どきどき湯煙何たら旅行 7





トーナメントも準々決勝まで進んだ。

まあ、想像通り運動神経が特に良いメンバーが残った。翼・一・清春・天十郎・アラタ・那智・慧・永田の8名だ。

大人気なく永田が残っていることには苦笑した。

「あー、良い汗掻いた」と悟郎は腰に手を当ててコーヒー牛乳を飲んでいる。

なんか、混浴とかどうでも良くなったらしくみんな楽しそうだ。

このまま景品のことを忘れてスポーツマンシップに則って楽しく試合してもらいたいものだ。

「ねえ、とりあえずそろそろご飯の時間だからご飯の後にしたら?」

時計を見ると良い時間だ。

ここで試合を止めてインターバルが入ってもちょうど良い感じなのでが声を掛けると悟郎も頷く。

「じゃあ、そうしようか」



大広間に移動すると既にお膳が並べてある。

「うわぁ...ご飯を作らなくても良いなんて」

が声を漏らした。

いつもご飯を作っている。作ること自体は特に苦ではない。苦ではないのだが、あの母親の味覚がおかしいため、自分の作った食事について「イマイチ」とか言われるときがある。あれはちょっとムカつく。

こんな風に何もしなくても良い日があるのは贅沢なことだ。

そんなことを思いながら適当に座った。

右隣には瑞希、左隣には悟郎がちゃっかりと座る。

一は「まあ、こうなると思ったよ」と苦笑して空いているところに座った。

「ゴロちゃん、って球技得意じゃなかったよね?」

翼の挨拶と乾杯の音頭が終わって食事をしながらが問う。

「うん。球技といわずに基本的に体育は苦手だったよ?」と悟郎は頷いた。

「何でピンポン大会?」

「んー、まあ。ピンポンだったらいけるかなーって思ったのがひとつ。あとは、まあ。可愛い後輩たちに夢を見せてあげようと思って」

そう言って悟郎はウィンクをした。

「僕、疲れた...」

瑞希の言葉に、だろうなぁ...とは同意した

すでにうつらうつらしている。

「ト、トゲー!!」

トゲーが何かを訴えている。

「え、トゲー?何??瑞希、起きてる?」

「トゲーも参加したかった。種目、間違っている...って」

「あ、そっか。トゲーも参加したかったよね。ごめんちゃい」

ペロッと舌を出して悟郎が言う。

「で?ちゃんは誰が勝つと思う?」

「順当に考えて..永田さんかアラタ君じゃないかな?」

炊き込みご飯がこれまた絶品。

は満足しながら箸を動かしている。

「永田さんはまあ、うん。あの人は何でもできるからね。けど、ミネミネ?」

「卓球は英語で?」

が悟郎に答えを促す。

「えーと、たしか。『table tennis』。ああ、そうか。でもやっぱり勝手は違うんじゃないかな?だって、コートが狭いもん」

「まあ、ね。けど、手足が長いから相手が卓球台の隅を狙って返してきてもアラタ君は反応できるんじゃないかな?」

「...ね、ハジメは?」

恋人を贔屓するということはないのだろうか。

悟郎が窺うようにを覗き込む。

「まあ、現実的な話をしたらその2人でしょ?けど、期待はしてますよ。一は毎回周囲の期待に応えるプレイをしているから。ただ、まあ。畑違いは否めないってところかな?」

「...冷静だね」

悟郎が感心したように唸る。

「まあ、クセみたいなものです」

は苦笑して返した。物事を冷静に見極めて...そして大人を騙してきたのだ。自分が生活しやすいように。

イヤな子供だったなぁ、と過去の自分に少し嫌気がさした。

不意に頭に自分以外の体温がある。誰かが手を載せたようだ。

見上げると一だった。

「飲むか?」

ニッと笑った一はビール瓶を持っている。

「ビールはあんまり好きじゃない」

「んじゃ。ポン酒かー...ちょっと探してくる。熱燗でいいか?」

「その方が良い。一は?」

「オレは、今は自重中。勝たないと怒られるからな」

笑いながら一はそう言って熱燗がないか探しに行った。

「...やっぱり、一」

は悟郎に真顔で返した。

一瞬何のことか分からなかったが、が何に対して答えを訂正したのか気づいて苦笑した。

「かもね」

少しだけ悔しそうに悟郎は頷いた。









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桜風
10.8.20


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