Dear my friends 32





10月には文化祭がある。

文化祭は生徒の手作りがテーマらしい。

この学校はブルジョア校だから、文化祭も無駄に金を賭けているのだろうと思っていたは驚き、それは悠里も同じだったらしい。

「良かったわー、普通っぽいところがあって」

「普段、非常識を目にしているから随分神経は太くなった気はしますけどね」

がそう言って応える。

非常識の頂点にたつ6人の傍にいることが多いと悠里は時々見なかったことにしたいと思うことに直面する。

は本当に見なかったことにしているが、性格の素直な悠里は直面したら見なかった振りができないようだった。


クラスXは喫茶店をすることになった。

B6たちは全員ウェイターとなった。

それは、翼も例に漏れずということだったため、ちょっともめたが最終的には悠里が何とか説得した。

ちゃんもメイド服着ようよ!」

悟郎に言われては目を丸くした。

「わたしは裏方がいいと思う。家事には慣れてるし」

「だったら、俺も」と瞬が言うが

「瞬は、お客さんたくさん連れてきてくれるからホール。やっぱりやるなら売り上げトップでしょう」

が却下した。

“売り上げ”という単語に少し反応してしまった瞬は少しばつが悪そうな表情になったが、それでもまだブツブツ文句を言っている。

さん、紙の花作れるかしら?」

悠里に声を掛けられて教室の飾り付けの飾り花などを作成する。

そこに翼がやってきた。

「何をしている」

「お花。紙で作るんだよ」

悠里が翼に試しに造ってみないかと勧めてみた。

そして、翼が作ったものに皆は沈黙をした。

「何だ。どうした。簡単だな」

ふっと笑って翼はそういう。

しかし、様子を見に来た一に鼻をかんだ後のティッシュのようだと表現されてプライドが傷ついたらしく、ムキになって作成に勤しみ、1つだけマシなのが作れた。

教室内の飾り付けや発注の確認等を済ませて帰宅の途につく。


「おい!」

門を出るところで声を掛けられて振り返った。

誰だろう、とは悩む。

知らない子だ。

「お前、いい気になるなよ!!」

そう言って少年は去っていった。

クラス証を見た限りでは下級生らしい。だが、下級生に“お前”って言われるなんて心当たりなど全くない。

というか、女の子に言われるなら何となく分かる。学校中に目をつけられていると言っても過言ではないし。

そう思いながら自宅に向かった。



翌朝、教室に入ると内装が少し変わったようだ。

「どうしたの?」

先に来ていた悟郎に声を掛けると、悠里が飾り付けを直したっていう話になっているという。

他の生徒たちは悠里が自分たちの飾り付けが気に入らなくて勝手に変えたのだといって責めているようだ。所詮、おちこぼれのクラスXの生徒のすることだと言って気に入らなかったのだろう、と。

「いやいや、それはないんじゃない?」

「そんなこと言って。だって俺たちと同じに見られるなんて嫌で仕方ないんだろう?お前、頭いいもんな!!」

「ちょっと!何て事を言うのさ!!」

そう言って間に入ったのは悟郎だ。

「この間、一君を一方的に怒鳴りつけたのに、今は当たり前のように隣に立ってるし。我が物顔でさ」

話が逸れ始めている。

まあ、悠里に向けられた矛が逸れたのならいいか。

そう思っては溜息を吐いた。

「何よ、ほら。バカにしてる!!」

「馬鹿にしてないけど。そうやって卑屈になる必要性が何処にあるかわかんない」

「ふざけんな!」

「おい、何をしてる」

そう言って止めたのは翼だった。

「何が理由でこんな騒ぎをしている」

「翼君!え、と。何が原因だったんだっけ?」

女子生徒の一人が周りの生徒に話を振る。

悟郎が何かを言おうとしたが、それはが制した。

それに気づいた悠里が「私が、クラスの飾り付けを変えたから」と話を戻す。

は大仰に溜息を吐いた。

「えっと、それはね。実は、ゴキブリ。もの凄く大きなゴキブリが昨日の夜にこの飾りの上を走ったから。それで、慌てて箒で追い払おうと奮闘をしたら飾りがメチャクチャになってしまったから直したの」

そんな悠里の言葉に翼の表情が変わる。

それで悟郎とは何かを察した。

「そっかー。センセごめんね。ゴロちゃんちょっと勘違いしちゃってたみたい」

「それと、この間オレとが喧嘩したのってオレが悪かったんだよ。だから、今は仲直りして前と同じに戻っただけ」

ひょいとの頭に顎を載せて一が言う。

「重い...おはよ」

「体重、あんま掛けてないけど?おはよう」

そう言って一はの頭に載せていた顎をどけてニッと笑う。

「ま、幼馴染って狙ってなれるもんじゃないし。仕方ないってみんなも諦めてくれって」

そう言って一がいなくなった。

ばつが悪そうにを責めていたクラスメイトたちはそそくさとその場を去っていく。

また助けられたようだ。

溜息を吐くと悟郎がポンポンとの肩を叩いてニコリと笑った。

「今日はゴロちゃん一生懸命ウェイトレスするからね!」

「期待してます」

の答えに悟郎は右手の親指を立ててウィンクをして軽やかな足取りで男子の更衣スペースに向かっていった。









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桜風
08.8.22


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