Dear my friends 31





、ごめんな」

今日は瑞希がバイトで補習は欠席だ。

と一のマンツーマンでの補習であったが、突然一がそう呟いた。

「何?どうしたのよ。よく分かんないけどいいから。ほら、口ではなく手を動かして。今日の目標はあと10ページあるんだよ」

呆れたようにが言うと「んじゃ、ちょっと休憩しようぜ。疲れたよー」と一が訴える。

確かに今日は瑞希がいない分、少しだけが厳しい。

やる気がない今の状態に続けても仕方ないと思っても手に持っていたシャーペンを置いた。

その様子を見て一は安心したように机の上に体を投げ出す。

「でさ、さっきのだけど。オレ、瞬に聞いたときすげー驚いた」

「何の話?」

瞬から聞いたということは、きっと自分の幼い頃の話だろう。

が、いっつも大変な思いしてたの知らなくて。オレ、すげー能天気に遊びまわってたなーって」

「遊ぶのはあれくらいの年の子供の仕事でしょ?今は勉強が仕事だからね!」

そう言って苦笑する。

「やなこと、言うなー。でも、あんとき、オレが気づいてたら出来たことがあったかもしれないって思ったらな...」

目を伏せて言う一には笑った。

「何だよ!あの話を聞いて本気でオレそう思ったんだからな!」

「違うよ。ハジメちゃんが気づかないでいてくれたから、わたしは外で遊んでたときは楽しかったもん」

そういうに一は疑いの眼差しを向ける。

「それにね、ハジメちゃんだけだったんだよ」

「何が?」

「星太が一緒に居ても遊んでくれた子。星太って小さかったでしょ?小さいから一緒に遊べないって嫌ってた子たちいっぱいいたけど。ハジメちゃんだけ星太にあわせて遊びを選んでくれたし」

「そりゃ、小さい子は上が守ってやるもんだろう?」

そう言って少し照れた風に鼻の頭を掻いた。

は目を細めてその様子を見た。

そんなの視線に照れくささを感じた一は話題の転換を図ってみる。何かあっただろうか、と考えた挙句、ひとつ思い出した。

「そうだ!知らないよな」と言いながら携帯を取り出した。

画面を表示してに渡す。

「何?ハジメちゃんの彼女?」

「ばーか、違うって。けど、メチャクチャ可愛いぞー」

そう言う一はデレデレだ。

「え!?何??妹!?」

「よく分かったなー。そう。二葉と三希だよ」

「ハジメちゃんの子供の時に似てるもん。3歳くらい?」

が妹たちの年齢を当ててしまったため思わず「すげー!」と一は呟く。

「一応、子育て経験がありますから?」

弟を育てたのは他ならぬだ。

「そういや、そうだったなー」

苦笑しながら一は呟き、から携帯を返してもらう。

「おじさんたち、今は何処に住んでるの?ハジメちゃんも一人暮らしって...」

「さあ?」

一の答えには唖然とした。

「何で?」

「あまりに二葉たちを可愛がりすぎてなー。逃げられた。今、何処にいるか分かんないけど、連絡取れるしいっかなーって」

相変わらず大らかだ。

「相変わらずだね、ハジメちゃん」

が嬉しそうにそう言った。


「あのさー。オレっていつまで“ハジメちゃん”なワケ?」

不意に拗ねたように一が言う。

「翼、瞬、それに瑞希。あと、清春だってハルって呼んでるし。オレだけじゃん?ハジメちゃんなんて呼ばれてるのは」

「ゴロちゃんは“ちゃん”がついてるでしょ?」

の言葉に一は一瞬詰まったが

「それは、悟郎が言い出したんだろう?オレは、がこの学校に来たときに言っただろう?この年で“ちゃん”はないだろうって」

そう言ってバンと机を叩いた。

こういう記憶力はあるんだ...

そう思いながら「言ったねぇ」とは頷いた。

「じゃあ、さ。今度からオレも翼たちみたいに呼び捨て!はい、いいな?」

「はい」って言われても...とは少し困った。今更変えられるはずがない。

「そうだよなー、じゃあ。ハジメちゃんって言ったらペナルティな。何にする?」

「ちょ!横暴!!」

「いいだろう。オレ、いつもに怒られてるんだから」

「それは、ハジメちゃんが勉強サボろうとするからでしょ?!」

そう言ってはしまった!と思って一を見る。

一はニッと笑って、「言ったよな、今」と言う。

徐にの手を取ってその指先に唇を落とした。

「な!?」とは椅子を蹴って立ち上がり、一から距離を取る。

「うん、これだなー。“ハジメちゃん”って言ったらキスな。10回言ったら口だからな!」

「信じらんない!エッチ、スケベ、変態!」

「最後以外は、まあ。否定しきれないよなー。男は須らくそうなんだよ」

くっ!“須らく”の使い方があってる!!

喜ぶべきことだが、この場に於いては手放しで喜べない。

「あなたは!」

「何だよ、それ。ダメだぞー。うん、オレの事を呼ぶときは“一”以外認めないからなー。それ以外はペナルティなー」

嬉しそうに言う一が今ほど小憎たらしいと思ったことはない。

一は上機嫌になり、

「じゃ、続き始めようぜ。!」

と続きを促す。

何だ、この敗北感は...

あと10ページあるのに、既にもの凄く疲れてしまった。








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桜風
08.8.22


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