| 受験がとりあえず無事に終わり、高校生活も残すところあとわずかとなった。 「、帰ろうぜ」 そう声をかけてきたのは一だった。 別に誰と一緒に変えると約束をしてなかったから「いいよ」と返す。 校舎内を歩いていると、サッカー部に呼び止められた。勿論、元キャプテンの岡崎も居る。 卒業前にちゃんとケジメをつけろといってくる。つまり、一が怪我をさせたとされる武本に謝れ、と。 それは冤罪で、一は後輩を傷つけたなんて事実はない。 だが、今の聖帝ではそれが真実となっている。 が心配そうに一を見上げる。 それを受けて一は笑顔を浮かべての頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 「そうだな。あいつに」 そう言いかけたが、「違うんです!」と武本が声を上げた。 「草薙先輩じゃ、ないんです」 「武本、よせって」 一が止める。 一はもう犯人と動機を知っているし、どういう経緯で武本が怪我をしたかも知っている。 だから、もういいのだ。 しかし、一の制止を聞かずに武本が全てを告白した。 「おい、本当か岡崎!!」 3年の元サッカー部が詰め寄る。 「おい、もう良いって」 一が止めたが聞かず、彼らは岡崎を糾弾し、そして、一に謝罪をした。 「いいって、本当にもう。てか、オレ、もう帰るわ」 そう言っての手を引いて一は彼らに背を向けた。 「いいの?」 「別に、勇次に謝れってオレは思ってないから。まあ、武本には謝った方がいいと思うけどな」 困ったような表情を浮かべて一が言う。 「おっきなひとですねぇ」 「おう」 の感想に嬉しそうに破顔した。 「しかし、こうやってと帰るのってもうないのかもなー。って、お前進路どうしたんだよ」 結局受験日まで教えてくれなかった。 「だから、ヒミツだってば」 笑いながら返すに一は違和感を覚える。 この話題を振る度に彼女は寂しそうな表情を浮かべて笑う。 「何か、隠してんだろう?」 「秘密を持たない乙女はいませんわ」 「誰が、オトメだ」 笑いながら一がそう言ってを小突いた。 不意に一の携帯が鳴る。 メールのようで文章に目を通している。 「ったく、あいつら」 「B6?」 「んにゃ、サッカー部。ちゃんと謝りたいって言ってきてる」 「おー、そのまっすぐさ。見事な体育会系ですねぇ」 のその感想に「何だよ、それ」と言いながら一が笑う。 「まあ、一にとってどうでもいいことでも。きっと彼らにとってはどうでも良くないことだったんだよね。付き合ってあげたら?」 「でも、下手をしたら勇次を吊るし上げるんだろ?やだよ」 笑いながら一が言う。 本当にすっきりした、吹っ切れたような笑顔でも嬉しくて笑った。 突然ドン、と大きな衝撃が来た。 あれ... そう思ったときには車道に飛び出しており、そこに車が走ってきている。 あれ...? 同じことをもう一度思った。 あら、意外と人生の幕引きってあっさりしてるのね... 「!!」 急な浮遊感を感じたかと思うと鈍い音が聞こえた。 顔を上げると「大丈夫か?」と一が顔をゆがめながらも笑顔を浮かべて言う。 「ハジメちゃん!?」 「お、お前が悪いんだ!お前が来てから、ハジメ先輩は変わったんだ。お前が転校してこなかったらハジメ先輩は僕だけの先輩だったんだ!!」 そう叫んでいるのは坂下だ。 一瞬、は彼を見たが、それでも顔をゆがめたままの一に視線を戻す。 「ハジメちゃん!しっかりして、ハジメちゃん!!」 「おい、どうしたんだよ!!」 そう声をかけてきたのは真田だった。 坂下は慌ててその場から逃げていく。 「はい、子猿はあいつを追いかけろ〜」 「誰が子猿だよ!」 そう言いながら真田は坂下を追いかけて行った。 「草薙なら大丈夫だ。だから、揺するなよ。脳震盪を起こしてるかもしれないだろう?」 の肩にポンと手を置いてそう言ったのは葛城だった。 「葛城、先生...ハジメちゃんが」 「うんうん。大丈夫だ。だから、泣かなくていいぞ」 そう言いながらハンカチをに渡す。 「救急車はすぐに来るからな。草薙はそっとしておくんだ」 立ち上がって歩道に投げているたちの鞄を取ってきた。 遠くから救急車のサイレンが聞こえてくる。 は立ち上がって音のするほうを見た。 「葛城さん、こいつ捕まえてきたよ」 「ああ、学校に連れて行け。あと、まだ子猫ちゃんが残ってるはずだから子猫ちゃんにこのことを教えておけ。病院が分かったら学校のほうに連絡をするからな。いいな」 そう言って救急隊の対応を始めた。 「葛城先生、わたしも一緒に行きたいです!」 の言葉に一瞬考えた様子だったが 「んー...ま、いいんじゃないか?帰れって言っても聞きそうにないしなぁ」 と言って頷いた。 「ありがとうございます」 は素直に頭を下げた。 「大丈夫だ、草薙だぞー?」 まだ心配そうな表情を浮かべているのほっぺを軽く引っ張って葛城がそう言った。 は無言で頷いた。 |
桜風
08.11.21
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