Dear my friends 52





ピザが届いてその後すぐに瞬もやってきた。

6人も7人も確かに変わらない。だって、もう既に家の中が狭い。

瞬は想像できていたのだろう、「大変だな」と声をかけてくる。

皆でピザを食べてそのまま何となくテレビを見ていると「」と瞬が声をかけてくる。

「んー?」

「あれは、何だ?」

出しっぱなしになっていたバイオリンケースを見て言った。

「バイオリン」

「弾けるのか?」

「お!そうだ。だから、。ちょこっとでいいから弾いてくれって」

「だから、近所迷惑...」

そういうと瞬が首を傾げる。

「上下と両隣は居ないだろう?電気がついていなかったぞ」

チッ、気づいたか...

このマンションは昔衣笠が貰ったものらしい。

だから、がこのマンションを借りることになったときに、衣笠がこの部屋を選んだ。

「勉強の邪魔になってはいけませんからね」と笑顔で言われ、以降彼がに気を遣ってこの部屋の両隣と上下に人は入れなかった。何度か、このマンションに入りたいといってきた人たちは居たらしいが断ったと聞く。

ついでに、造り的にはあまり新しくないが、防音だったりもする。

「じゃ、じゃあ大丈夫じゃん!ほら、弾いてくれって」

「ゴロちゃん、ポペラ聞きたーい!!」

「ほら、弾け。オレ様が聞いてやるぞ」

「へたくそでも我慢して1曲くらいなら聴いてやる」

何だか、本当に...

は溜息を吐いてバイオリンをケースから出す。

しかし、最近は彼らの補習に付き合っていたので弾いていないというのに...

「曲のリクエストは?弾けないものの方が多いけど...」

皆は顔を見合わせた。

クラシックなんてあまり聞かないし、タイトルなんて分からない。翼はクラシックを好んで聞くようだが、どれが簡単なものか分からないといった表情を浮かべている。

は何だかイタズラ心が湧いてきた。

「あ、じゃあ。適当に選曲するよ」といって構える。

彼らの耳にしたメロディは聞きなれたそれだった。

、それは...!」

夏以降何度かライブに行った。耳が意外と覚えている。

ヴィスコンティの曲を演奏してみた。

途中から記憶が曖昧になってくると瞬が歌い始める。

耳に音が入ると思い出す。

そのままが演奏をして瞬が歌うという即興ライブを演じる。


弾き終えて瞬と目が合い、そしては恭しく頭を下げる。

「お粗末さまでした」

「すげー!」と一はひたすら拍手を繰り返して褒め称える。

「習ってたのか?」

「ダンスと同じく本による独学」

の返答に瞬が目を丸くした。が、自分だって誰かに習ってベースを弾き始めたのではないと思い出す。

は何でも出来るんだな」

溜息交じりに瞬がいい

「そんなことないよ」

が返す。

「だよなァ?だって、こんなだもんなー」

そういいながらまた清春が隣室へのドアを開けた。

「だからー!」

が訴え、清春がその反応を楽しむ。


暫く年末恒例の歌番組を見ていると一人、また一人と眠り始める。

雑魚寝の予定だったし、別に構わない。

「では、さん。私はこれにて失礼します。明朝、また参ります」

翼が寝てしまったので永田は帰る事にした。

「ああ、お疲れ様です。というか、永田さんには年末年始のお休みはないんですか?」

玄関まで見送りに行くが言う。

「いいえ、必要ありませんから」

「そうですか」

「では、良いお年をお迎えください。と、言っても大変でしょうけど...」

の肩越しに部屋の中を一度見て苦笑した。

「...いいです。もう、本当に。ある程度慣れました」

の返答に微笑んで「では」と頭を下げて永田が帰っていった。



何となくテレビを見ていると除夜の鐘が鳴り始める。

そして日付が変わった。

瑞希はポン、との頭に手を載せた。

「今年もよろしく」

「トゲー!」

「...ん。瑞希、眠くないの?シャワー浴びたいならどうぞ。タオルが要るよね」

「ううん、大丈夫。何か、珍しく眠くない」

それは確かに珍しい。

「ん...?」

コタツにうつ伏せて寝ていた一が目を開ける。

「うわ、何?オレ、寝てた?」

「うん。まだ日付が変わったばっかだから寝てなよ」

が言うとガバッと起きる。

「変わったのか!?じゃあ、あけましておめでとうございます」

一は正座をして頭を下げた。

も慌てて床に座って頭を下げた。

「今年もよろしくな!」

「ガンガン補習してあげる!」

「...それはいい」

一は遠慮する、と手を上げた。

「腹減ったー...」

さっきこのメンバーの中で一番食べたのに、もうそれか。

は苦笑して「お蕎麦あるよ。年越しちゃったけど、食べる?」と聞く。

「お!食う!!」

「瑞希は?」

「......うん」

「じゃあ、待っててね」と言いながら立ち上がり、雑魚寝をしているクラスメイトたちを踏まないように慎重に足を進めてキッチンに向かった。









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桜風
08.10.17


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