Dear my friends 54





の家の近所の神社に行くとやはり人でごった返していた。

小さな神社なので、此処まで人が多いとは思ってなかった。

「あれ?センセだ!」

悟郎が知っている人物を見つけた。担任の南悠里だ。

「センセ!」

悟郎が悠里にハグをする。

「悟郎君!?って、皆...さん。大変ね」

的確なその一言にはしっかり頷いた。

「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。ところで、先生のお宅はここら辺だったんですか?」

正月お決まりの挨拶を口にしてから聞いてみた。

「え..ええ」

迷ったんだな...

この場に居た全員が納得した。

たぶん、自宅近くの神社にでも行こうと思っていたんだろう。だが、普段中々行く機会のない神社に行こうとしたら迷って此処まできてしまったという寸法だ。

たぶん、きっとそうだ。

「お正月早々センセに会えるなんて、ゴロちゃんポペララッキー!」

悠里に抱きついたまま悟郎がそういう。

「まあ、何はともあれ。皆で行くか?」

そう言って一が本殿のほうに目を向けた。

何か、気持ち悪い...

ぞわぞわと何かが蠢いているようだ。

「とりあえず、全員が固まってってのは無理だろうし。せめて二手に分かれて行動するか?」

一が言う。

「ゴロちゃん、センセと行く!センセと手を繋いで2人でこの障害を乗り越える!!」

「じゃあ、瑞希はわたしと行こうか」

が言うと瑞希は頷く。

「オレも一緒に行くぜー」と一が言ってきたが、「一はあっちに行ってあげて。先生が苦労すると思う」とに言われて振り返った。

悟郎と悠里が一緒にいるが、清春と瞬に翼もあちらにいる。

「あー...うん」

確かに、あれでは悠里が大変そうだ。

「けど、お前ら2人で大丈夫か?」

「子供じゃないんだし」

が笑いながら言う。

まあ、大丈夫か。が絡むと瑞希はしっかりするし。

色々と思い出して納得した一はそのまま悠里たちの方に向かった。


本殿の前まで着いた悠里たちは手を合わせる。

一生懸命手を合わせて眉間に皺を寄せている悠里に苦笑した。

きっと自分たちの大学の合格祈願でもしてくれたいるのだろう。

先日、12月の終わりに一は悠里に受験することを告げた。

そしたら、彼女はもの凄く喜んだ。

ああ、凄く心配掛けていたんだなと少しだけ反省をした。

しかし、にはまだ言っていない。

というか、彼女はもうB6全員が受験するものだと思っているようだ。

「おい、たちは大丈夫なのか?」

瞬が声をかけてきた。

一は振り返って「ああ、ちゃんとこっちに来てるみたいだから大丈夫だろ」と返した。

一に倣って瞬も振り返り「なるほど」と呟く。

瑞希の身長は日本人の平均を軽く超えている。だから、人ごみの中でも頭ひとつ出ているのだ。

も瑞希といるのだから瑞希の立っている位置がだ。

一たちは社務所の前に移動した。その旨はの携帯にメールしておいた。今は見れなくてもお参りが終われば見ることは出来るだろう。


鞄に入れている携帯が震えた。

どこかにいるという連絡かもしれない。

「瑞希、大丈夫?抜ける?やめる??」

「大丈夫」

そう言いながら繋いだの手をぎゅっと握った。

瑞希が人の体温を嫌いになった理由を知っているからは心配そうに何度も声をかけている。

「本当に、大丈夫だよ。がいるから、大丈夫」

亀よりも遅い歩みでやっと本殿の前にやってきた。

が財布からお金を出して賽銭を入れる。

「奮発だね」

意外と多いその額に瑞希が言う。

は笑いながら神社での参拝の手順をふみ、手を合わせる。

「皆が納得のいく卒業が出来ますように!」

声に出してそう言った。

「合格祈願じゃないんだ...」

楽しそうに瑞希が言う。

「それは、あと半月。頑張るから!わたしと先生が」

の言葉に「苦労するね」と瑞希が言う。

「先生が一番気の毒だよ。面倒ごとを押し付けるために中等部からの引抜でしょう?でも、この人選は褒めてあげないとね、ピッカリは」

「...そうだね」


人ごみから外れて鞄の中に仕舞っておいた携帯を取り出した。瑞希のコートの中に隠れていたトゲーも一度顔を出したが、外気が冷たかったらしくまた瑞希のコートの中に引っ込んだ。

「誰から?」

「B6のママから」

の返答に噴出して彼女が確認し終わるのを待った。

社務所の前にいるという連絡だったため、そちらに足を向けようとしたが、「ちょっと、待ってて」と言ってはどこかに電話を掛け始めた。

そばにいる瑞希にはその会話が聞こえ、思わず彼の頬が緩む。

彼女が電話をしている相手は、自分の知っている彼女の母親だった。

夏には一と翼が勝手に会いに行ってそのことで彼女と一が喧嘩をした。それだけ彼女と母親の間に溝があるんだと思っていた。

だが、彼女から電話をするということはきっとその溝が浅くなってきているのか、それとも、溝は溝としてと考えて割り切っているのだろうか。

どちらにせよ、いいことだと思う。

彼女は変わろうとしている。

では、自分は...?

「瑞希?」

「あ、うん。終わった?おばさん、元気だった?」

「うん、相変わらずだわ。今は白鳥を見に行ってるんだって。アザラシと悩んだらしいけど、とりあえず近場からだって」

「一が喜びそうな話題だね」

そんな会話をしながら社務所に向かうと参拝に来た女性陣の視線を一身に受けている集団がいた。

「相変わらず、何処にいても目立つね」

「翼がその言葉を聞いたら喜ぶよ」

「うるさくなりそうだから、言わない」

の言葉に瑞希は笑う。

「おー。、瑞希。お前らもおみじくひいたらどうだ?」

ああ、引いたことないな。

初めて引くおみくじに少しドキドキしながらは巫女さんに渡されたそれを開いた。

ひょい、と覗き込んだ翼が絶句した。

「ま、まあ。こういうときもあるだろう」

「んー?あ...」

翼の反応を見て一も覗き込んだ。おみくじには“大凶”とある。

「凄い!大凶引いたよ!!」

対しては嬉しそうだ。

「あのさ、ちゃん。大凶の意味、知ってる??」

悟郎が言いにくそうに言う。

「うん、一番悪いんでしょ?だから、神社も入れる数を少なくしてるって聞いたことあるの。つまり、大吉を引くよりも確率が低いのよ?運が良くないと引けないって!!」

本人が喜んでいるのだから良いか...

そして、おみくじを読みすすめてがポツリと呟く。

「いいことひとつも書いてない」

「当たり前だ!大凶だろうが」と瞬が思わず突っ込み、「お前、意外とバカだよなァ?」と清春に馬鹿にされた。

うん、大凶らしい新年の始まりだ。









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桜風
08.10.17


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