Dear my friends 39





瞬のライブがあるから一緒に行かないかと一に誘われた。

悠里は瞬のライブには毎回行っているらしく、今回も行くと言っていた。

楽屋に行くと、なにやら騒がしい。

「瞬?」

「お前ら、来たのか」

険しい表情をした瞬がいる。

先に来ていた悠里と翼も同じく険しい表情をしていた。

「瞬のベースの弦が切られてたんだ」

「はあ!?ちょ、それって...」

一が言葉を失う。

「予備の弦は?」

そういうのは準備しているはずだ。

「それはなくなった」

「誰かが意図的にやったことってことだね...」

「そうだわ!ギターの子に弦を借りたら?予備って持ってるものでしょ?」

「弦が違いますよ、先生」

が言うと瞬は意外そうな表情を彼女に向けた。

「詳しいのか?」

「本で読んだ程度の知識しかない。というか今日も対バンでしょ?他のグループに予備を借りれないか回ってこようか?」

そういうと瞬は口ごもる。

「手段を選んでらんないでしょ?頭下げて借りられて、演奏出来ればいいんじゃないの?それで済むなら」

そう言ってが楽屋から出て行こうとしたら誰かが入ってきた。

彼にぶつかりそうになったの腕を翼が引く。

「ありがとう」

「気をつけろ。も意外とそそっかしいからな」

楽屋に入ってきた人物はどうやら、以前瞬のバンドにいた人物とライバルバンドのリーダーだ。

以前瞬のバンドにいた人物は、瞬に一方的に解雇されたということを根に持っている発言をしている。

そして、バンドのリーダーも普段の瞬の態度がこういう事態を招いたのだといっている。

普段の、バンドをしていると着の瞬の態度の事はには分からないが、それでも、彼らの言い様から推察すると褒められたものではないということは分かった。


土下座をするなら予備の弦を今自分が所属しているバンドメンバーから借りてやってもいいと元メンバーがいう。

瞬は頭を下げることを躊躇ったが、悠里が膝をついた。

「何をしている」

「どうか、瞬君に弦を貸してください」

そう言って土下座をした。

流石にそれにはその場にいた人物全員が驚き、言葉を失った。

「な、何をしている。やめろ」

瞬が止めるが、悠里は首を振る。

「さっきさんも言ったでしょ!頭を下げて瞬君が演奏出来るならこれくらいどうってことないわよ」

そう言ってまた頭を下げる。

瞬に向かって土下座をするように言った男の懐から何かが落ちた。

瞬の予備の弦のケースだった。

どうやら、弦を切ってさらに予備の弦を盗んだ犯人は彼だったらしい。

一が殴りかかろうとした。が、それはが止める。

「彼を殴ったって、瞬が演奏できるってことはないでしょ」

「コイツが、瞬のベースの弦を切ったんだぞ」

「殴って弦が治るならとっくにわたしがそうしてるよ。...図々しいお願いで申し訳ありませんが、ベースの弦を瞬に貸していただけませんか?」

は犯人の所属しているバンドのリーダーに頭を下げた。

「ああ、そうだな。ウチのメンバーがこんなことをしでかしたってことなら。おい!」

そう言って廊下にいたメンバーに声を掛けて予備の弦を持ってくるように言った。


「おい、瞬。俺がMCで時間を稼ぐからお前は早く準備をしろ。ウチのメンバーが悪かったな。お前、いい先生を持ったな」

少し羨ましそうに彼はそう言って翼たちにも軽く頭を下げて楽屋を出て行った。

「瞬君、良かったわね」

「あ、ああ...」

躊躇いがちに頷き、「ありがとう」と悠里に向かって小さく呟いた。

「じゃあ、会場にいるからわたし」

そう言って楽屋を出て行く。

も、すまなかった」

「は?」

は素でそう聞き返す。別に自分は何もしていない。悠里みたいに土下座をしたでもないし、ただ、目の前にいた別バンドのリーダーに弦を貸してくれと言っただけだ。何もしていない。

「あ..いや。なんでもない」

一がの頭を軽くはたいて一緒に楽屋を出た。

「痛いよ、一」

「ああいうときは、頷いてやれよ。あいつは嬉しかったんだろうからよ」

「そういうものですかー?」

男の友情というものはよく分からない。

その後、ヴィスコンティの演奏ではあまりにも乗りすぎた悠里が尻餅ついたが、涙目になりながらも応援し続けたその姿は、たちをいろんな意味で感動させた。









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桜風
08.9.12


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