| とても目立つ団体が聖帝学園の正門前に立っていた。 「ハーハッハッハッハ!今日は温泉日和だな」 高笑いが周囲に響く。 「ねえねえ、ちゃんまだかな?」 キョロキョロと周囲を見渡しながら悟郎がつぶやく。 「なぁんだよ、全く。あの人、おれを待たせていい度胸だよね」 「那智!」 弟の呟きを慧が窘める。 「まァ、確かに何でアイツがこんなに遅ェんだよ。あいつはブチャとケチャの次に近所に住んでんダロ?」 それなのに、最も遅いとはどういったことか、といいたいらしい。 みなもそれが疑問だった。 「ああ、だっては北海道に住んでるからな」 「は!?」 一の言葉に多くが驚きの声を上げた。 「そうだったの...だから、買い物に誘っても中々いい返事をもらえなかったのね」 悠里は納得したようにそう呟いた。 「本当か、永田!」 翼の言葉に永田は頷き、「はい、翼様。お母様と同居しておいでです」と返事をする。 「...飛行機が飛んでない、とか」 「そういえば、ここ数日の北海道は記録的な豪雪だって言ってたな...」 千聖が呟く。 「えー!じゃあじゃあ、もうサン置いていこうよ!大丈夫!サンだってもう大人だよ?お迎えとかなくても一人でこられるよ!ボクせっかく頑張ってお休みを貰ったんだから、早く温泉行きたい!!」 「そうだよね。早くティンカーちゃんの浴衣姿を拝みたいよね」 八雲とアラタのそんな会話を「甘い!」と遮ったのは瞬だった。 「のことだ。置いていかれたと気がつけば『面倒だから帰るねー』というメール1本で本当に帰るぞ」 その言葉にB6は勿論、悠里も頷く。 そう..かも。 昨年1年だけだが、彼女と交流を持っていた残りのメンバーもそんな気がしてきた。 「それに、今回......先生は一人じゃないから.........」 瑞希がダメ押しに、と今の状況を指摘きた。 悠里一人だったら気の毒だから、と面倒くさくても来そうなものだが、今回は真奈美も一緒だからそんな気を遣うことはまずないだろう。 「...つか、ナギに会いたいとか言って意地でも来るとかねェのかよ」 心持ち小さな声で清春が突っ込むが、 「あー、のマイペースは相変わらずだから。なんか、にゃんこみたいだと思わないか?いいよなー、にゃんこ」 と満面の笑みでそんな言葉が返ってきた。 「オメェがそれでいいなら、いいけどよ」 そこはちょっとくらい思い悩むところじゃないのだろうか... そう思ったが、本人が幸せそうだからとりあえず放っておくことにした。 仕方なく皆が待っているとがやってきた。 「あれ?待ってる」 そう呟いて駆け出す。だが、同時に駆け出した人物が居た。 「さん!」 ガシッと彼女を抱きしめたのは悠里だ。 「どうも、お久しぶりです。先生」 ケホッと少し咽ながらが挨拶をする。 「元気そうで安心したわ。北海道での生活はどう?」 「まあ、家事全般わたしがするという全く自活していたときと変わらない生活なので特に変化はないですね。同居人がうるさいくらいですか...」 の言葉に悠里は嬉しそうに微笑んだ。 その笑顔の意味をちゃんと受け取ったは少しだけバツが悪そうに視線をそらす。 「さん!新刊読みました!!」 「...あー、はい。どうもありがとう」 「面白かったです」 真奈美と慧までもがやってくる。 ここで会話をするよりも正門まで辿り着く方が先なのではないだろうか。 ほら、そろそろ翼が短気を起こすし、清春だって退屈そうだ。 「えーと、とりあえず。大遅刻をしたことを皆にごめんなさいしたいので正門まで足を運んでもいいでしょうか?」 の言葉に、彼女を囲っている3人が「あ」と声をそろえた。 そして正門に視線を向ける。 今にも怒鳴りそうな翼、退屈極まりないといった表情の清春と那智。 「そ、そうね。早く移動した方がいいかもしれないわ」 悠里の言葉に2人はコクリと頷いた。 「お待たせしました」 正門までやっと辿り着いたが皆に向かってぺこりと頭下げる。 「飛行機、飛ばなかったの?」 悟郎がの顔を覗き込みながら言った。 「うん」と頷くはやはり少し疲れた表情をしている。 「ごめんね、みんな忙しいのに待たせて」 「全くだよ!」と言ったのは那智で、「つうか、連絡よこせ」と言った清春に皆は意外そうな表情を向けた。聞き方によっては思いやりがあるというか...心配したじゃないかという感じに聞こえなくも無い。 「清春君!」 悠里が感動し、清春に駆け寄るその手をが引いた。あと一歩踏み出していたらあの落とし穴の餌食になるところだった。 片足だけ落ちかけたが、が腕を引くのが早かったため、全く被害を受けなかったといっても過言ではない。 チッと舌打ちする清春に「ごめんね、落とし穴を完成させられるだけ長い時間待ってくれてたんだね」とわざとらしく感動したようにが言う。 清春は忌々しげに再び舌打ちをした。 「、久しぶり.........」 「あ、瑞希。久し..」 瑞希がいつもの如くに抱きつきながら挨拶をし、それを解く様子も無くは返事をしようとしていたが、視界が変わって思わず声が止まる。 「瑞希は、ダメだ」 少し下の方で聞こえる声は一のもので、ひょいとを抱えあげたのだ。 「久しぶり、一」 「おう、久しぶり。元気そうだな」 本当に久しぶりな2人はそんな挨拶を済ませる。 拗ねる瑞希を「まあまあ」と悟郎が宥め、「まだまだチャンスはあるよ」と唆す。 「......そう、だね」 にやりと微妙に邪悪な笑顔を浮かべて瑞希は呟き、悟郎も似たような笑顔を浮かべて頷いた。 「お前ら、いい加減諦めたらどうだ」 呆れたように瞬が言うが、2人は聞く耳を持っていないらしく返事をしない。 瞬はため息をつき、「頑張れ、草薙」と呟いた。 どこまで行ってもに危害を加えるはずが無いあの2人は一に対してならたぶん容赦は無い。 この温泉旅行の間に人為的な不幸に見舞われることが決定している一は、とりあえず今は久しぶりに再会した恋人に向かって締りのない極上の笑みを浮かべていた。 |
桜風
10.7.16
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