| 試合の結果はやはり当初の予想通りに永田が優勝だった。 「それで、永田は誰と露天風呂に入りたいんだ?」 ぶすくれて翼が言う。 翼は準決勝敗退だった。 決勝はなんと、一が永田に挑戦したという形になる。 手に汗握る接戦を制したのは永田で、一は負けたときに崩れ落ちた。物凄く悔しそうだった。 しかし、一方で永田は誠に大人気ない。 「大人気ないですよ」 が笑いながら言うと 「たまには、私も本気を出してみたくなるものでございます」 と少しいたずらっぽく返された。 「翼様。私は試合に参加したかっただけでございます。なので、優勝者としての特典は辞退させていただきます。繰り下げでも、特典なしでも構いません。では、仕事がありますので失礼させていただきます」 翼に向かって恭しく礼をしてその場を去る。 「あー、じゃあ。繰り下げでいいぞ。よかったな、一」 全くやる気のない声で翼が采配する。 一の瞳が輝いた。 尻尾が垂れてしゅんとなっていたわんこが、千切れんばかりに尻尾を振っている。 「!」 「でも、準優勝だからねぇ」 が真顔で返した。 耳と尻尾がしゅんと垂れる。 「それに、湯船につかるのあんまり好きじゃないってさっき言ってたし。わたしもあまり長い間お湯に浸かるの苦手だし」 「おい、コラ!!ちょっとこっち来い!いいから、来いって!!」 小声で清春がを呼ぶ。きょとんとしては振り返った。そんな彼女にお構いなく清春はぶんぶんと手招きをしている。 首を傾げながらは清春の元へと向かった。 「お前はオニか!ナギのヤロー、かんっぺき落ち込んでんだろーが!もっと優しい言葉を掛けてやれ!!」 「へ?あ、うん」 まさか清春に説教される日が来るとは... 「そうだぞ、。仙道と同意見と言うのは心からいやだが、それ以上に草薙が可愛そうだ。ほら、見てみろ。耳と尻尾が垂れてるじゃないか!」 あ。皆にも見えるんだ。 「ちゃん。ゴロちゃんもちょっと何ていうか...ハジメにちょお〜っと同情しちゃう」 「う、うん...」 「。一は、お前のためにあの永田との決勝戦を迎えたんだぞ?それであれというのは酷すぎる。いいから、ほら。行け」 皆に説教された。ちなみに、瑞希は既に部屋で寝ているらしい。 は目をぱちくりとしてよろよろと一の元へ戻ってみる。 膝を抱えて落ち込んでいる一の頭を撫でてみた。 「えー、と。けど、たくさん頑張って、約束を守ろうとしてくれてありがとう」 あ、耳復活。 「えーと、えーと」と言葉に詰まった。 助けを求めるかのように振り返ると皆が固唾を呑んで見守っている。 「あーと..」と言葉を捜していると悠里が真奈美に抱きついた。 つまり... は膝をついてそっと一に抱きつく。 「ありがとう」 はい、尻尾も復活。 満面の笑みで一は「おう!」と返し「次は永田さんにも負けないからな!」と宣言する。 ちょっと、暑苦しい... 彼の妹たちの気持ちを軽く味わいながらは頷く。 「一君、良かったわね」 心から安堵したように悠里が教え子の復活を喜んだ。目にうっすら涙すら浮かべている。 「草薙先生、可愛いです!」 「そうだねー。でも、ここはテレながら草薙先生に遠慮がちに抱きついたサンのポイントも高いよー。これは、男ならきゅんとくるね」 アラタも苦笑してあの2人の様子を見守っている。 何せ、草薙一は自分を負かした男なのだ。あれはかなりショックだった。 「まったく。結局いちばんおいしい思いをしたのはハジメかー」 つまんないのー、と悟郎がその場を去っていった。 やっぱり種目を間違えたなーと呟いて部屋に帰っていった。 ゴロちゃん、まだ諦めないんだから!! ピンポン大会が終了した時間はそこそこ遅く、もう1回温泉めぐりをしたら寝るのにいい時間となっていた。 はそのまま部屋に帰って、少し仕事をしていた。メールのチェックだけだが、一応しておかないと気になるのだ。 その間に悠里たちは風呂を終えて戻ってきた。 3人で枕を並べて眠る。 「さん、いいなぁ」と真奈美が言う。 「何が?」 「だって、草薙先生ってばさんのために戦ってくれたんでしょう?」 強制したけど、と心の中で呟いたは「まあ、そうなるかな?」と返す。 「一君って良いお婿さんになると思うのよねー。ほら、面倒見がいいし。凄く大切にしてくれるって言うか」 これは、噂に聞く『修学旅行の夜の消灯後の恋バナ』っていうやつか。伝説の! 『友人』と言うものを作らなかったはこういったイベントにはとんと無関係だった。 というか、修学旅行なんて行ってられなかったので修学旅行の日は風邪を引くことになっていた。家の事が出来なかったら幼い弟が生活に困るから。 これは、初体験だが。どうしてだろう。自分がターゲットになっている気がする... 2人の攻撃に耐えられそうにないと判断したは早々に狸寝入りを決め込んだ。 そんな狸寝入りを見破っていた2人だが、今回はこれくらいで勘弁してあげようと顔を見合わせて眠ることにした。 |
桜風
10.9.4
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