Dear my friends 42





取り敢えず荷物を車から降ろして屋内に入る。

部屋割りをしたあと、居間に集合といわれて一旦解散した。

「どこに行っていたの?」

と悠里は当初の予定通りに同室だ。

「裏の井戸を見に。飲んでみましたけど、大丈夫そうなので夕飯のときに使ってみようかと思います」

「それは楽しみね」と言って悠里が服を着替える。

「でも、晴れてよかったですね。これで雨が降ったら目的の半分はなくなっていましたから」

ジャージに着替えたの言葉に悠里は頷いた。

「そうね。流星群の話知っていた..わよね。さんだもの」

その“さんだもの”というフレーズは気になったが、「新聞で見ました」とは返した。

「見られるといいわね」

「これだけ山の中だから見られるんじゃないんですか?ただ、山の天気は変わりやすいですからね...」

の言葉に「そうね」と悠里は同意した。


居間に向かうとB6が揃っていた。

「さ、補習しましょうね」

この日のために、悠里はの協力を得て問題プリントを全教科作っていた。

皆にプリントを配っていく。

今回の補習はがいつも行っている方式にしようと思ったのだ。

悠里方式、つまり講義があるんだと思っていた彼らは少し驚いた表情を浮かべた。

では、この時間は何をするのだろう。

そう思ったら、はなにやら本を読んでいる。

「Wait!何故はひとり優雅に本などを読んでいる!?」

翼が抗議をする。皆もを振り返って口々に抗議をした。

「別に、わたしも補習受けてもいいけど...」

「そうではなく。いつもどおりに2班に分けて..いや、今回は九影先生がいるから3班に分ければ...」

瞬の言葉に「いやにやる気だな...」とは感心した。

が、

「でも、わたしは途中で抜けるよ」

「何で!?」

「夕飯作らないと」

の言葉に皆は黙った。確かに、にここにきてもらった大きな目的はそれだ。

「あ、さん。夕飯は私も一緒に...」

「あーーー!いや、先生。オレ、先生の補習。もの凄く頑張りたい気分だ」

一がまずは止めに入る。

「そ、そうだよ!ゴロちゃん、センセの補習合宿ポペラ楽しみにして来たんだから。センセ、ご飯までみっちり補習してよ。で、今度お休み頂戴」

どさくさに紛れて休みを強請る悟郎が一に同意して悠里の夕飯作りを妨害しようと必死だ。

それに気づいたほかのメンバーもどうしても悠里の補習を受けたいというので彼女は何だか感動して気合を入れなおしていた。

知らぬは本人ばかりなり。

何となくそういう表現が頭に浮かんだが表情を変えずには彼らのやる気のみなぎる背中を見守った。


暫くしては席を立ち、キッチンに向かう。

「何か手伝うか?」

不意に声を掛けられてが振り返ると日本家屋は窮屈そうだなーと思ってしまう九影が立っていた。

「いいえ、大丈夫です。定番のカレーにする予定ですから。お鍋いっぱいに作って、ご飯を大量に炊いておけば大丈夫なものですからね」

の言葉に納得して九影はすぐ近くの椅子を引き寄せた。

「戻らなくても?」

「南が教えてるし、あいつらも熱心に聞いてるからな。俺は暇だよ」

九影の言葉になるほど、と納得した。

彼らの心は今ひとつになっているのだ。

悠里の作る食事は口にしたくない。

だから、いつもいたずらをして瞬を挑発している清春でさえ大人しく補習を受けているというのだろう。

いつもこうだったら先生も楽なんだろうな、とどこか他人事のように思いながらは手を動かす。

の親父さんは天文学者って聞いたが」

「らしいですね」

他人事のように応えるに九影は違和感を感じたが、それを深く追求しようとは思わなかった。

悠里にの父親の職業を聞いたときも彼女は表情を曇らせた。

それと何か関係があるのかもしれない。

自身は、地学は好きか?」

「得意ですけど、面白いかと聞かれたら頷けませんね。テストで必要だから学んでるだけです」

「それじゃあ、面白くないだろう」

九影の言葉には無言で振り返っただけで何も返さなかった。

「俺は、花が好きでな」

突然九影が言い始める。

は一度振り返ったが手を止めずに野菜を切り始めた。

それについては九影も何も言わない。

「だが、どうにも花に嫌われる体質らしいんだ。...高校3年くらいに、って人が書いた論文読んだことがある。ただの気まぐれに科学雑誌を買ってな。それに偶々載っていたんだ。面白かったぞ。それを読んで、理科の道を選んだって言っても過言じゃないな」

「それは、良かったですね」

は一言そう返しただけだった。

九影が高3ってことは約12年前か、とちょっと思ったが何年前でも同じだ。

は、天文に詳しいか」

「全く。空を見上げるのは心に余裕のある人がすることですよ。ましてや夜空って、都内では見難いことこの上ない」

確かにな、と九影も納得した。

「今日、夜は晴れるらしいからきっと満天の星空だ。少しは何か感じるかもしれないな」

「そうですね」とは適当に返しておいた。

星の何処がいいのか、にはさっぱり分からない。









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桜風
08.9.19


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