ないなんて詐欺じゃない?」

そういう意味か、と一は溜息を吐いた。

「でも、それ出してんのは親だろう?」

「そうですとも。まだまだ親がいないと生活出来ない甘チャンですよー。目指せ、瞬って所かな?」

そう言って椅子に座って目の前に広げている参考書に目を落とした。

「で、休憩終了でいい?」

「え?あ、ああ。オッケー」

「......うん」

「トゲー!」

2人と1匹の返事を聞いては本日の補習科目、数学の続きを始めた。


暫くすると教室のドアの鍵が開けられて人が入ってくる。

「おや、今日も頑張りますね」

そう言って入ってきたのは衣笠だ。

「もう時間ですか?」とは教室に掛けてある時計を振り返った。放課後残って自習をする生徒はそれを学校側に届け出なくてはならない。

たちも勿論その手続きは済ませている。何時までか、というものまで書かなくてはならないので、それ以降は残れないというシステムだ。

ちなみに、補習の場合は教師がついているので届出は要らないらしい。

「いいえ、まだですよ。でも、今日は空調が止まってるから暑いでしょう?頑張ってるあなたたちに差し入れです」

そう言って飲み物を渡してきた。

「ありがとうございます。でも、こんなことをハルに知られたらうるさいかもですよ」

受け取りながらが言う。

「ん?しかし、ここには今日は仙道君は来ないでしょう?」

そう言った衣笠にが笑いながら教室の一角の天井を指差した。

「ん?あそこがどうしたんですか?」

そう言いながら衣笠はその真下に行き、「ああ、」と呟く。

「斑目君、少し手を貸してもらえませんか?」

衣笠の言葉を受けて瑞希はを見た。はイタズラが成功した子供のように嬉しそうに笑っている。

それを見て一は首をかしげた。

瑞希が衣笠の傍に行くと「あの天井のタイルをずらしてもらえませんか?」と言い、言われたとおりに瑞希が天井のタイルをずらすとそこにビデオカメラが設置してあった。

「ああ、これは遺失物ですねぇ。職員室で預かりましょうか」

そう言って衣笠がビデオカメラのレンズを覗き込んでニコリと微笑む。

その瞬間、すぐさまの携帯が鳴った。

『テメーー!ヘチャ!!好き勝手すんな!!つか、何で知ってんだ!!』

電話から少し離れていても聞こえるくらいの音量で怒鳴られた。

それでも、は楽しそうに笑いながら「何の話?ハル、どうかした??」と返している。

一通り会話をしてが電話を切った。

「そういえば、さん。さっき、教室の外に向かって何か叫びましたよね?葛城先生が凄く焦っていらっしゃいましたよ」

「身に覚えがありすぎるんでしょうね」

そう言っては笑った。

「全く、あなたは...」

衣笠は苦笑しながらそう呟いた。

母親に似ている、と言いたかったが、彼女の気を害す言葉だと言うことを知ってるためそれは飲んだ。

でも、本当にこの奔放な性格はそっくりだ。









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桜風
08.8.15


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