Dear my friends 68





とうとう明日が卒業式となった。

受験が終わってからも何故か毎日バカサイユに顔を出していた自分に多少なりとも驚いたが、それだけ居心地が良い空間だったんだろうなと納得する。

職員室に向かった。

「衣笠先生はいらっしゃいますか?」

「キヌさんならちょっと出てくるって言ってたぞ。何か預かりものなら預かっておくが?」

手近なところに居た九影に聞くとそういわれた。

「いつ頃お戻りになるかご存知ですか?」

「10分位したら戻ってくるんじゃないのか?」

その言葉を聞いて「また後で来ます」と言って職員室を後にした。


「おや、さん」

取り敢えず教室で時間を潰そうと思っていたら声を掛けられて振り返ると衣笠が居た。

「あ、先生。丁度良かった」と言いながらは駆け寄る。

「1年間、公私共にお世話になりました」

そう言って深く頭を下げる。

「いえいえ。全く手の掛からなかった生徒で少し物足りませんでしたよ。勿論、元姪としても少し良い子過ぎましたね。悠里先生とB6の皆さんの面倒も見てくれましたし。お礼を言うのは僕たち教師のほうですよ」

は照れくさそうに首を竦めた。

「それで。何か用事があって僕を探していたんでしょう?さっき、『丁度良かった』って言いましたよね?」

衣笠に促されて思い出す。

「これを、お願いしたいんですけど」

そう言って差し出したのは封筒だった。

「明日の卒業式が終わったらB6の皆はバカサイユに集まると思うんですよね。だから、卒業式の後のHRが終わってから30分位して彼らにこれを渡してください。HRが終わったってのは南先生が職員室に戻られると思うのでそれで分かると思うんですけど...」

受け取りながら衣笠は複雑そうな表情を浮かべた。

「...皆に、言わずに発つつもりですか?」

「わたし、小学校のときから友達居なかったんです。学校の友達なんて草薙君くらいでした。それ以降も友達が居なくて。友達とのお別れってどうすれば良いのか分からないんです」

「そうですか。取り敢えず、これは預かりましょう。元叔父としてちゃんと彼らに渡します。ところで、明日は何時のフライトですか?」

聞かれては答えた。

確かに、HRが終わってもきっと悠里は別れを惜しんで沢山の生徒と言葉を交わすだろう。

その時間を計算してその30分後となればは空の上だ。そこまでいかなくても、きっと間に合わない時間となるだろう。

「では、失礼します」

そう言っては校舎の出口へと足を向ける。

「全く、あなたと言う人は...不器用ですね」



卒業式当日、はいつもよりも遅く学校に来た。

「おいおい、何で卒業式の日に限ってチャイムギリギリで来るんだよ」

松葉杖をついた一が苦笑しながら声をかけてきた。

「おはよ」と笑顔では返した。

「ポペラ!ちゃん、もう遅いよ〜!!ゴロちゃん、ちゃんと沢山お話がしたくていつもよりも早く来たのに〜!」悟郎がそう言いながら抱きつき、「何だ、寝坊か?」と呆れながら瞬が声をかけてくる。

「What!?卒業式の日に寝坊だと!!どういう神経をしているんだ、お前は」

「だな。スゲー、神経図太いんじゃねェの?ったく、ヘチャはよ」

「......心配した」

「トゲー!」

気がつけばB6の皆に囲まれていた。

当たり前に此処が居場所だと彼らが言っている気がして、凄くうれしくもあり、心から寂しいと思ってしまう。

「ちょっとね、寄るところがあって」

困ったように笑うに彼らも「別に責めているわけではない」などと言って先ほどの自分たちの言葉にフォローを入れている。

クラスメイトたちもに声をかけてきた。

不思議に思って受け答えていたが、彼らは一様に彼女に礼を言う。

別に何か特別なことをしたわけではなく、にとっては出来ることをしていただけだった。

「...ねえ。ちゃん、何か変だよね?」

悟郎が呟いた。

「あー、やっぱりお前もそう思う?」

「ありゃ。オレ様たちに何か隠してるぞ」

一が同意し、清春さえも同じように思っていた。

「でも、って頑固だから聞いても言わないと思う。頭もいいから話をはぐらかすのも得意」

瑞希がそう言った。

「瑞希でもか?」

「僕は話すのがあまり得意じゃないから。にはぐらかされると思う...」

「まあ、卒業式が終わったらもバカサイユに来るだろう。担任も来るだろうから、揃ったときに」

そう言って翼がみなの顔をぐるりと見渡した。

彼らはニッと笑って頷く。

早く知らせたい気持ちがあるが、彼女たちを驚かせたいという気持ちの方が上回っている。

そして、今までの人生で最も誇らしく感慨深い卒業式が始まった。









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桜風
08.12.5


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