| 文化祭が始まり、クラスXはB6がウェイター&ウェイトレスということもあって大盛況だ。 ホールの人数が足りなくてもホールにと要請されてメイド服でないのなら、という条件で承諾した。 「えー!!ちゃんならポペラ可愛いのに!というか、翼に言ってちゃんの分の衣装も作ってもらってるんだよ?」 悟郎の言葉には遠い目をした。 とりあえず、そういうのはまず本人の意思を確認してからにしてくれ... ホールとキッチンを忙しく行き来しているが瑞希に呼び止められた。 キッチンの入り口近くで話していると悟郎がその様子を見て声を掛けてきた。 「何話してるの?」 「特に何ってことはないけど...」 が応えるが、悟郎はナイショ話をされたと勘違いをし、仲間に入れるようにと言ってくる。 「いや、だから本当に」 が言うが、悟郎は聞かない。 「ゴロちゃん。そこ危ないよ」 キッチン担当の女子生徒が声を掛けてくる。 それでも悟郎は気にせずににわがままを言う。 「ゴロちゃん、そこ危ないって。もう解散しよう」 そういうがやはり聞かない。 悟郎が両手を挙げたところに熱湯を持った女子生徒が通りかかり、その器を持つ手を偶然に悟郎が払ってしまった。 その衝撃で熱湯の入っている器が宙を舞う。 「瑞希!」 はその熱湯が掛からないように体を強く押す。 「!?」 「ちゃん!?」 数秒目を瞑っていたが目を開け、笑顔で瑞希とトゲーと悟郎を見る。 「怪我はない?」 「ちゃん、お湯が...!」 「ああ、言うほど熱くないよ。でも、着替えないと。ちょっと席外すね。瑞希、トゲーにお湯は掛かってないね?」 「うん、でもに」 心配そうに瑞希が声を掛けてくる。 「大丈夫。熱くないって。とりあえず、ちょっと周りがざわついてるからゴロちゃん此処はお願いね。ゴロちゃん、頼んだよ。瑞希もしっかり接客ね」 そう言って微笑んだままは教室のドアに向かっていく。 「翼様」 いつも翼の傍に控えている永田が声を掛けてくる。 「何だ、永田」 「少し席を外してもよろしいでしょうか」 驚いたように翼が永田を見る。 いつも自分の傍に控えている彼が外出中に自分から離れるなんて言うなんて今までなかったことだ。 「構わん。どうせ今は俺もウェイターだ」 翼の言葉に永田は恭しく頭を下げて教室を後にした。 「背中、か...」 とりあえず保健室に向かいながらは呟く。 熱湯が熱くないはずがない。とりあえず、そんなに厚い皮ではない。 しかし、肩から背中に掛けてだから自分で冷やすのも難しい。 「さん」 「うわぁ!!」 背後から声を掛けられては声を上げる。 「な..永田さん!?」 「珍しいですね。やはり火傷を負っておられるから余裕がなかったのでしょうか」 そう指摘されて諦めたようには溜息を吐いた。 「翼は?」 「少し席を外すことを許していただけましたので...氷水にタオルを浸して冷やすのが良策ですね。おひとりでは難しいでしょう?お手伝いしましょう。今服を脱ぐのは危険ですしね」 はもう1度溜息を吐いた。 「お手数をおかけします」 「いえいえ。いつも翼様がお世話になっていますから」 保健室で氷水で冷やしたタオルを肩から背中に掛けて宛てる。 「ちょっと、時間が経ってしまいましたから冷やす時間も長めにした方がよろしいかと思います。勿論、今回は病院に行かれることをお勧めしますよ。女性の体にこういった火傷の痕がつくと大変ですしね」 「......はい」 小さくは答えた。 「なあ、は?」 一が悟郎に聞く。 「えーと、あれ。まだ戻ってきてないね」 キョロキョロと周囲を見渡す。 悟郎が先ほどの出来事を話すと一は眉間に皺を寄せる。 「でも、熱湯じゃなかったようだよ。言うほど熱くないって」 「ゴロちゃん...」 先ほどの女子生徒が声を掛けてきた。 「何?」 「実は...」と先ほどの話をする。彼女が言うには彼女が持っていた器の中には間違いなく数秒前に沸騰したもので一般的に“熱湯”だという。 それを聞いて「え、じゃあ...」と悟郎の顔色が変わる。 傍で聞いていた瑞希が駆け出した。 「何でさんは熱湯だって言わなかったのかな...」 女子生徒が呟く。 「そりゃ、悟郎が叱られるからだろう。それに、文化祭の出し物中にけが人が出たら担任の先生だって学校側に何か言われるに決まっている。特にこのクラスだしな。ったく...!悟郎!!」 一が説教を始めた。 悟郎は泣きそうな表情で教室の入り口に目を向ける。 一の説教が怖くて泣いているのではなく、にとんでもないことをしてしまったという罪悪感からだ。 自分があんなところで騒がなければが火傷を負うことはなかったはずだ。 彼女自身、悟郎に向かって危ないよと言っていたのだ。 「まあ、はそういう奴だからな」 呆れたように一が言う。 「悟郎、と瑞希の分もしっかり働けよ。他の奴にはオレが言う」 そう言って一は翼のほうに足を向けた。 |
桜風
08.8.22
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