Dear my friends 38





「坂下ぁ!!」

一がA組の教室入り口で呼び出す。

「ハジメ先輩!どうしたんですか??」

嬉しそうに一の呼び出しに応じる坂下に対して一は表情を変えず彼を睨みつける。

「お前、に何してんだ」

「だ..だって!あの女がいるからハジメ先輩は前みたいに喧嘩をしなくなったんでしょ?だから、あいつがいなくなれば...」

「次、あいつに何かしたら。お前を潰すぞ」

胸倉を掴んで一が坂下に言う。

恐怖と尊敬の眼差しを綯い交ぜにした視線を一に向けながらも坂下は頷かない。

「やはり、お前はくずだな。下級生にも簡単に手を上げる」

不意に加わった第三者の声に一は一層不機嫌になった。この世で一番ムカつく人間の声だ。

「岡崎、何しに来やがった」

「このクラスの生徒が助けを求めてきたんだよ。3年のクラスAまでな」

勝ち誇ったように彼が言う。自分は慕われているのだぞ、と。

「今、話かけんな。オレはこいつと話してんだ」

「話しているとは到底いえないだろう」

岡崎の取り巻きがそう言って挑発する。

「どうせお前は自分より弱い人間に暴力でしか訴えられない。そうだろう?クズが」

岡崎の言葉に「何だと...」と一が低く唸る。

ポケットに隠していたナイフを取り出そうとしたところで、「一、危ない!」というまた別の声が割り込んできた。


その声に思わず手を止めると、その瞬間衝撃が襲ってきた。

「...ちょっと待て、。危ないのはどっちだ?」

「危なかったね、一。さ、教室に帰ろう」

が体当たりをして一をふっ飛ばし、そのままの勢いでは一の上に倒れこむ。とりあえず、現在の一は“災難”の一言に尽きそうだ。

「いいから、上から降りろ。ていうか、お前結構悟郎に似てきたぞ」

そう言われては一の上から降り、一に手を差し出す。

ちゃん、何でここに?」

岡崎が驚いたように呟いた。

「犯人が坂下君ってのは見てるから知ってた。けど、彼が望むとおりに動く気がなかったからそのまま放っておいたの。でも、一が動くとここぞとばかりに出動する人物がいるのが分かってたからね。
...ねえ、そんなに一が怖い?」

そう言ってまっすぐ岡崎の目を見る。

「な..なんで俺がそんなクズを恐れるんだよ」

「それは、勿論。クズじゃないのを知ってるから」

の視線に岡崎は怯んだ。

「まあ、心当たりがあるのかな?だったら、まだ救いはあるよね」

「ふん、B6に取り入ったお陰で大きな顔が出来るな」

岡崎の取り巻きが言う。

は彼を一瞥して何の言葉も口にせずに一の手を引いてその場を後にした。


!!」

一が怒っている。

お前がバカにされたのだぞ、と。

お前が傷つけられていたのだぞ、と。

「いいから。ハジメちゃんもそうカッカしないの。下手したらあの場で暴力沙汰って騒がれて退学。良くて停学だよ。そうなったら卒業は絶望的。...まだナイフ持ってるんでしょ?出そうとしたんでしょ??」

が真面目な表情でそう言った。

その通りだった一は視線を逸らす。

「一緒にちゃんと卒業してよ」

がそう言った。

思わずを見るとその表情は真剣そのものだった。

まあ、一緒に卒業といったら心配なのはのほうではなくて自分の方だなと納得した。

「分かったよ。ったく...」

そう言っての頭を乱暴に撫でる。

「てか、今言ったよな?」

あ、バレてる...

は一から視線を逸らした。

もうクセなのだから見逃して欲しい。

丁度チャイムが鳴った。

「あ、本鈴!ほら、走らないと。次は衣笠先生の数学だよ」

これ幸いと言った感じには駆け出した。

「んじゃ、あとでなー」

笑いながら言う一とは対照的に一生懸命反応しないように努めるは赤くなった顔を何とか冷ます方法を考えていた。

「顔赤いぞー」

「黙れ!!」

からかわれてそう毒づくが、どう考えても一の方が足が速いしの走るペースにあわせているのだから逃げられない。

は諦めの溜息を吐いた。









Next


桜風
08.9.5


ブラウザを閉じてお戻りください