| 夕飯はの計算どおり捌けた。 何だか満足そうに微笑むを不気味にも思ったが、取り敢えず、カレーが美味しい。 「ちゃん。もう食べないの?」 「自分で作ると食欲が減るのよ」 はそう言った。 「じゃあ、明日の朝食は私が作るわ」 悠里の言葉に椅子を立ち上がるものも居たが、 「わたしに作らせてください。料理自体は好きなので」 とに言われて「そう?」と悠里は引き下がった。 夕飯を摂り終って少し休憩をして外に出た。 「うわぁ...」と悠里が声を漏らす。 九影が言ったとおり満天の星空だ。 「プラネタリウムより凄くないかしら?」 「プラネタリウムは星を選んで映していますからね。星座にならないものは結構省かれていますよ。じゃないと説明しにくいから」 が応えると「そっか」と悠里が返す。 「ねえ、流星群ってどっちかしら?」 目を輝かせて問う悠里には小さく溜息を吐いて空を見上げた。 「北の方角ですね。おうし座と、カシオペアの間です」 そう言いながら空を眺め、それぞれの星座を見つけて指差した。 「どれ?」 「おうし座はプレアデス星団..昴がある星座です。カシオペアは、学校で習ったことがあると思いますよ。北極星を見つけるのに使う星座ですから」 はそれを見つけられたが、悠里はまだ分からない。 ついでに、B6のメンバーも分からないという表情を浮かべている。 「ああ、流れた」 が呟くと皆が必死に空を見上げる。 「意外と早い時間から流れるんですね」 が九影に言うと「まあ、ピークはもっと遅い時間だろうがな」と九影は返した。 何だかんだ言って詳しいな、と感心していたのだ。 その後ろで「え、どこどこ!?」と悟郎が空をキョロキョロと見上げ、翼も躍起になっている。 暫く皆は飽きずに空を見上げていたが、随分冷えてきたため九影に促されて屋内に入っていった。 取り敢えず全員流れ星を目にして満足はしていたので文句は出なかった。 少し眠れない、と思って翼は屋外に出た。 翼も自然の中でこんな星空を眺めたことはない。 空を見上げて歩いていると何かにつまずいた。 「Ouch!」「痛い...」 声が重なる。 よくよく見てみると其処には人が寝転んでいた。 「死体か?」 「生きてます」 声から察するにのようだ。 「か?」 「正解」 「そんなところで寝転んでどうする。もしかして、寝相が悪すぎてここまでやってきたのか!?」 「其処まで面白いことは出来ない。立って見上げるよりも寝転んで見上げる方が姿勢が楽なの」 の言葉に「なるほど、」と納得した。 が、 「寒くないのか?」 は少し薄着だ。 「うん、少し寒い。まあ、大丈夫かなー」 の言葉に盛大に溜息を吐いて翼は自分の羽織っていたものをに投げて寄越す。 「それでもかけておけ」 「お、ジェントルマン」 そう言いながらは翼の言うとおりにそれを自分の体にかけた。 「当たり前だ。俺ほどのgentlemanはいないぞ。それに、が風邪でも引いたら明日の朝食は担任が作ることになるだろうが」 そう言って翼はの隣に座った。は「なるほど、」と笑った。 「ねえ、翼」 「何だ?」 「翼にとって、何を置いても大切なものってある?」 不意の問いかけに絶句してしまった翼だったが、気を取り直した。 「どういう意味だ?」 「例えば、瞬はヴィスコンティ。音楽が何を置いても大切でしょ?そういう存在」 そういうことかと納得した。 「出来る出来んは別として。モデルの仕事は、この先も続けたいとは思っている。まあ、俺の場合は真壁財閥の次期総帥としての人生が待っているから無理だがな」 「でもさ、あるんでしょ?そういうもの。きっと、ゴロちゃんはイラストだよね。一は..今は休憩してるけどサッカーかな?ハルはどうだろう。イタズラ?バスケ??瑞希は...わかんないなー」 突然何を言い出すのかと翼は静かにの言葉を聞き続けた。 「星空に馳せる想いって何だろうね」 ああ、そうか。 翼は今が考えている人物を詳しくは知らない。 だが、その存在は知っている。 「本人に聞けば分かるんじゃないか?」 「年中反抗期だから会話すらしたくないの。寧ろ会話が成立しそうにないんだよね」 彼女なりに理解しようとしたんだろう。だから、今もこうして星空を眺めながら翼に問いかけている。 「何かあったのか?」 「あの人には、誰かの人生を変える力があったらしい」 の言う“あの人”はきっと彼女の父親の事で、では、“人の人生を変えた”というのは何だろう。 「翼ぁー!見なかったか??先生が探してたんだけどよ」 別荘の窓から一の声が届いた。 「先生に何も言わずに出てきたのか?」 「...そういえばそうだね。戻らないと」 はそう言って体を起こして「ありがとう」と自分の体にかけていた翼の上着を返す。 「は、ないのか?」 「ない..かな?あったらみんなの補習の面倒は見てないと思う」 そうかも知れない、と思って翼は納得してしまった。 「だが、」 パンパンと背中を払っていたに翼が声を掛ける。 「お前も誰かの人生を変えているかもしれないぞ。お前が気づいていなかっただけで。人との係わり合いってのはそういうもんだろう?」 「それは、南先生が皆の人生を変えている今の状況のことですか?」 の言葉に翼は言葉に詰まり、「そんなもんだ」とそっけなく返した。 「翼って、結構照れ屋さんだよね」 「うるさい!」 の呟きに過剰に反応した翼の耳は真っ赤だった。 取り敢えず、街灯のない山奥だったからきっとには見えていない。それが今のところ幸いだ。 |
桜風
08.9.26
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