| 夕食まで時間が空いているから温泉につかっていたのに、何故か悟郎により招集がかかった。 それについてブツブツと文句を言っていたものは少なくない。 「パンパカパーン!これより、第1回露天風呂混浴権争奪戦を行います!!」 「What?!悟郎。一体何のことだ?」 翼が眉間に皺を寄せて聞き返す。 もついでに眉間に皺を寄せてみた。 「ちゃん、眉間に皺を寄せたらそのまま皺になるよ。美容に良くないよ!!」 悟郎に窘められた。 ちなみに、招集されたのは男性陣のみだ。さすがに女風呂に招集を掛けることはできなかった。 そこらへんの常識はちゃんとある。ついでにいえば、が拒否したので呼びにいける人が居なかったというところなのだが... そんな瑣末なことはどうでもいいといった感じに悟郎がこんなことを宣言した。 「ルールは簡単です。まず、くじで対戦相手を決めます。あとは、トーナメント方式で優勝者はなんと!好きな人と混浴できるっていう寸法です。競技は温泉と言ったら、これ!ピンポンで。どう?」 悟郎のこの提案にはとりあえず手を上げてみた。 「異議有り!」 「異議のある人ー」 ここに居る!! は垂直に手を上げた。こんなに綺麗に挙手をすることなんてない。こういう時以外は。 「じゃ、みんな賛成ってコトで」 ちなみに、一は早々に猿轡を掛けられて縄で縛ってある。エントリー権はあるが、発言権は取り上げられた。 「ねえ、ゴロちゃん」 「なに、ちゃん」 「1年間、公民の講師をしたよね?」 「うん。ショウちゃん直伝の公民」 「民主主義って」 「はいはい。じゃあ、くじとトーナメントつくろうね。皆賛成だね!!」 とりあえず、民主主義の意味は分かっていたんだな... は嘆息吐いて、猿轡を掛けられている一にそそっと寄った。 「勝つように」といいながら一の猿轡としての機能を備えているフェイスタオルを解く。 「オレ、サッカー以外はあんまり自信が...」 「勝つように!」 「...はい」 しょぼんとなった一の体を縛っているロープも解いた。 「って、!なんでそれを簡単に解けるんだよ!!」 縄で一をふんじばったのは清春だ。色々と解きにくい縄の縛り方を知っているし、自分でもオリジナルなものを開発していそうだ。 「へ?あー...解けたね。あ、でも簡単じゃなかったよ?」 笑顔でが言うと悔しそうにしている。 早速卓球大会が始まった。 元々運動神経の良い者が多いこのメンバーでの試合は白熱し、『ピンポン』とはいわずにやっぱりここは『卓球』と表現するのが正しいと思う。カットとかバックスピンとか色々な技を駆使している。 他人事のように試合を観戦していたがふと目に入った人物に驚いた。 「...永田さんも参加ですか?」 「はい。久しぶりに、ピンポンがしたくなりまして」 ...超本気だ。この人、大人気なく本気を出す。 はそれを確信しつつも「意外ですねー」と返した。 「あら?何かしら?」 ちょうど温泉めぐりに満足して戻ってきた悠里と真奈美が不思議そうに白熱する試合を展開している教え子たちの姿に足を止める。 「さん、これって...」 「ゴロちゃん曰く。『第1回露天風呂混浴権争奪戦』だそうです。優勝者は好きな人と混浴できるそうですよー」 「...へ?!」 「は?!」 悠里も真奈美も同じように目を丸くした。 「ねー!これ、ご飯の時間までに終わるの?!」 が声を上げる。 「終わらなかったらご飯の後も続きをすればいいよ」 悟郎が返す。 「だ、そうです」 悠里と真奈美に視線を向けてが言う。 「さん」と悠里が声を掛ける。 「わたしたちに拒否権はなかったみたいです」 の言葉にすぐに諦めた悠里に対して「え?混浴って...ええ??!」と真奈美は混乱している。 ああ、可愛そうに... は心の中で真奈美に向かって合掌を送っておいた。 |
桜風
10.8.13
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