どきどき湯煙何たら旅行 3






移動には真壁財閥所有の大型バスによることとなっている。

「空路になると思ってたけど...」

がつぶやいた。

「ハーッハッハッハ!何だ、。相変わらず物を知らないな。温泉旅行といえば、バス移動と相場が決まっている!!」

得意げに翼が言う。

まあ、大抵の温泉旅行はバスでの移動となることが多い。だって、空路を確保なんて普通は出来ないことで、大勢での移動になるんだから大型バスによるものが一番妥当だろう。

「へーそうなんだー。さすが翼だね、ものしりー」

棒読みでそういうに翼は得意になり高笑いをする。

「...翼のいいところってあの素直なところだよね」

のつぶやきに「まあなぁ...」と一は苦笑しながら同意した。


は後方に座り、その隣には一と悠里が座る。

隙あらば隣に座ろうとしていた悟郎と瑞希は仕方なく近くに座った。

と、言っても真壁財閥所有の大型バスだ。普通のバスであるはずが無い。

中の造りはリムジンという相変わらずの豪華さだ。

「ねえねえ、さん」

ちょいちょいと袖を引きながら悠里が声をかけてきた。

「はい?」

「...一君と付き合い始めたって聞いたんだけど..ホント?」

「そう見えます?」

「うーん」と悠里は少し悩んで頷いた。

は目を軽く見開く。

「そう、なんですか?」

「そうね。うん、ちょっと違うもの。一君は勿論だけど、さんも少し雰囲気がやわらかくなったって言うか。『女の子』って感じかしら?」

と、いうことは。今まで性別不祥だったのだろうか...

がそんなことで悩んでいると悠里が笑う。

「うん、さんってずいぶん柔らかい表情になったのよね。女に磨きがかかったって言うか」

「...これを言うとゴロちゃんに怒られるとは思うんですけど。特にこれといって何もしてないですよ。手入れとか」

それは、悟郎は怒るが一が少しがっかりするのではなかろうか...

そんな感想はひとまず胸に仕舞って悠里はニコニコと笑っている。

「あ、でも。今度お赤飯炊きましょうね」

悠里が妙案を思いついたという感じで言ったものだからはぽかんとし、その隣の一が噴出した。

「聞いてたの?」

「悪い、聞こえてた。聞かないほうがいいかなーって思ったんだけどな」

クツクツと笑いながら一が言う。

は肩を竦めて「いいです。もう大人なので」と悠里に断った。

赤飯というよりもきっと黒飯だ。

「...そう?」

首を傾げて腑に落ちないといった表情の悠里に「お気持ちだけ」と念を押してこの話を終わらせた。

「そういえば、さん」

少し離れたところに座った真奈美が声をかけてくる。

「なに?」

「さっき、話の途中でしたけど。新刊読みました。面白かったです!!」

思わず立ち上がって熱弁をふるい始める真奈美を「おい、コラ。危ないぞ」と千聖が宥めて座らせた。

一流のドライバーの運転とはいえ、一応そろそろ山道に差し掛かっている。立ち上がるのは危険だ。

「ありがとう」とが返し、「しかし、本当に青春群像を主題とした話を書かれたんですね」と慧も話に入る。

は苦笑して「まあねぇ」と頷いた。

元々周囲の認識としては、あの『青春群像を主題とした話』というのは聖帝学園への立入りの許可を貰うために方便だと思っていたようだ。

「出版社にもそういう話をして時間を貰っていたから出さないわけにはいかなかったって言うか...取材するだけして書けませんはいえないのよね」

の言葉になるほど、と真奈美と慧が頷く。

「そういえば、前作シリーズの映画化の話を聞いたが...意外と進んでいないらしいな」

翼が入ってくる。

「ああ、あれ。去年はわたしが忙しいから今度にしてって話したの」

「What!?良くそれが通ったな...」

感心したような、呆れたような表情で翼がつぶやく。

「ものっすごく怒られたけどね。話が来ているうちに進めないと、来年にはどうなるか分からないんだぞって。でも、本当に去年は忙しかったから無理だったし。要するに、本が売れ続けてたら話も流れないと思ってたから。何とかできるかなって。それを言ったらまためちゃくちゃ怒られたけど」

肩を竦めて言うに、相変わらずだ、とB6の皆は苦笑した。










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桜風
10.7.23


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